グリーングリーン3〜ハローグッバイ〜
 メーカー名:GROOVER
 発売日:2005/08/05
 メーカーホームページ:
http://www.groover-info.net/        評価:A−(85点)
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 たまたまネット上で見かけたキャラ絵に惹かれて(特に美杉舞),衝動買い。制服での着衣Hと純愛系の学園物語が味わえれば上出来かな,とあまり深く考えないで(期待しないで)購入してみました。はたして出来の方はどうだったんでしょうか……?

 なお,当方は「グリーングリーン」シリーズに関しては初挑戦となります。詳細は後述しますが,本レビューでは「シリーズ未体験者」の観点からコメント&評価を加えていますので,その点,予めご承知おき願います(本作では,シリーズのプレー経験の有無が各ストーリーの評価に大きく影響を及ぼすものと思われます)。


【システム】B+
 おおむね必要な機能は完備されていると思います。音声再生機能付きバックログ,画像・テキスト表示機能付きセーブ&ロード,各種カスタマイズ機能等,ADVゲームに必須の機能は過不足無く用意されているので,プレーしていて「なんでこの機能がないんだろう」みたいに思うことはありませんでした。動作も安定していますし,ディスクレスプレーも可能など,システム面では十分に及第点だと思いますね。

 ただ,若干不満に思った点・気になった点としては,

 (1)オートセーブ機能がない   やっている最中に気が付いたんですが,本作は最近のADVには珍しくオートセーブ機能がありません。そのため,ちゃんと要所要所でセーブしておかないと,選択肢の選択ミス時などにかなり前からやり直さなければならなくなってしまいます。昔はオートセーブなんて無いゲームが多かったのでこんなことは当たり前だったんですが,最近のADVゲームは便利になっているので,つい失念してしまいがちな点ではないかと思います。やっぱオートセーブも欲しかったなあ,というのが私感ですね。

 (2)セーブ&ロード機能が微妙に面倒で使いにくい   具体的には,本作のセーブ&ロード機能では「(a)セーブ or ロードする箇所を選択する→(b)SAVE or LOADボタンを押下」という2段階の作業を求められる,ということです。些細な点なのですが,セーブ&ロードを多用するADVゲームだと,これが意外と手間がかかって面倒に感じられてしまいます。やはり(a)だけでセーブ&ロードが完了する仕様の方が楽で良かったんじゃないかと思いますね。あと,どの箇所をセーブ or ロードするかの表示も地味で見にくい(左右の赤ボックスをオレンジ色にするだけ)ので,選択時にボックス全体の色を変えるとかSE を出す等の工夫があっても良かったんじゃないでしょうか。

 (3)画面の切り替わり時に微妙に重くなる&一定の場面でシーンスキップができない   最後は主に動作面に関して。総じて動作は軽快なんですが,画面が切り替わる際(とくに日付変更時),微妙に動作が重くなる(クリックしてもなかなか画面が切り替わらない)ことがあった点と,EDや校歌斉唱シーン等をスキップできない点などは意外と気になりました。

 これらが挙げられるのではないかと思います。総じて言えば良くできていて,不便さは殆ど感じない出来でしたが,細かい点で気になるところが多い,そんなシステムだったように思いました。


【演出】
 演出面で何点か感心した点・気になった点があったので,ここで言及しておきたいと思います。

 (1)立ち絵の使い方が上手い   この点は非常に強く感心しました。立ち絵の充実度合い(ポーズや描写角度の異なる立ち絵をかなりの数用意している点)は言うまでもなく,それ以外にも立ち絵を表示する位置や大きさを変えることで,キャラクター間の心理的・物理的距離感や現在おかれている状況を表現出来ているのは上手い。たとえば,

   例1:立ち絵を一部分(上部)だけ表示させることにより,入浴している様子を描写

   例2:電車内の背景画において立ち絵の表示位置を工夫し,乗車しているという臨場感を作出

   例3:後ろ姿の立ち絵を表示させることで,そのキャラとの微妙な距離感を表現(舞,双葉etc.)

