鳳凰戦姫 舞夢
 メーカー名:LiLiM
 発売日:2006/01/20
 メーカーホームページ:
http://www.saibunkan.co.jp/lilim/   評価:A−(80点)
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 「金目鯛ぴんく」氏の絵に惹かれて購入。氏の描く扇情的な鎧姿&制服姿でのHを期待して購入しました。まあ,正直話とかにはあまり期待していなかったんですが,果たして……。


【システム】B+
 使いやすいシステムです。未既読判別機能付メッセージスキップ,音声再生可能なバックログ,音声をキャラごとに調整可能,ホイールマウス・Ctrlスキップに対応,BGM・音声・効果音のボリューム調整可能etc.と,有ると便利な機能は概ね網羅されています。また,動作も頗る軽くてかつ終始安定。さらに,戦闘時の選択肢(=シナリオ分岐に影響有り)の選択結果が画面上に表示される「戦闘easyモード」など,ユーザーの利便を考えた機能もあり,かなり快適なシステムだと思います。◎ですね。

 ただ,敢えて不満を挙げるとすれば,(1)ディスクレスプレーが出来ない(ゲームスタート時にGAME DISKが必要)ことですかねえ。最近のゲームはディスクレスプレー可能なものが大半を占めるだけに,やはりこの点の不便さは否めません。特に本作は抜きツールとして買われる方も多いと思いますので,尚更。また,些細なことですが,(2)EXTRA画面(シーン回想等の呼び出し画面)だけ,右クリックによるキャンセルが効かない(=RETURNボタンをわざわざ押さないとスタート画面に戻らない)点は意外と不便に感じました。やはり使用頻度の高い画面だけに,こういったところの使い勝手はもう少し考えて頂きたいところです。あと,(3)本作はかなりの大容量であり,4GB弱のHDD空き容量が必要なのは要注意といったところだと思いますねえ。ちょっと容量食い過ぎだろう,と思わないでもないです。「HDDの片隅に入れておいて,いつでも気軽に抜ける」,そんなゲームでなかったのは残念でした。


【音楽・音声】音楽:B,音声:B+
 音楽は可もなく不可もなくで,突出した出来のものはありません。ただ,作品の雰囲気には良くマッチしていたと思います。バリエーションは豊かで,シーン毎に適切な音楽を提供できているのは感心。主題歌(OP・EDの2曲)もオーソドックスな出来ではありますが,悪くはない水準にまとまっていると思いますね。

 他方,音声は男性と女性で演技力の差が激しい点が気になりました。男性声優陣の布陣・実力はかなりのもので,作品を大いにもり立てていたのですが,反面,女性陣の演技力は今ひとつ。舞夢(@西田こむぎ)などは良かったんですが,あとはちょっとなあ……というのが正直なところです。やはりエロゲーでは女性声優陣の実力が一つの重要なキーファクターになるだけに,もうすこしどうにかならなかったのかなあと思いますねえ。


【絵・エロ】絵:A,エロ:A−
 担当は「金目鯛ぴんく」氏。年々絵柄が洗練されてくる原画家さんで,個人的には大好き。今回は制服姿・鎧姿ともにかなり扇情的で,かなりGOODだったと思います(特に舞夢の制服姿・鎧姿(第1段階),美香の制服姿は最高でした)。エロ絵とかもそうですが,やっぱり上手いなあ,と思わされる原画家さんですね。

 エロ的にもかなり出来がよい。特に着衣H的には最高なものが多いですね。何しろ,殆ど全裸でのHがない。あれだけ描くのがめんどくさいコスチューム(制服や鎧など)を身に纏わせながら,それを殆ど脱がすことなくHを描ききっている点は個人的には高く評価したい。とりわけ舞夢のH描写は秀逸で,鎧姿(第1段階の,いわゆるビキニ系鎧)での陵辱H(戦闘敗北時に発生)や,制服(ニーソックス着用。決してソックスは脱がさない)でのHは,かなり抜ける構図となっており,◎です。これらは一見の価値があります。また,シチュ的にも豊富で,純愛H,レイプ,寝取られ,輪姦,スカトロ,触手,痴漢(もどき),獣姦(もどき)等,さまざまなバリエーションがあるので,着衣H属性さえあれば必ずや満足できると思います。

 ただし,注意すべき点としては寝取られシチュが多いことを挙げておきます。変身ヒロインものの常としてある程度は寝取られがあるのは致し方ないというのが私感ですが,本作は敢えて狙って寝取られを組み込んでいるという箇所が多々あります(特に美香は不可避で発生します)ので,苦手な方は要注意。私は別に平気だったんですが,苦手な方にとっては若干きついかもしれません。

