3-days Marriage〜光源氏の恋人〜
 メーカー名:Nail
 発売日:2004/04/30
 メーカーホームページ:
http://www.nail-project.com/       評価:B−(65点)
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 前作「Present for you〜わたしをあ・げ・る〜」ではあまりのエロの酷さと堅すぎるテキストにウンザリだったんですが,それでもシナリオ自体には光るところがあったので,今作も注目していました。体験版をやる限りでも結構面白かったので期待していたんですが,果たしてその出来や如何に。

【ゲームシステム及び演出】
 ゲームシステム自体は純然たるAVGです。2つの選択肢の中からひたすらに正解の肢を選んでいくオーソドックスな内容。ただ,あまりにも選択肢が多すぎる上に,エンディングに至るフラグ判定がシビアすぎて,極悪とも言えるほどの難易度の高さになってしまっている点はマイナス。選択肢を選ぶこと自体に忙殺されてしまって純粋に話を楽しむことが出来ない上に,正解の選択肢の根拠が曖昧(どれを選んだらどのように好感度が上下するのかがわかりにくい,微妙な選択肢が多数存在する)であり,かつ殆どミスの許されない厳格なフラグ判定(基本的に1つでも選択を間違えるとアウト)であるので,ライターと考え方が同調できない限りハッピーエンドに到達するのは至難の業(基本的にガキくさくて向こう見ずな,ウンザリするくらいの「正論」が正解)。このため,幾度も幾度もバッドエンドを見させられて正直嫌になってしまいました。確かにゲームとしてプレイヤーを悩ませるのも一つのあり方だとは思いますけど,やはりものには限度というものがあると思います。無意味に難易度を上げてしまったために,ゲームを純粋に楽しむことが出来ず,延々と選択肢を選ばされた挙げ句に結局作業感と行き詰まり感で嫌になってしまうのは非常に勿体ない,私はそう思いました。


【絵】B
 担当は前作に引き続き「椎咲雛樹」氏。口の描き方に特徴のある方で,基本は可愛い系のアニメ絵なんですけど,でもエロでは結構色っぽく感じられる,そんな特徴的な絵を描かれる方です。個人的には好きですね。やや絵柄が安定しない(特にエロ絵での顔の表情)点は玉に瑕ですが,全体としてのクオリティはなかなかで,個人的には満足しています。また,今回,前作で指摘した背景の酷さがかなりの程度改善されている点は特筆すべき所で,前作のポリゴン絵チックなどうしようもない背景画とは違って十分に「見れる」背景になっていたのは感心しました。ここら辺はクオリティアップの表れとして高く評価したい。

 ただ,問題は立ち絵の酷さ。男性の立ち絵で顕著ですけど,首から上の描写が酷すぎる。首と顔の繋がり具合・バランスとか,顔の各パーツ(とりわけ目と口)の配置とかが不自然に感じられる場合が多々ありました。特に男性の立ち絵ははっきり言ってキモイです。ここら辺,もうちょっとどうにかならなかったのかなあというのが正直な所ですね。


【音楽・音声】音楽:B,音声:C
 音楽は前作同様blueが担当。相変わらず出来の良い楽曲が中心ですが,ただ今回は前作ほどは冴えなかったかな。前作がアコースティックな楽曲が中心で郷愁感を良い感じに漂わせていたのに,今回は良くも悪くも平凡な楽曲になってしまっていた気がします。

 他方,音声は並レベル。男性も含めフルボイス仕様になっている点は評価したいところですが,肝心の演技レベルが微妙。月詠(@野神奈々)なんかは高レベルだったんですけど,他がねえ……。全体的に声が高すぎですし,また,喘ぎ声を中心に演技のおぼつかないところが多々見受けられたので,やや厳しめですが評価としてはこんなものとしたいと思います。


【システム】A−
 機能的には充実していますし,強制終了等の不具合もなく動作自体も安定。メッセージスキップの速度やマウスクリックへの反応など,前作で「欲しい」「不足している」「どうしようもない」と叩いた所が概ね全て改善されていたのは高く評価したい。こういう進歩の見られるメーカーは好きですね。

