Night Demon−夢鬼− メーカー名:アリスソフト 発売日:2003/08/29 メーカーホームページ:http://www.alicesoft.co.jp/ 評価:B−(65点) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― |
とり女史&CARNELIAN女史のタッグと聞いて,即決で。凄く楽しみにしていた作品だったんで,いつもと違ってマターリとプレーしてみました。 【ゲームシステム及び内容】 ゲームシステムとしてはオーソドックスな場所移動型のADV。……なんですが,いくら何でも選択肢が多すぎ(汗。非常に選択肢が多い(しかも,「○○へ移動」とか「話す」とかみたいに,同じような選択肢が延々と続く)ので,やっていてルーティンワークに陥ることが必定だと思います。作業感ありまくり。さらに,シナリオも殆ど一本道(=共通ルートが非常に多い)なので,なかなか複数回プレーしてコンプしようという気にならないのは残念。でも,ゲーム自体は基本的に全てのルートを攻略することを強いる(メインルート全てをクリアしないとサブキャラを攻略出来ない,など)仕様になっているんですよね……。やっててどんどんフラストレーションが溜まってしまいました。 確かに昔はこういう感じの,ひたすらに移動場所を選びまくるゲームってあったし,やってて耐えられたんですけど,流石に今時こんな古くさいゲームシステムはないんじゃないかなあ,というのが正直な所。制作者側は,こんな単調なゲームで楽しいと思ったのかな,と少し疑問に思ったりもしますね。 【システム】C システムはアリス謹製のSystem3.9を採用。昔から軽快さと安定さには定評のあるシステムだけに,動作面で不快に思うことがなかった点は流石。プレー中,一度もフリーズや強制終了等で悩まされることはありませんでした。また,メッセージスキップも高速で,繰り返しプレーする際の助けになったのも良かった。さらに,回想モードで,Hシーンだけでなく通常会話なども再生出来るので,いつでも好きなシーンを再生し鑑賞出来る点,個人的には高評価でした。 ただ,機能面全般では正直今一歩。オーソドックスなアドベンチャーなので,別に高度な機能を求めているわけではないんですが,それでも機能不足が目立った点はマイナス。特にマウス関係の機能が不十分に感じました(例えば,ウィンドウ消去をするには「z」キーを押さねばならない(右クリック等に不対応)など,キーボードでの操作が前提だったり,そもそもマウスがメッセージクリックとバックログの役割しか無かったりするので,意外とフラストレーションが溜まりましたね)。また,【ゲームシステム及び内容】でも述べたように,複数回プレーを強いるゲームなのに,EDのスタッフロールが飛ばせない(毎回見させられる)点も非常にウザかったですね。 基本的に,昔の,マウスを使わずキーボードonlyでプレーしていた時代の仕様を原型にして,一部マウス系統の機能を足しただけなので,動作方法に一貫性が無く,またキーボードとマウスの併用が前提とされている点などは大きな弊害に感じました。はっきり言って古すぎるシステムな気がします。いい加減,システム関係は一新して欲しいなあというのが正直な所です。 【音声・音楽】音楽:A,音声はなし 音楽は有名な「Dragon Attack!」氏が担当。相変わらずいい音楽を聴かせてくれますね。今回は特に暗くて重めの楽曲が中心で,個人的には◎でした。ただ,コメディシーンでも暗めの楽曲(「秋」とか「冬」とか)を使っていたりなど,ややシーンに合わない楽曲の使い方をしていた場面が幾つかあったのは気になりましたが。 あと,効果音の充実ぶりは非常に良かった。雨音,雷,風呂で水を掬う音,足音,車の発信音や遠ざかる音,朝の鳥の声など,効果音が欲しいと思う場面にベストの効果音を過不足無く配置していたのはとても好印象でした。特にノベル系の作品だと効果音って大切だなと再認識させられましたね。 ただ,ご存知の通り音声はありません。私は音声必須論者ではありませんが,やはり本作のようなシナリオを楽しむゲームでは音声が欲しかったですね(ただ,本作の退廃的な雰囲気を壊さない事が第一だと個人的には思うので,下手な声優を連れてくるくらいならない方がマシだとは思いますが)。一応,音声無しでも十分に楽しめたので減点要素にはしませんが,でも,折角DVD媒体なんだから音声くらい入れてくれたらいいのに……というのが正直なところ。