Dear My Friend
 メーカー名:light
 発売日:2004/07/09
 メーカーホームページ:
http://www.light.gr.jp/   評価:A−(85点)
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 くすくす氏の描く暖かな感じの絵柄に惹かれて購入。氏の前作「スルタン」でおかしくなってしまっていた顔のデザインも無事元通りになっているようだったので,今回はなんの憂慮もなく購入出来ました。

【システム】B+
 システムは使いやすいです。バックログ時の音声読み返し機能,セーブ画面での画像・メッセージ登録機能,未既読判定つきメッセージスキップ機能等,必要な機能がほぼ全て完備されているのは良かったです。また動作も軽快&終始安定していて,安心してプレー出来ます。ディスクレスプレーも可能ですし,全般的にみてユーザーフレンドリーな仕様が徹底されているのには感心しました。◎。

 ただ,(1)若干文字表示速度が遅いこと(特にマウスクリックに対する反応が鈍く,何回もクリックしてもなかなか先が表示されないのには困りました),及び(2)ウインドウ消去のみ2回以上クリックしないと出来ないこと(スキップなどはウインドウ上にショートカットボタンがあるのに,ウインドウ消去のみ無い),この2つのみやや面倒でした(短時間のプレーならまだしも,長時間となるとちょっと……ねえ)。まあ,不満といえばこのくらいですかねえ。総じて言えば模範的なシステムだと思います。


【音楽・音声】音楽:A,音声:A−
 音楽はかなりのレベルだと思います。他の作品では余り見かけないアコースティックなアレンジの楽曲が中心で,個人的にはかなり気に入っています。ボーカル曲も含め,聴き応え抜群。文句なしですね。

 他方,音声もかなりの出来。男性も含めフルボイスなんですが,皆さんお上手&ハマリ具合が最高で,かなり感心しました。個人的には都香(@九条信乃)のみ微妙にキャラと合ってないような印象を受けたのですが,それ以外では全く文句なしです。特に冴香(@一色ヒカル)や文人(@ルネッサンス山田)のハマリ具合は凄いっすねえ。◎。


【演出】
 本作はかなり演出に拘っています。効果音の充実や各種効果の挟み込みのタイミングなど,演出の基本となるところもさることながら,雪等の降らせ方や各キャラの感情表現(怒ったときに頭から出る湯気など,漫画的な感情表現方法が多用されています)などといったコンピュータを用いた演出に至るまで,随所に渡って演出に力を入れているのが垣間見られて感心しました。いいですねえ,こういうのは。


【絵】A
 担当は「くすくす」氏。宝石のような瞳と淡くて暖かめな色調が特徴的な,可愛らしい絵を描かれる方ですね。「スルタン」では顔がのっぺりとした,正直変な絵柄に変わってしまってガッカリしていたんですが,今回は無事元のバランスの良くとれた絵柄に戻り,ホッとしています。服装や構図等も含め,以前よりも洗練されている感があり,個人的には大満足です。一部のエロ絵で微妙にデッサンの乱れが見られた(具体的には異様な足の細さや構図の狂い,顔描写の奇妙さなど)のは残念ですが,基本的にはかなりの出来だと思いますよ。◎。


【シナリオ】A−
 担当は「NYAON」「正田崇」両氏。結論から言うと,かなり出来は良いと思います。ボリューム面でも,どうやってこれだけのものをCD-ROM1枚に納めたのかと驚くくらい個々のシナリオが充実していますし,個別ルートが大半で共通ルートが少ないために,繰り返しプレーをしても飽きない点は大いに評価出来ます。

 また,内容面でも,展開の斬新さやアイディアの真新しさといったものは皆無ですし,別段大きなストーリー展開があるわけでもない(基本的には仲の良い友人や家族とマッタリと日常の生活を送り,その後そこにラブストーリーが介在するようになるだけ)のですが,十分なボリュームをかけて個々のヒロインの魅力を徹底的に描き出している点や,話の展開にしっかりとメリハリをつけている点,テーマに掲げている「友情」について常に意識しながら,様々な角度から話を描き出している点などは感心しました。とりわけ第一点目に関しては,本作では要所要所でヒロイン視点に切り替わるのですが,そこでの心理描写が珠玉の出来である点特筆しておきたい。特に冴香の主人公に対する気持ちを独白するシーンなどは,一色さんの演技の上手さとも相俟って,プレーしていて胸が締め付けられることがしばしばありました。エロゲーをやっていてこういう思いをしたのは最近殆ど無かったので,個人的には驚いています。久しぶりに良い純愛系シナリオを読ませて貰ったな,というのが個人的な感想です。