 こういった点が好例ですね。アニメ的な演出方法が主ですが,エロゲーには余り多くない手法で,個人的には斬新かつ効果的なように感じました。

 (2)無音状態が多い   こちらは気になった点。本作では妙に無音状態のシーンが多く,気になりました。シーンやバランス等を勘案しても演出上の要請とは到底思えず,なんだかなあと思うこともしばしば。サイレントはここぞというシーンに挿入してこそ映えるのであって,年がら年中無音状態が続けば,それはBGMの足りなさから来る手抜きか,と邪推すらしてしまいます。効果音等は充実していただけに,BGMにももう少し気を遣って欲しかったですねえ。


【音楽・音声】音楽:D+,音声:A−
 音声は主人公を除きフルボイスで,かなり充実しています。出来の面でも男性陣を中心にハイレベルな演技を展開していて,聞いていて間違いなく満足できる出来だと思いますね。ヒロイン間で演技力にばらつきがある(特にHでの演技に巧拙の差がある)点は残念ですが,そういった点が気にならないくらい脇役の演技が冴えわたっているので問題なしでしょう(エロゲーとしては少しマズイかもしれませんけどね)。良くできていると思います。◎。

 反面,音楽に関しては個人的には不満が残ります。この点に関しては個人的な好みの問題もあるので一概に断じることはしませんが,私は(1)BGM・主題歌とも曲調が似通っている(明るいロック調の楽曲に偏っている)ため,楽曲間で差異が感じられない,(2)(1)故にシリアスシーン等,(1)のような楽曲でカバーしきれない場面においてBGMの不足感・不十分さを感じてしまう,こういった点が気になって仕方がありませんでした。主題歌・BGMとも,もう少し偏りを無くしてバリエーションを持たせてくれると良かったのになぁ,というのが私感ですね。残念。


【絵・エロ】絵:A−,エロ:D
 担当は「くろたま商会」「片倉真二」両氏。総じて可愛らしいデザインで,アニメ系の塗りとも相俟って個人的にはかなりツボです。女性陣,とりわけ美杉舞や樫谷ちとせ,柊麻里亜なんかは良い感じで,個人的には◎ですね(特に美杉舞は最高ですねえ,ホントに)。やや作画に安定感がない(特に顔面ドアップの一枚絵や,手の描写など)点は気になりますが,まあ,ここは今後に期待したいと思います。

 あと,制服の配色が白系統に偏りすぎているのがやや気になりますが,デザイン的にはエロかわいくて問題なし。黒系統のソックス(ハイソックス or ニーソックス)とのバランスがいいデザインで,着衣H的には評価したい出来です。

 ……で,ここで肝心のエロについてですが,これはちょっとなあ……というのが偽らざる感想です。はっきり言って,エロ狙いの方には厳しい出来と言わざるをえません。まず,キャラによってH数にばらつきが多すぎる。双葉狙いならHが充実していて良いんですが,他のキャラ,特に舞なんかを狙っている私みたいな人間にとっては,満足できる出来ではありません(注)

 (注)ちなみに,舞はHが1回しかありません。しかも,あんなに良い(エロい)制服姿なのに,全裸Hのみ。これは私みたいな着衣H至上主義者にとって,到底寛恕できるものではないです(着衣Hスキーにしてみれば,あの制服姿のままやらせてくれると思って当然……というのが私の持論だったり)。ストーリー的には1回のみの方が自然ですが,やはり本作はエロゲーなんですから,冗談抜きで制作者は何を考えているのかと小一時間問いつめたい気分です。

 あと,未遂Hが多すぎるのも問題。特にちとせルートで顕著ですが,やはり未遂で終わるのはエロゲーとしてどうかと思いますね。折角制服のまま押し倒したのに,途中で理性が戻って中断……というシチュは,プレイヤーにとっては最悪以外のなにものでもありません。やはりエロゲーである以上,プレイヤーにいかにして抜かせるかという観点はシッカリと持って頂きたい。その点で言うと,本作のエロは悪い純愛系ゲームのお手本のようで,個人的には不満の残るものだったと言わざるを得ません。残念です。


【シナリオ】A
 担当は「美南風悠」「Team N.G.X」「ヤマグチノボル」各氏。結論から言えば,「ギャグとシリアス,青臭さとスマートさを巧みに混ぜ合わせたバランスの良いシナリオで,読んでいて素直に面白いと思える出来。しかし前作・前々作のプレーを前提としている上,作中において殆どフォローがなされないため,シリーズ未体験者には敷居の高い一作となっている」,となるのではないでしょうか。以下詳述していきたいと思います。

 (1)良かった点   ストレートに学生達の青春群像,そして卒業という人生の1つの節目を描ききった点は評価したいところです。小難しい御託やどうでもいい能書きでお茶を濁すことなく,ひたすら実直に,青臭いまでの青春物語を描いている。さらに,ギャグを適度にまぶすことで,ストーリーにメリハリをつけている点も良い。登場人物もヒロイン・サブともに芯のシッカリとした魅力的なキャラクターばかりで,大いに話をもり立てています。余計なことを考えず,素直に爽やかで面白いと思えるシナリオだと思いますね。個人的には轟の卒業式でのスピーチなんかは,ホロリとさせられて良かったなあ。また,共通ルートを極力少なくし,各ルートで当該イベントの描き方や起こる出来事を変えていた点も個人的には高く評価しています(特に文化祭において,各ルートで文化祭の位置づけ・描き方・そこで生じるイベントを変え,それぞれのルートにマッチするよう工夫されていたことは,プレーしていて飽きが来ないという点,シナリオの整合性が保たれるという点,両側面から評価したい)。真新しさはないですがパワーがあって引き込まれる,そんなシナリオだったと思います。

