Cafe-AQUA
 メーカー名:RaSeN
 発売日:2005/01/21
 メーカーホームページ:
http://www.ra-sen.net/        評価:B+(75点)
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 Hのサンプル絵を見て即決。ウェイトレス姿での着衣Hに期待して購入しました。


【システム】B
 機能的には問題なし。バックログ機能(音声再生可能。また,ホイールマウスを使用するとグラフィックごと巻き戻せるのは良かった)やメッセージスキップ(未既読の区別をつけたり,選択肢後にスキップを止めたり等といった微調整が可能),各種カスタマイズ機能(音量・表示速度・キー割付など)を完備し,必要十分な出来となっていたと思います。また,動作面でも安定・軽快なため,そういった点では文句なしですね。

 ただ,(1)何故か修正パッチ(05/01/21段階)を当てても,ホイールマウスによるシーン巻き戻しで一気に複数ページが巻き戻ってしまう場合があること,(2)さらにその際に任意の音声を再生させることが出来ない(各シーンで一番はじめのものしか再生できない)ことなどはかなり気になりました。ホイールマウスは便利だった反面,使いにくさも目立ったように感じます。あと,(3)場面・シーンが変わってもアイキャッチ等が入らず,テキストの下に表示される絵も暗表示のままなので,その変化がわかりにくかったのもマイナスかな。今作では場面やシーンが変わっても(特に,一枚絵が表示されても)関係無しに延々とテキストが表示され,絵はその下に暗く表示されるだけなので,夜から朝に変わったりしていてもテキストを消去して絵を明るく表示しない限り,その変化がよくわからなかったことが多かったです。シーンが変わったり一枚絵が表示されたら,いったんテキストを消去し絵を明表示させる等の工夫は欲しかったですねえ。

 全体としては,「機能的には悪くないんだけどノベルゲーとしては問題のあるところが散見され,時折使いにくさを感じることがあった」と言うことが出来るんじゃないでしょうか。


【音楽・音声】音楽:D−,音声:B+
 音楽はチープの一言。ともかくちゃちい。「凛として」は結構好きですが,それ以外は個人的には好みではなかったですね。

 他方,音声は良い感じ。特に有紗(@北都南)は演技・声質ともに完璧で,個人的にはかなり気に入っています。ツンデレにおけるツンとデレの落差が良くでていて,もうこれだけでおなか一杯という感じです。やっぱツンデレと言えば南お姉さんだよなあ……なんて思ったり。ただ,それ以外,とりわけ香澄や美樹の演技は固い……というかわざとらしすぎて,やや鼻につく感があった気がします。


【絵・エロ】絵:B+,エロ:A−
 担当は「浅賀葵」氏。可愛らしい系の絵柄ですが,非常に着衣Hに映える絵を描かれる方ですねえ。正面以外の角度から描かれた絵(特に側面や下方から描かれた絵)における顔のデッサンが崩れがちなのは非常に気になりましたし,また,基本的に表情が硬くて,怒っているんだか照れているんだか識別が出来ない絵が散見されたのも残念でしたが,個人的にはもう着衣Hの出来の良さだけで満足。GJと言いたい気持ちで一杯です。

 基本的に殆どがウェイトレス服を主体とした着衣H。しかも,いくつかそれ以外のH(シャツでのHや制服Hなど)も織り交ぜているので飽きません。内容的にも服を殆ど脱がせずに原型を留めたままでHに及んでいますし,着衣Hの良さを最大限発揮するように構図(体位や服・ソックスの描写等)も工夫されており,個人的には強く感心しています。数的にも1人当たり2〜3回ありますし,シチュ的にも特殊属性自体は少ない(着衣H以外にはアナルHくらいかな)ものの,上手くストーリーに組み込まれていますから(エロと話が乖離しておらず,ちゃんと話の一環としてHが組み込まれている),純愛系ゲームのHとしては模範的な出来ではないかと思いますね。某「Pia 3」でウェイトレス姿でのHが殆ど無く涙をのんだ記憶のある私としては,本作のようにしっかりと着衣Hを展開してくれるウェイトレス系純愛ゲームは,もうそれだけで評価したくなります。十分に堪能させて頂きました。


【シナリオ】C−(有紗ルートのみA−)
 担当は「有島悠也」「らいとむ」両氏。結論から言ってしまうと,「ノベルゲームという形態を取ったことが一番の失敗」,と言ったところでしょうか。あと,「ドラマチック恋愛ノベルを標榜する割には後味の悪いシナリオが多かった」点も気になりました。以下,その2点を中心に述べたいと思います。

