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 女郎蜘蛛〜真伝〜
 メーカー名:PIL
 発売日:2002/06/21
 メーカーホームページ:
http://www.stoneheads.co.jp/        評価:A−(80点)
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 美麗なパッケ絵と,(ある意味PILらしからぬほどに)高い評価を受けているシナリオに惹かれて購入(因みに当方旧作未プレー)。どんな話の展開を見せてくれるのか,かなり楽しみにしていたんですが,果たしてその出来や如何に。

【ゲームシステム及び内容】
 ADVパートと緊縛調教SLGパートの混合。緊縛に特化して調教するというのは,他に余り類をみない設定かと思います。数値いじりに特化しがちな調教ゲームにあって,縛り方を組み合わせて楽しむ(しかも,それを実際に画面上でみることが出来る)という発想を持ってきたのはなかなか良かったと思います。ただ,じゃあゲーム自体の出来も良かったのかというとそうでもないんですよね。というのも,

 (1)ゲームバランスが悪い   複数の縛り技を組み合わせた大技を1・2回繰り出すよりも,一番レベルの低い技(=パラメーターの上がり方は低いが疲労度・体力消費度も低い技)を何回も繰り返した方が成長が早くて効果的なので,結局ちまちました技を毎晩何十回も選択することになる→必然的に作業に陥りがちな点は残念。

 (2)調教パートが飛ばせない   調教パート自体は毎回内容が変わらないので,複数回プレーする時にも同じ事を繰り返さないとダメなのが痛い。特に,プレー期間が長い上に(1)で述べたような欠点があるので,流石に2周・3周と繰り返しているとウンザリしてくる。2週目以降は何らかの方法で調教パートを飛ばせる(調教開始時に「スキップしますか?」みたいな選択肢を出すなどして)ようにした方が,よりユーザーフレンドリーなゲームになったのではないかと思う。

 みたいな問題点があるからです。発想は良いんだけど作りが甘くて作業ゲーになってしまっているというのが私の私感ですね。残念。


【システム】D−
 結論から言うと非常に使いにくいです。特に気になった点としては,

 (1)バックログがない   本作のようにシナリオ・テキストが充実しているゲームでは,バックログ機能で文章を読み返し,その真意・ライターの意図をプレイヤーが考えられるようにするのは絶対に必要だと思います。もう一度読み返したいと思っても読み返せないのは非常に残念なところ。

 (2)セーブ&ロード機能が非常に使いにくい   まず,現在何日目なのかがゲーム中で一切表示されないし,セーブデータにも記録されないので,自分のセーブデータが果たして何日目のものなのかわからない(なのでどのセーブデータをロードしたらいいのかが全くわからない)ことがしばしばありました。また,セーブしてもロード出来るのはその日のはじめからのみ(つまり,例えば3日目のラストにセーブしてもロードをすると3日目の最初からリスタートすることになる)なので,例えば「3日目が終わって日付が変わったと思ったのでセーブをし,後でそのデータをロードしてみたら,実はそのセーブした段階がまだ3日目で,結局3日目の最初からやり直す羽目になった」みたいなことが何度かありました。せめてセーブデータに何日目なのか(または何月何日なのか)を表示してくれると良かったのになあと強く思いました。

 (3)1回以上エンディングをみないとメッセージスキップが使えない   なぜメッセージスキップを使うのにエンディングをみる必要があるのか,理解に苦しみます。はっきり言って意味不明。しかも,マニュアルにはメッセージスキップがあるとあるのに,実際にはクリアしないとその機能が出てこなかったので,はじめかなり戸惑いました(ゲーム中の「HELP」コマンドをみる限り,新たにこのような仕様へと変更された模様)。前述のようにセーブ&ロード機能に欠陥がある(よって,意図せずに同じテキストを読まされる可能性がある)以上,初回プレー時でもメッセージスキップが出来る仕様というのは必要だと思うんですけどねえ。

 (4)マウスクリックへの反応が鈍い   音源がCD-DAのためCD読み込みに時間がかかるせいなのかも知れませんが,テキスト送り時のマウスクリックへのリスポンスが非常に鈍い。3〜4回クリックして初めて認識した,みたいなこともザラで,やっていて非常に疲れました。

 挙げればきりがないですが,以上4点が特に気になりました。正直,理想のシステムとは言い難い出来でしたねえ。


【絵】B+
 担当は「さくらめーる」氏(現在は「ふじみやみすず」氏に改名)。個人的には大好きだった原画家さんです(最近ゲーム原画で見かけないのが非常に残念)。旧作の絵も当時としてはかなりのレベルでしたが,今回新規に追加されたCGはその比ではないですね。可愛らしくて綺麗な絵柄をちょっと暗くて淡い塗りでまとめており,作風にあった幻想的な雰囲気が良く出ていると思います。

 ただ,やはり絵柄が大きく変わったこともあって,旧作CGと新規CGの間にかなりギャップ(ぶっちゃけ違和感)を感じたのは残念(特に未砂緒とのHシーンで,H前に喪服を着崩したときだけ新規CGで,その後の本番およびH後に一緒に寝ているシーンは旧作CGという所があったんですけど,このときの未砂緒は顔・体格ともに全くの別人で,激しく違和感を感じましたね)。絵柄だけでなく塗りも全く違っているので,別ゲームのCGかと思ったほど。どうせなら旧作分も描き直すか,それが無理ならせめて塗りだけでも統一した方が良かったんじゃないかなあと思いました。


