神愛〜shin ai〜
 メーカー名:サイク
 発売日:2002/05/10
 メーカーホームページ:
http://www.cyc-soft.co.jp/   評価:A−(85点)
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 ポスターのデザインの良さと,「多元世界を舞台に展開する,恋愛アドベンチャー」という説明文に惹かれて購入。ちょうど時期的に新作の殆ど無い時期でもあったので,即決で。いやあ,私,異世界越境ものって好きなんですよ。ただ,このジャンルは今まで成功しているものがほとんど無いので,「今回もダメか…?」とビクビクものだったのですが,果たして出来の方は……?

【ゲームシステム・内容】
 現実世界で異世界に転移する為に必要な写真を探し回り,その上で両世界を行ったり来たりしながら問題を解決する,というAVG。基本的には選択肢選びが中心のオーソドックスな形式。いつもゲーム性の強いゲームを出すcycにしては珍しく,殆どゲーム性はありません。ゲーム期間が長く(このゲームは一定期間内にクリアしないとダメ,というような時間制限があります),あまり戸惑うような選択肢も無いことから,ゲーム自体の難易度は総じて低いです。
 で,ゲーム全体についてですけど,異世界パートはテンポ良く話が展開して良いんですが,現実世界のパートの方はやや中だるみします。というのも,(1)曜日指定のイベントがある(指定曜日以外は何も起こらないので,ものによっては幾日もイベントが起きずに過ぎていきます),(2)ルート確定後も他ルートに行けるため,写真選択をしくじると別のルートへとばされて話を分断されてしまう,という2点があるからです。話のテンポが悪くなるので,ルート確定後は別に写真選択パートは要らないんじゃないかと思いました。

【システム】A
 システムですが,必要十分な機能が揃っていて使いやすいです。動作も軽快で強制終了などもなく,プレー中不快になることはありませんでした。デザインは貧相な感じがしますが,機能的には充実しているので満足。ただ,サイクゲーは機能配置が独特なので,最初はとまどうかも知れません。

【音楽・音声】音楽:C−,音声:B
 音楽は並〜やや低レベル。特別とりあげるようなものではありません。ただ,ゲームの雰囲気には合っていたので,BGMとしてはいいと思います。主題歌はヘタレですけど,何度も聞いていると良いような気がしてくる,そんな催眠術のような歌です(´Д`;
 音声はメインキャラのみ。結構良かったと思います。ただ,どうせつけるなら,やはりメインだけじゃなくて重要なサブキャラにも音声をつけて欲しかったですね。特にルイザ(リリィ編にでてくる姉御)は声があればもっと良かったのに……。

【絵】A+
 担当は「岩本幸子」女史。可愛い系の絵柄ながらも,色気のある,そんな絵を描かれる方です。描き分けも良くできていたし,塗りも綺麗で,個人的には満足。各世界の雰囲気にあった絵になっていたと思います。また,背景も綺麗で,各世界の雰囲気が良く表現されていたと思います。◎。

【エロ】C
 エロは薄め。純愛系としては若干濃いめかな,位のレベルです。なので,実用性重視の方には厳しいと思います。ただ,シチュが良いのと,殆どが良い感じに着崩してのHなので,着衣Hスキーの私としては満足。特に彩・イリスとのHやサラの寝取られH(寝取られスキーの方にとってはヌルいかも知れませんが,取り立てて属性のない私としてはこのぐらいで十分でしたね)は良かったです。たくさん抜かせて貰いました。決して充実しているとは言えませんけど,個人的には結構満足しています。

 …………でも,ルイザさんのHは欲しかったなあ…………(;´д⊂)

【シナリオ】A
 担当は「水野潤・草壁祭」両氏。話の骨格は,現実世界と異世界(3種類。古代日本・中世イスラム・中世西欧がモチーフ)を行ったり来たりしながら最終的に両世界の問題を解決していく,というもの。片方の世界の問題を解決するためにはもう片方の世界での問題を解決しないとダメ……というような感じで,現実世界と異世界を上手くリンクさせています。また,両世界とも上手い具合にイベントを盛り込み,緩急取り混ぜて話を展開させているため,読んでいて引き込まれる,そんなシナリオに仕上がっていたと思います。
 さらに,このゲーム,話の中心に「宗教」を据えているのですが,変に説教臭くなったり宗教観が入り込んだりせず,読後感の良い話になっていた点も◎。自然信仰(古代日本),唯一神信仰(中世イスラム世界),教会が統制する宗教世界(西欧中世),新興宗教(現代)と,主要な宗教類型を網羅しつつ,しっかりとライターの考えを盛り込み,かといって押しつけがましくしていない。非常にバランスの良い書き方です。宗教を題材としたゲームの中では,かなり出来がよいのではないかと思いますね。
 どの世界の話(ラストシナリオ含む)とも,総じてレベルは高いです。外れの多い異世界越境ものの中で,久方ぶりに当たったと感じたシナリオでした。
 ただ,1つ難癖をつけるなら,各ヒロインのエンディングがアッサリしすぎている(はっきり言って無いに等しい)のは残念かな。折角ラブラブになったんだから,その後もしっかりと描いて欲しかったですね。

【結論】A−
 何よりシナリオの出来が良い作品。上手く現実世界と夢の世界をリンクできているし,各々のキャラのストーリーが独立して存在しているので,繰り返しプレーが苦にならない点も◎。絵やシステムなども高レベルで,安心しながら作品を楽しめる点が良かったです。
 ただ,(1)若干エンディングの描写が淡泊で印象が弱くなってしまっていること,(2)サブキャラに音声がないこと,(3)ルイザにHが無いこと,この3つは惜しまれます。これらさえ克服されていれば,Aは確実に出せていた,そんな作品だと思います。
 異世界越境もの・宗教ものとしては,かなり出来の良い作品だと思います。こういう系統の話の好きな方や,シナリオ重視の方にはお薦め。正直そこまで期待してはいなかった(とくに時期的に)のですが,思いがけず久方ぶりに満足のいく作品をプレーできたように思えた,そんな作品でした。

 個人的に好きだったキャラ→彩(イリス),ルイザ


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