 あと,不満だった点としては,(1)舞夢以外に制服での着衣Hが殆ど無かった点を強調しておきたい。特に美香などはあれだけ良いデザインなのだから,是非とも制服での着衣Hは欲しかったところです。また,(2)舞夢が敵に屈服する(Hで敵に落とされメロメロになってしまう)のが早すぎるのも気になりました。寝取られシチュを重視する余り,「レイプされることへの抵抗と嫌悪」の様の描写が少なくなりがちだったのは個人的にはマイナス。個人的には変身ヒロインものにおいては,「敵に無理矢理レイプされる」その描写こそが真骨頂であり,寝取られはあくまで枝葉にすぎないと思っているので,本作は本末転倒ではないかと思ってしまいました。それと,(3)舞夢の第2段階(パワーアップ後)の鎧姿のダサさはどうにかならないかなあ,と思いました。変身ヒロインものでは往々にしてパワーアップ後の姿はダサくなるものですが,そんなところまで基本に忠実にならなくとも,とすこし苦笑いしてしまいましたねえ(w。

 総じて絵・エロ面ではかなり頑張っていると思います。着衣H属性をお持ちであれば必ずや満足される出来だと思いますね。ただ,いくつかの点で制作者との間の考え方・力点の置き方の違いが顕在化してしまったのは個人的に残念でした。


【シナリオ】B
 担当は「髪ノ毛座」(氏?)。正直殆ど期待していなかったんですが,なかなかどうして面白いシナリオだったと思います。シナリオの運びは素直で,舞夢を中心とする少年少女達が正義の味方に変身して悪の軍団と戦い,これを殲滅するまでの過程,そしてそこでの挫折と成長を定石に則って描いています。本作はいわゆる「変身ヒロインもの」の一種ですが,その基本に忠実にシナリオを編んでいるという印象を受けました。

 私見では「変身ヒロインもの」というジャンルは(1)あくまでも「(ゲーム上での)リアリティ」(本当の意味でのリアリティとは異なり,「変身ヒロインもの」の路線,そしてそこで求められているものをどこまで徹底しているか,という観点でのリアリティなので,敢えてここでは括弧付きにて表記します)を追求し,己の信じる正義のため戦い続ける孤高の姿をストイックに描き続けるもの(シリアス系)と,(2)一般的な戦隊ヒーローもののように,正義vs悪の抗争の描写を重視しつつも,時にギャグやラブコメなども混ぜあわせてエンターテイメントの側面を重視するもの(娯楽系),この2つがあると考えているのですが,本作では後者の王道に則って話が編まれています。そのため,「変身ヒロインもの」「戦う(魔法)戦士もの」としてのある種の「リアリティ」を重視する方には向きません。他方,昔よくTVでやっていた戦隊ヒーローもののように,肩肘張らずに緩急メリハリのついた話を読みたいという方にはお薦めです。阿呆な展開,お馬鹿なギャグが満載で,読んでいて結構笑えます。ちょっと最後がとってつけたような展開になるのはあれですが,ちゃんと話に結末をつけているので,尻切れトンボな感じもありませんしね。

 ただ,ギャグがあまりにも狙いすぎている(マニアックすぎる&2ch系のネタが多すぎる)ため,鼻につく方もいらっしゃると思います。また,それぞれのヒロインが主人公を好きになる過程の描写が殆ど無く,突然のように主人公に好意を持ってしまう点がやや不自然&描写不足に感じました。そしてなにより,舞夢以外のサブヒロインと結ばれるルートがない点は大いに不満。美香や知世とも結ばれるルートは是非差分として欲しかったところです。特に美香はレイプ&寝取られ展開が不可避であるにも関わらず殆どフォローがされず,しかも最後には主人公に捨てられてしまうなど,かなり酷い扱いを受けている点,あんまりだと思いました。Hの回数に関してもそうですが,舞夢にばかり偏重するのではなくて,もう少し他のヒロインにもバランス良く力点を置いて欲しかったですねえ。

 総じて,なにか光るところのあるシナリオでは無かったですが王道路線に忠実で,かつ読んでいて気軽に笑える,そんなシナリオだったと思います。ただ,サブヒロインの扱いや好き合う過程の描写など,恋愛ゲームとしての側面では不満の残るところが多かったのは残念でした。


【結論】A−
 「着衣H属性保有者であれば必ずや満足できる娯楽系変身ヒロインものAVG。グラフィックを見てピンときたら買っておくのが吉。ただ,寝取られがダメな人や舞夢以外のキャラを狙っている人にはきわめてリスキーな一作」。ただの抜きゲーかと思っていたんですが,意外とシナリオ面でも頑張っていたのでこの評価としたいと思います。取り敢えず,エロで損をすることはない(+相性が良ければシナリオでも満足できる)ので,パッケージを見て劣情を催したなら買っとけ,そんな作品ですね。個人的には思いの外満足できた作品でした。


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