【音楽・音声】音楽:A,音声:A+
 音楽・音声とも超ハイレベル。特に音声は男性陣も含めてフルボイスでしたが,メイン3人はいうに及ばず,脇役も実力派揃いで聞いていて非常に満足しました。やはり男にも声が必要だよなあと痛感しましたね。伊佐治(@一条和也)の狂言回しっぷりなんかは絶品です。でも,なによりも,蝶子(@岡田まみ(青山ゆかり))の演技を味わって欲しい。感情を押し殺し,無表情のまま折檻に耐える蝶子が,次第次第に感情の萌芽を見せ,最後には主人公に対して心を開いていく過程を十二分に表現していたと思います。久方ぶりに「聞き入ってしまう」「プロの」演技を聞かせて貰いました。大満足ですね。若干音質が悪いのが玉に瑕ですが,でも演技を堪能させて貰ったので良しとします。◎。

 他方,音楽もBGM・主題歌ともに高レベル。本作の退廃的でもの悲しい雰囲気に非常に良くマッチしていたと思います。特に主題歌「うたかた」は,暗くて寂しげで切なくて,でも綺麗という珠玉の出来。作品と密接にリンクした楽曲で,本作の主題歌としてはベストだったと思います。◎。

 効果音等もしっかりと完備されており,しかもちゃんと使い分けている(屋敷の内外における蝉の声の扱いなどが典型)点は高く評価出来ます。総じて音関係で不満に思うことは殆ど無かったですね。素晴らしい。


【エロ】C
 本番Hは少なく,緊縛Hが中心。しかもあっても殆どが全裸H(か,水責めのようなマニアックなもの)なので,緊縛属性の無い私としてはあまり抜けなかったというのが本当のところ。でも,そんな中でも未砂緒のHとかは結構抜けたんですけどね。取り敢えず,激しく人を選ぶエロシチュなので,エロ目的で購入される方は注意。


【シナリオ】A
 最後に「丸谷秀人(まるちゃん)」氏担当のシナリオ。結論から言ってしまいますが,非常に出来がよいです。大正時代という,発展の俎上にありながらもどこか終末的な雰囲気の漂う歪んだ時代を舞台とし,そこになかば現実から隔絶した形で設定された屋敷の中で繰り広げられる狂気と愛憎。時代・場面・人間関係が緻密に計算され配置されている点は恐れ入ります。作品中の閉塞感と奇妙さを十二分に表現できているのは,ライターの力量に依るところが大きいでしょう。また,「HELP」で本作には「トゥルーエンドに類するものはない」と断言しているように,どの選択肢・どのルートも生じうる合理的なものになっていた点は良かった。一般には「トゥルールートのみが正規のルートで,あとはとってつけたようなオマケ」というゲームが多いですが,本作ではそうではない。どのルートをとっても「それはあなたの選択した結果」と言い切れるだけの合理性・話のバリエーションを持っているので,ゲームシステムの悪さにもかかわらず,繰り返しプレーしようという気が起きてくる。ここら辺もシナリオのレベルの高さの表れでしょう。

 また,テキストも高レベル。随所に旧漢字や旧仮名遣いをちりばめ,大正時代という今とは違う時代であることをうまく表現しつつも,現代人の我々にとって不自然に思われないように注意してテキストを書いているのは高く評価したい。古くさい表現を使っているのにも関わらず,読んでいて一度も「テキストが硬いなあ」と思わされなかったのは流石。最近のエロゲーが,下手に難しい表現を使おうとしたり,または全く難しい表現を使っていないのに,言い回しが不自然で硬いように感じてしまうことが多いことを考え合わせると,このテキストレベルは素直に賞賛して良いのではないかと思います。また,随所に有名文学作品を引用し,話を上手く紡いでいる点も良かった。総じて,テキストは非常に洗練された印象を受けました。

 ただ,唯一残念なのは,本作の謎をすべて蝶子が解明してしまう(というかラストでばらしてしまう)点ですね。折角作中に伏線を張ったのだから,謎解きのようにプレイヤーが解明していくスタイルを取った方が,よりプレイヤーが作品世界にコミット出来て良いんじゃないかと思います。このせいで前半部に比べて後半部の展開が駆け足気味になってしまったのは残念。もうすこし後半部もゆとりを持たせて話を紡いだ方が,エンディングがとってつけたように感じられなくて良かったんじゃないかなあと思いました。


【結論】A−
 「激しく人を選ぶ作品だが,名作といって差し支えない出来。ただし,リニューアル作品としては失敗作か」。システムの使いにくさ・ゲームシステムの調整の甘さ・絵柄の不一致・エロの特殊性と,欠点は多い。なので「旧作のリニューアル」という点で成功したかといえばNOといわざるを得ないでしょう(旧作をやったことがないので元がどれほどのものなのかはわかりかねるが,少なくともリニューアル版にも関わらず,プレイアビリティを損ねるような阻害要因が本作には多すぎるので)。

 しかし,それを補って余りあるほどシナリオ・テキスト・音声・音楽が充実しています。なので,演劇を鑑賞するかのように,歪な世界で繰り広げられる人間関係を味わいたいと考える人には間違いなく楽しめると思う(少なくとも私はそうだった)。欠点が多すぎるので評価自体はA−止まりですが,個々の要素で光るところがあったことは,この場で声を大にして主張しておきたい。ただし,泣きゲーとか萌えゲーみたいな今時のものではなく,胸が詰まるような緊張感と閉塞感を孕んだゲームなので,購入する場合には予めその点を考慮に入れておくべきだと思います。

 何度も述べているように,このゲームはかなり人を選びますし,かなりの作業を要求します。でも,それでも是非一度プレーしてみて欲しい,そんなゲームです。

 好きなキャラ→やはり蝶子でしょう。プレーしていると,彼女を幸せにしたいときっと思うはず。


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