 本作では,基本的には学生時代の初な恋愛模様が描かれています。主人公もヒロインも基本的には未熟で,それ故,外的要因によって事態が錯乱されると,なすすべもなくその激流に翻弄されてしまう。だけど,それを未熟なりに切り抜けていこうとするその様子は良く描けているんじゃないかと思います。ただ,良く描けているんだけど,バランスが悪い。個別ルートに入って結ばれてからEDロールまでずっと翻弄されている様が描かれ,最後エピローグのところだけで幸せな様子が描かれたりする(しかもとってつけたように)こともザラですし,設定的にも,無意味と言って良いくらいに複雑・重度な鬱設定を無理矢理組み込んでいる感がかなりしました。そのため,とてもじゃないけど「ドラマチック」な「恋愛」を楽しむ余力が無かったように感じます。これが「ドラマチック恋愛ノベルを標榜する割には後味の悪いシナリオが多かった」という点に関する私のコメントです。

 そして,今度はテキストに関してですが,はっきり申し上げてノベル形式にする必要性に乏しいシナリオ・テキストだったように感じます。筆力・機知に富んだテキストというわけでもなく,わざわざノベルにしなくても,通常のAVGにおけるメッセージウインドウを使用するタイプの仕様(本作で言えばHシーンで採用されている表示形式)を採用しておけば十分な気がします。しかも,ノベル形式という,ウインドウ形式に比べて表示可能字数の多い表示形式を採用してしまったために,かえってテキストが冗長となり,シナリオ自体の魅力まで殺ぐことになってしまったのは非常に残念です。地の文における状況説明,心理描写,会話内容ともにともかく無意味に長くて読みづらい。特に会話文は,こんな長ったらしい口上を延々と述べ立てることはどう考えても不自然でしょう。会話文というよりも説明文のような台詞回しで,会話らしさがでなかったのはちょっとなあ,と思いました。これが「ノベルゲームという形態を取ったことが一番の失敗」ということの含意する内容です。

 ただ,このようにノベルゲー・純愛系ゲームとして問題が多々ある本作ですが,有紗ルートに限って言えばなかなか良い出来だったのではないかと思います。発生する事件に設定上・内容上無理が無く,純愛系ゲームとしての「合理性」(そのイベントを入れることの必要性・必然性,内容面でのリアリティ,入れたことによるシナリオ全体に及ぼす効果)がしっかりと確保されていますし,有紗と結ばれるまでの過程も丹念に描かれています。また,ヒロインの魅力を描き出すエピソードもふんだんにまぶし,さらにツンからデレへの落差みたいなものもしっかりと描かれているなど,彼女に愛着を持つことが十分に可能な内容となっています。総じて他ルートを遙かに凌駕する純愛っぷりで,個人的にはかなり気に入っているシナリオです。お話的には王道的な展開が中心ですが,下手に奇をてらうよりはこういう基本に忠実なシナリオ運びの方が,純愛系ゲームとしては良いんじゃないかと個人的には思いました。

 まとめますと,純愛系ゲームの割に後味の悪い話が多く,またテキスト面でもノベルゲームにおける弊害が一気に噴出したような,そういう悪い面がかなり目立つ内容で,個人的にはあまり高い評価は出せません。ただ,そんななかで,有紗ルートだけは非常に満足のいく出来だったと思います。あーあ,他のルートもこういう王道的な展開だったら良かったのになあ……。


【結論】B+
 「総じて後味の良くない純愛系ゲーム。形式面でもノベルゲームの悪いところばかりが目立ってしまった感がある。ただ,着衣Hの素晴らしさは高く評価できる」。本当ならB−評価かB評価が妥当なところですが,有紗ルートの出来の良さと着衣Hの充実度から,評価を底上げしました。下手に鬱展開等をまぶさず,有紗ルートのような王道路線を他のルートでも徹底してくれればA−以上の評価も出せたんですが……。ホント,勿体ないですねえ。

 マイ萌えキャラ→そりゃあ当然友永有紗嬢でしょう! ツン→デレの落差がたまりません。お堅くまじめで強気な彼女が,結ばれた後は主人公に甘えまくりになるところなんか,最高ですね。特に初H後の会話とか,公園でのキスの後のリアクションは大いに悶えさせて貰いました。


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