 ただ,何点か難点や人によって評価が分かれる点を挙げると,

 (1)ルートによってキャラクターの性格や設定にブレが生じてしまう   特に麻衣ルート以外での麻衣で顕著です。麻衣は,当該ルートのヒロインとの間で主人公を巡った三角関係へと陥ってしまう関係で,どうしてもそのヒロインと対比してマイナス面が目立つよう悪く(所謂「汚れキャラ」として)描写される傾向があります(特に冴香ルートなど)。麻衣狙いの方が麻衣ルート以外をプレーされると腹立たしい気分になられるかもしれません。また,他のキャラもルートによってその性格付けや設定が変わることが多く,プレーしていて一貫性を感じなかった点は付言しておきたいと思います。

 (2)展開のあまりのガキっぽさ・青臭さに嫌気がさす危険性がある  まあ,テーマが「友情」である段階である程度の青臭さは覚悟されているんじゃないかと思いますが,本作では予想以上にガキくさい展開や心理描写(特に主人公の心理がガキっぽい)が多くなっています。これを「若者らしく後先考えないその前向きなところが却って良い」と捉えるか,「後先考えないで現実から目を背けているだけの馬鹿者」と捉えるかで,本作の評価は全く異なるものになるのではないでしょうか。個人的には概ねOKだったんですけど,流石に都香ルートみたいな話はどうかなあ……なんて思ったりしています。取り敢えず,「駆け落ち」とか「学生結婚」みたいなものに否定的な印象をお持ちの方にはあまりお薦め出来ないですねえ。

 総じて,純愛系シナリオとしては模範的な出来だと思います。質・量とも申し分ない出来です。ただ,展開の青臭さやキャラ設定のブレが,人によっては拒絶反応を起こすかもしれませんね。


【エロ】C−
 今作の最大の問題点はやっぱこれですかねえ。やっぱ各キャラ1回のみっていうのはいくら何でも少なすぎる気がします。

 誤解の無いようにいっておくと,決してエロ自体の出来は悪くないです。特殊なシチュは無いですし,またテキストにもこれといったエロさはないんですが,でもテキストによる描写自体は丁寧ですし,絵的にも1つのエロにふんだんに一枚絵・差分を用いているので,エロ1つずつをもってくれば満足出来る出来だと思います(特に処女破瓜シチュを初めとした純愛系Hスキーの方には垂涎ものの出来だと思いますね)。

 また,着衣H的にもかなりの出来です。全てのHが着衣Hですし,服装面でも制服や巫女服などツボはしっかりと押さえています。さらにそれらの脱がし方もなかなかで個人的には感心しました。特に月夜の巫女服Hは,近年の巫女服Hのなかでも群を抜いて良い出来だと思います。着崩し方・エロの構図とも,巫女服Hの魅力・エロさを最大限に引き出しており,素晴らしかったです。

 ただ,やはり数的な問題は大きいですね。エロの数が少ないために,プレー時間が比較的長いにもかかわらずなかなかエロにありつけない(ストーリー終盤に偏っているため)という事態や,折角良い格好をしているのにその服装ではHできない(個人的には都香の私服Hが欲しかった!!)という事態がしばしば起こりうるのは残念。エロの少なさまで昔ながらの「純愛系」のセオリーを貫徹しなくても良かったのになあ,なんて個人的には思ったりします。ああ,勿体ない。


【結論】A−
 「純愛系ゲームとしては完成度の高い模範作。あとエロの少なささえどうにかなっていれば……」。どの点に関しても丁寧にしっかりと作り込んであり,感心しました。ホント,よくこれだけのものをCD-ROM1枚に納めきったよなあと驚きっぱなしです。青臭い話が苦手な方や実用性重視の方にはお薦め出来ませんが,純愛系ゲームがお好きな方は買って損は無いと思います。完成度の高い作品であり,エロゲー初心者の方にも自信を持ってお薦めできる一作です。

 マイ萌えキャラ→そりゃあ永村冴香でしょ。単なる横暴女で終わることなく,一途に主人公を思うその初なところが良い感じですなあ。



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