君が望む永遠
 メーカー名:age
 発売日:2001/08/03
 メーカーホームページ:
http://www.age-soft.co.jp/       評価:B−(65点)
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 PUSH!誌での外伝連載などで前々から注目していたのですが,やはり購入に踏み切った最大の動機は雑誌についてきた「丸ごと第1章体験版」。第1章分,容量にして数百MBをまるごと体験版として提供するという(当時ではどのメーカーもやったことのなかった)販宣戦略をやってのけたことへの驚きもさることながら,その中身の充実度・話への吸引力に魅了され,発売日を心待ちにしていた記憶があります。

【システム】A
 システム面では完璧。動作等が軽快で,とても快適にプレーすることが出来ました。また,当時では類を見ないほどに詳細に,諸機能をカスタマイズできるのにも驚いた記憶があります。ただ,私はメッセージ表示速度+αぐらいしか調整をしなかったんですけどね д`;)。
 それと,雨などをコンピューター処理で表現していたんですが,雨脚の強弱,波紋の有無に至るまで詳細に描き分けていた点には感心しました。

【絵】A
 担当は「バカ王子ペルシャ」氏。独特な絵柄ですが,とても綺麗な絵を描かれる方だと思います。特に水月(第1章・第2章とも)や茜(第2章限定)の絵柄は激しくツボでした(反面,遙・愛美・まゆなどは絵的に好きにはなれなかったのですが)。◎。

【音楽・音声】音楽:A−,音声:B+
 音楽はとても出来が良かったと思います。特に主題歌はOP,EDともかなりの出来ではないかと思いますね。
 他方,音声については,全体としてのレベルは高い(特にメイン陣の演技には大満足)ものの,一部で「ちょっとこれは……」と思う方もいらっしゃいました(特に第2章のスカイテンプル店員2名)。まあ,難しい役柄が多いというせいもあるのでしょうが。

【エロ】C
 話重視・純愛系中心のゲームであり,決してエロは濃くありません。でも,ひとつひとつのエロをちゃんと描こうとする姿勢が見られたことは評価したい。また,着衣Hを何点か入れてある点も○。
 ただ,第2章においては,サブキャラ陣を中心にHを入れるタイミングが良くない(というか入れる必要のないHが多いように感じた)のは気になりました。Hの数を増やすために取り敢えず入れておこう,みたいに私は感じてしまいました。個人的にはサブキャラ陣のHシーンは蛇足に思えて仕方ありませんでしたね。また,ルートによってはヒロインが親友に寝取られるのですが,そのシーンを端折っているのにはガッカリしました。別に寝取られ万歳とかそういうのではなくて,話の演出上,ちゃんと寝取られるシーンを回想などで表現しておいた方が,ただテキストでそういう経緯があったと説明するよりももっとプレイヤーの感情移入度が増しただろうに,と思ったからです。基本的に本作はHシーンの入れ方が上手くないと感じてしまいました。

【シナリオ】D(第1章のみであればA)
 ぶっちゃけ,このゲームのシナリオは嫌いです。また,泣いたりすることも出来ませんでした。
 語弊がないように言っておきますが,第1章だけ見れば,メリハリの効いた素晴らしい出来です。楽しい学園生活,プラトニックな純愛,永遠に続くと思った友情,そして遙の事故によるショック―――これらがバランス良く配置されていて,話自体が魅力的なだけでなく,第2章に向けて嫌が応にも話に引き込まれます。私も,体験版をやって,第1章の出来の良さに驚きました。
 けれども,肝心の第2章が頂けない。というのも,第2章に入ってから,間断なく修羅場が繰り返される為です。一つ修羅場が片づいたと思ったらまた修羅場。これを延々と繰り返します。他の方のレビューでよく「現実の恋愛はこういうものだ」みたいなことを拝見しますが,私はそうは思いません。むしろ一難去ってまた一難をひたすら繰り返すシナリオというのは,愛憎入り交じったコテコテの「昼の奥様劇場」と同じように思えてしまって,却って安っぽさしか感じませんでした。また,私は基本的にメリハリのあるシナリオを好む人間なので,このように緩急の「急」しかないシナリオはやっててとても疲れました。
 そして,もっとも最悪なのは主人公のダメさ加減。優柔不断にも程があると思います。あんな主人公についてくる女がいる,という設定自体で無理があるだろう,というのが本音ですね……。やっててイライラする主人公というのは後にも先にもこのゲームくらいでした。
 魅力的なキャラ・話もあるんですが,第2章のコテコテさ・くどさが却って話全体を安っぽくしてしまっている感が否めませんでした。もうちょっとメリハリのある話にして欲しかったなあというのが本音です。本来であればD評価のシナリオではないとは思いますが,個人的にどうしても解せないシナリオであった点,そして第1章をプレーして抱いた期待が裏切られた事に対する失望感から,敢えてこの評価とさせて頂きます。

【結論】B−
 「くどさが逆に作品の価値を落としめてしまった作品」。作品全体の完成度は高いですし,他のサイトさんなどで軒並み高評価が出ていることも承知していますが,敢えて私はこの評価とさせて頂きます。エロ然りシナリオ然り,くどさが却って安っぽさを生んでしまっている典型だと私は思います。特に,メリハリなく修羅場のみが続くシナリオ,そしてクズ人間な主人公の思考は,個人的には受け容れがたい面がありました。もうすこし緩急取り混ぜて話を編んで欲しいなあと思いましたね。第1章のノリで第2章も続いていれば,個人的には名作だったんだけどなあ……。

 好きなキャラクター→速瀬水月(こういう健気なキャラは好きです)


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