 (2)悪かった点   やはりなんと言っても,プレーの前提として求められる知識・条件が厳しすぎる点でしょうね。私は本シリーズは今回が初プレーですが,ちんぷんかんぷんな設定が突然出てきて正直なんだかわからない,そんなことが幾度かありました(たとえば,鐘ノ音学園が数年後に廃校になることが当然の前提として作中において語られており,やってて「えっ,そうなの!?」と驚いたことが好例かな)。それだけでなく,作中やマニュアル上においてなんの補足もされない点も,シリーズ初体験の人間にとっては厳しいところです。前作・前々作をプレーされた方には見覚えのあるキャラ・懐かしい設定がてんこ盛りで,むしろ逆に,そこにグダグダと補足の能書きを入れられるとまどろっこしく感じられてしまうかもしれませんが,続き物である前に1つの作品なのですから,初心者に対して最低限のフォローはして欲しかったかな,というのが私感ですね。あと,ルートによって濃淡がありますが,若干主人公がへたれ気味(特に双葉ルートなどで顕著)な点も賛否が分かれるところだと思います。正直,双葉ルートでの主人公のだめっぷりや煮え切らなさには,プレーしていてイライラしてしまいました。それと,折角作中で「元カノ(双葉)――元カレ(主人公)――今カノ(他のヒロイン)」という設定・関係軸を呈示しているのに,それを余り上手く活用していない(勿論ルートにもよりますが)点も気になったかな。やけに「元カノ(双葉)――元カレ(主人公)」の関係や別れ方があっさりとしていて,葛藤等を起こす暇も無く今カノに乗り換えてしまったりするので,双葉と主人公との関係を出す意味が余り感じられなかった点,少し気になったので付言しておこうと思います。

 (3)お気に入りの物語――美杉舞ルート   以上の点をふまえて,私は美杉舞ルートを推したい。なぜなら,[1]他ルートや前作・前々作との独立性が強く,このルート内だけで話が完結しているため,シナリオにまとまりとメリハリがある点(他のルートでは多かれ少なかれ前作・前々作の知識を前提としています),[2]共通ルートとの繋がり・整合性が一番しっかりと保たれている点(たとえば,一番星のエピソードとの繋がりや,「ハローグッバイ」という副題との関連などが好例かと思います。後者は他のルートでも濃淡こそあれ表現されていますが,前者は他ルートだと突然後夜祭時に一番星の○○(ネタバレ故省略)話が出てきてしまって唐突な感じがします。その点,舞ルートなら文化祭準備〜本番にかけて一番星が絡んでくるので,不自然さはありません),[3]主人公が他ルートに比べてしっかりしている点,以上の理由によるからです。[1]などはシリーズ体験済の方には不満かもしれませんが,初心者にとってはこの方が取っつきやすいですし,それに本ルートは他ルートに比べてまとまりがあり,学生達が成長し巣立っていく様が鮮明に描かれているので,私は好きですね。あ,当然[4]美杉舞が魅力的でメチャ可愛い(モロ私好み),っていうのも大きいですけどね(w。


【結論】A−
 「学園を舞台にしたストレートな青春群像を味わえる,ADVゲームの良作。特に『卒業』『巣立ち』といった設定に弱い人にはお薦めの一作。ただ,続き物故の敷居の高さと,エロの不十分さが足を引っ張っているのが残念」。全体として出来は良いんだけど,所々に不親切さが目立ってしまう,そんな惜しい一作でした。あと,やはりエロゲーである以上,エロ薄は許されないでしょうね。でもまあ,ゲームとしてかなり洗練されていて面白いのは間違いないので,本作に関しては強くお薦めしておきます。前作・前々作もやってみたくなるような,そんな魅力のある一作だったと思いますね。

 マイ萌えキャラ→そりゃああんた,美杉舞で決まりでしょう! 容姿・性格とも最高。もろツボです。孤高な感じのするクールビューティーが主人公にだけ見せる弱さや甘え,これこそがまさにツンデレの醍醐味。万人受けするキャラでは無いと思いますが,もし私と同じような趣向をおもちの方がいれば,是非お薦めしたいところです。ああ可愛いよ,舞たん……。


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