アリスソフトの上層部が音声否定論者なのは承知していますが,やはり時代の趨勢は音声必須に傾いているんじゃないですかねえ。 【シナリオ】A− 担当は「とり」女史。退廃的で耽美な世界を描くのが上手いライターさんですが,本作でもその腕は遺憾なく発揮されていると思います。本作では,夢鬼というファンタジックな設定も一部入っていますが,しかし大半が我々の日常と余り変わらないような,ごく自然な現代の日常生活が描かれます。また,話の運びも極めてオーソドックスかつ予測の域を超えないもので,はっきり言って結末などはあっけなく感じてしまうかも知れません。 しかし,ごくありきたりで平凡な日常を描きながらも,どこか退廃的で,息の詰まる,重苦しい世界を表現出来ている点は流石の一言。朝起きて外に出かけ,そこで人と会話をし,最後自分の経営するバーでお勤めをして一日が終わる。ただそれだけがひたすらに繰り返されるんですが,そのループする日常を過ごしていく中で,次第に閉塞感に見舞われていきます。ですから,ただ単調に日常を過ごしているだけなのにもかかわらず,何故かドキドキしてしまう,そんなシナリオです。個人的にはこの雰囲気は非常に好きですね。 話が一本道で展開に幅がないだとか,サブルートのシナリオが少なすぎるとかといったように,シナリオ自体には問題が多いのですが,しかし,どこかおかしい歪な世界を描ききっている点は高く評価したい。話自体よりも雰囲気を味わって貰いたいシナリオですね。 【絵】A 担当は前述の通り「CARNELIAN」女史。相変わらず,綺麗で可愛いんだけどでもエロいという素晴らしい絵柄で,文句なし。鋭角的な塗りも非常に良くあっていたと思いますね。あと,男美形キャラに力入っていたのは仕様ですかねえ(w。 【エロ】D (-_-# まず,いうまでもないですが絵はエロいです。特に着衣H絵の構図が最高で,個人的には絵だけで何度も抜かせて貰いました。 ……が,絵以外が頂けない。というのも,完全にエロがシナリオの演出の一部に組み込まれているので,エロシーンがブツ切りにされて,肝心のシーンが省略されたりするからです。例えば,美沙(巫女服の女性。詳細はネタバレ故省略)が殺戮鬼に凌辱されるシーンで, 「不意をつかれて殺戮鬼に襲われる」→「必死に抵抗」→「しかし抵抗空しく犯されてしまう」 →「恋人への申し訳なさと怪物に犯される嫌悪感に涙」→「でも結局何度も犯され続けて放心状態」 という一連の過程のうち,実際にゲーム中で描かれるのは「結局何度も犯され続けて放心状態」だけ。他のシーンはまったく描かれず,「犯されてしまった」の一言でおしまいなのが典型かと思いますね。これは流石にどうかと思います。「俺はエロゲーを買ったんだぞ!!」といいたいですね。折角抜く用意を万端に整えていたのに……。その犯される過程こそが「エロ」の醍醐味なんじゃないかヽ(`Д´)ノ ウワァァン。 これ以外でも,例えば,雪花の学生時代のレイプシーンでレイプ後だけを描いたりとか,雪花の輪姦シーンで中だし(つまりフィニッシュの)シーンだけ省略したりとかのような,エロシーンの端折りが多数存在します。確かに,シナリオの一環としてはHシーンをブツ切りにして挿入した方が効果的なんでしょうが,本作がエロゲーだということを忘れてはいまいか? このことは制作者側に問うてみたいですね。エロゲーである以上,エロに手を抜くのは言語道断,ましてや期待させておいて肝心のシーンだけ省略するというのはユーザーに対する背信行為だと思うのですが,どうでしょうか。 【結論】B− 「全般的に古くささの漂うゲーム。個々の要素は良いのに,それを統合する段階でしくじっていて勿体ない。あと,エロの過度の軽視は大きくマイナス」。個人的には絵もシナリオも音楽も楽しめた作品です。しかし,DOS時代を思わせるような古くさくて作業感溢れるゲームシステムや,いまいち使いにくいシステム周りが大きく作品の評価を下げています。あと,なんといってもエロシーンの部分省略は大きくマイナス。エロ自体は薄くないのに,部分省略によって折角のエロを台無しにしてしまっている点は痛い。 折角部分部分の出来自体はいいのに,ゲームとして一つにまとめた段階での粗が多すぎるゲームでした。個人的には結構楽しめたんだけど,評価的には厳しくせざるを得ないところが口惜しいですね(個人的には70点以上出したい所なんですけど,ちょっとあのエロとゲームシステムじゃあねえ……)。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― レビューデータベースに戻る |