 ただ,機能的には十分なんですけど,各機能の配置が分散してしまっているのは意外と使いにくい。特に,各機能の呼び出し方が独特すぎて使いにくい(ホイールマウスの回転方向でウィンドウ消去とバックログを使い分けるところとか,ウィンドウ脇のボタンにウィンドウ消去キーがない所など)点や,行いたいコマンドによって操作方法が異なる(右クリックしたりホイールマウスを動かしたりボタンを押したりと,自分でそれぞれのコマンド毎に操作方法を覚えておかなければならない)点がかなり戸惑いました。よく使う機能は単純な操作で呼び出せる(例:ウィンドウ消去は右クリック)ようにし,それ以外は一つのコマンドで全て操作選択可能にする等,操作方法を統一し簡素化する工夫が欲しかったところです。残念。


【シナリオ】B
 シナリオの担当は「DEEZ」氏。前作同様話に意外性や斬新さ,萌え要素みたいなものは無いですが,丁寧に話を編んでいるという印象は受けました。また,例えば紫との会話で「お兄ちゃんプレイ」ネタを混ぜるなど,真面目一辺倒の堅物テキストを何とかして改善しようとしている姿勢も評価できます。

 ただ,やはり相変わらず会話テキストが堅い。前作よりはかなりの程度改善されましたけど,それでも説明文を読み上げているような,そんな不自然さがあります。会話のやり取りなのに,台詞中で全てを説明し尽くそうとする(会話だったら省略するような所までご丁寧に説明してしまう)ような側面も散見されてやや違和感を感じました。

 また,前作でも問題にした内容の青臭さというか説教臭さみたいなものや,主人公のどうしようもなさも健在で,やっていて首を傾げることが多々あったのも述べておきたい。この点は体験版でも感じたんですけど,今作ではともかく「世襲議員万歳」といった論調や理想化されすぎた「政治」像などの描写が多く,かなり鼻につきます。それが説得的な理由とともに主張されているのならまだしも,今作ではそうではなくてひたすらにそれらの素晴らしさが主張されている感があり,やっててウンザリしてくる面がありました。特にこの作品での政治に関する考え方は,政治学を学んだ人間にとってはあまりの薄っぺらさに苦笑してしまうところもありまして……。

 さらに主人公がかなりのDQNで,所謂「正論振りかざし野郎」なのもそれに輪を掛けている面があります。基本的に道徳の教科書に載っているような「正論」しか主張できず,状況に臨機応変に対応できない(一向に自分の正論を曲げない)頑固な主人公(後輩の女の子の方がよっぽど現実的な判断を下したりする)であり,しかも自らの意見が至上のものであると信じ込んでいる節があって(例えば紫ルートでの仁科透との会話とか,月詠ルートでの告発を巡る月詠とのやり取り等で顕著),ちょっとこれはどうかなあと思う部分が多々あったことは付言しておきます。

 あと,共通ルートが長すぎるのもマイナス。シナリオの大半が共通ルートで,しかもそのかなり初期からフラグ判定が行われる関係で,毎回毎回頭からリプレイ→スキップを多用する羽目になったのは作業感を与えまくりで痛い。特に今回は【ゲームシステム及び内容】でも述べたように,あり得ないくらいに高難易度で繰り返しプレイを多く強要されたために,この点に関する不満が多々あります。もうすこしプレイヤーを楽しませる工夫とか,プレイしやすい・プレイしたくなる工夫みたいなものが欲しいところです。

 それとこれは些細な点ですが,折角源氏物語のエッセンスを取り入れているのに,それがあくまでも人物設定(例:「須磨明美・須磨入道」親子に対する「明石の君・明石の入道」親子のイメージの投影)や序盤のイベント(例:品定め)等の表層的な部分にとどまり,物語の根幹にはあまり関わってこなかったのも個人的には残念。前半の共通ルートはまだ良い感じに源氏物語のエッセンスを取り込んで話を編んでいるんですけど,後半の個別ルートになると途端に平々凡々な展開になっちゃうんですよね。中途半端な現代物の修羅場展開を持ち込むくらいなら,最後まで源氏物語風の展開で押し通して欲しかったなあ,なんて思ったりします(特に年下組)。

 結論としては,「丁寧で努力の跡が垣間見られるシナリオライティングなんだけど,でもプレイヤーに読ませる工夫が乏しい」,そんなシナリオだと思います。折角筋は良いのに,ゲームシステムの悪さとかテキストのくどさ,説教臭さや主人公のどうしようもなさみたいなもので台無しにしてしまっているのは残念ですね。


【エロ】C
 エロ部門について地雷認定をした前作とは違い,かなりの程度改善されていたのは◎。尺こそ短いですけど,着衣H・フェラ音・エロシチュ・エロ回数とも大幅にレベルアップされており,十分に抜ける出来だったと思います。特にフェラ音は月詠の演技が絶妙で,かなり良かったのではないかと思いますね。また,消しこそ強めなものの,卑語がわりかし多く盛り込まれていた(これも特に月詠)点も付言しておきます。基本的に月詠はエロくて良いですなあ。

 ただ,エロの大多数がシナリオと乖離してしまっている点は×。エロの大部分は所謂「口説きおねだりシステム」によるものなんですが,これがはっきり言って意味不明。女の子を褒めるのに和歌を持ち出すだけでも不自然で興ざめなのに,そのあとに突然巫女服とか体操服でHし始めるんですから,情緒もへったくれもありません。エロ単発の出来としては抜きゲーに勝てないだけに,シナリオの一環としてエロを組み込むことで情欲を刺激するのが純愛系ゲームにおけるHのあるべき姿なのに,そのことについての配慮に欠けているのはマズイと私は思いました。

 しかも,そういう余計なコスはあるのに,肝心の制服Hは皆無。「てか,おまえ,それこそがメインディッシュちゃうんかい!?」,と似非関西弁でいいたいくらいに不満です。んな話に関係のない着衣Hを入れるんじゃなくて,ストーリー上容易に盛り込める制服Hを入れることの方が何十倍も重要だろう,私はそう声を大にして訴えたいですね。しかしこのメーカー,いっつも制服Hだけがないんですけど(制服のデザインはエロくて良いくせに!),なにか制服着衣Hに恨みでもあるんですかねえ……?

 あと,同じシーンの使い回しがあったのも許せないところです。具体的には月詠のフェラシーンのことですけど,1,2度ならまだしも,流石にあれだけ同じCGで使い回しをされると呆れます。せめて共通ルートくらい,気をつけてエロシーンを入れて欲しかったです。正直,こう言うところからもエロに対する意識の低さが垣間見られて萎えちゃうんですよね……。あれで,何回目か以降にフェラだけでなくて月詠の本番シーンの一つでも入れていれば,もう少し良い評価になったと思うんですけどねえ。


【結論】B−
 「改善点が多々見られるところは高く評価したいが,ゲームとしては問題点多数。特に無意味な難易度の高さがプレイヤーの意欲を殺いでしまっている点は大問題」。努力の跡や改善された痕跡が多々見受けられますし,全体的に丁寧な作品作りをしているというのがひしひしと伝わってくるだけに,このような低い評価を出すのは憚られるんですが,それでもちょっとこれは……というのが率直なところです。主人公のDQNさ,シナリオの説教臭さ,関連性のないエロの多さと問題はありますけど,それでも普通にプレーできれば目をつぶることができるんじゃないかと思います。普通にプレーできればね。なのに,このゲームではむやみやたらに難易度を上げてしまっていて,プレイヤーが作品世界に没入するのを妨げてしまっている。そのせいで,ゲームの内容を云々する以前に,やること自体が億劫になってしまうんですよね。これは非常に勿体ない。メーカー側は,もう一度「どうすればプレイヤーが心地よくプレーできるのか」「果たしてこのゲームをプレイヤーがやって楽しめるのか」,そういう視点から作品を見直して欲しい,そう切に感じています。

 (´-`).。oO(はっきり言って体験版までの箇所が一番面白かったなあ,なんて)

 マイ萌えキャラ→六郷月詠でしょう,やっぱり。理知的でちょっぴり意地悪,でも実は素直な彼女との恋のやり取りを楽しんでくださいな。



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