終の館〜恋文〜 メーカー名:Circus FETISH 発売日:2004/02/27 メーカーホームページ:http://circus.nandemo.gr.jp/ 評価:B(70点) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― |
1,000円という価格設定にまず驚きました。それに,サンプルを見る限り着衣Hも期待できそうでしたし,話もなかなか面白そうだったので,まあ,ものは試しに買ってみようかな,というのが私の購入動機。 【システム】A− 標準的なノベルゲームですが,システム面で不便さは感じませんでした。バックログ(音声再生機能付き),2段階のメッセージスピード調整機能,ボリューム微調整機能等,欲しいと思うものは概ね整っており,また,機能割付・配列も妥当(マウスクリックのみですぐに諸機能を呼び出せるし,またメッセージウインドウ脇のキーでも呼び出せる)であり,とても使いやすかったです。さらに動作も非常に安定・軽快で,終始安心してプレーできました。 ただ,敢えて不満な箇所を挙げるとすれば回想モードの使いにくさかな。シーン名と立ち絵しか選択画面で表示されない(エロ絵が表示されていない)ので,どれがどのシーンなんだかが非常にわかりにくい。しかもエロシーンだけを抜き出すのではなく,本編を何十分割かしてそれを回想できるようにしている仕様のため,やはり抜きのためのツールとしては使いにくい。この点のみ不満でした。まあ,あとは特に文句もなく,全体としては優良なシステムといえるでしょう。 【音楽・音声】音楽:B,音声:B+ 音楽については,やや楽曲数が少なめ。まあ,これは流石に1,000円じゃあしょうがないでしょう。でも,曲の出来自体はなかなかで,戦前のお屋敷の独特な雰囲気・ちょっと閉塞感の漂う作品世界に良くマッチしていたんじゃないかと思います。あと,主題歌が2曲もついていることには驚きました。ただ,出来の方は正直どちらもイマイチだと思うんですが。 音声は……長崎みなみおねいさんが好きな方には垂涎ものでしょう。演技の方は問題ないと思います。ただ,やはりメインヒロインとあともう一人にしか音声が入っていないのは寂しいところ。同一作中に音声のあるキャラと無いキャラが混在しているのはちょっと違和感がありました。特にふみ乃のようなキーパーソンにも声がないのはちょっとどうかなとは思いましたね。まあ,これもこの値段設定だと贅沢な話なのかもしれませんが。 【絵】B− 担当は「ちのちもち」氏。存じ上げない方ですが,出来の方はなかなかなんではないかと思います。特にメイド服着用でのH絵は良いですね。また,立ち絵や差分のバリエーションが豊富だったのも良かった。メイド服を脱がそうとすると立ち絵も脱ぎかけの状態になるのは芸が細かいなと感心しました。ただ,基本的に顔の表情が平坦(感情の起伏が上手く表現できていない)であり,また,描写自体にも安定感が無いのは気になりました。シーンによっては別人に見えてしまったりすることもあります。この点は更なる鍛錬を望むところです。 【エロ】B+ 割と充実していたのには驚きました。数もそこそこありますし,描写も絵・テキストともに比較的丁寧。しっかりと射精後の差分も用意されていますし,フェラでのチュパ音とかもしっかりしていますから,思いの外抜けましたね。着衣H属性的にはメイド服Hのみに限定されますが,体位,服のはだけ方,タイツ・靴下描写ともにかなり頑張っており,個人的には満足です。シナリオとの結びつきもちゃんとつけつつ,これだけエロが入っていれば十分な出来でしょう。ただ,卑語もあるんですが,消しがかなり強いので,卑語目当ての方は要注意。 【シナリオ】B+ 担当は「沢柾機」氏。余り意外性とか面白みとかがあるシナリオではないですが,短い時間で綺麗に話をまとめたなとは思いました。手堅いシナリオでしょう。内容自体は,恋文を巡る傷痍軍人とメイドの苦悩話でして,典型的なシンデレラ・ストーリー(ただ,シンデレラと違ってやや後味は悪目ですが)。身分差に起因する“実らぬ恋”という現実と,ふみ乃を巡り屋敷の中に巣くう歪さ・閉塞感に翻弄される男女の様が,少ないボリュームのなかで過不足無く描かれていたのは評価したい。展開もテンポが良く,さくさくと読み進めていけるのは良かったと思いますね。 ただ,ややラストの締め方がイマイチというか中途半端な感じは受けました。あと,テキストにおかしい(文語表現としても不自然な)言い回しが散見されたのも気になりましたね。形容詞表現を名詞として扱ってしまっていたり,無理して文語体にしようとして破綻した言い回しになってしまったり,変な箇所で句読点をいれてしまって却ってテキストを読みにくくしてしまったりするのが好例。まあ,不満といえばこのくらいかな。全体としてはそつなくまとまったシナリオだと言えるでしょう。 【結論】B 「エロも話も平均以上の出来で,そつなくまとまった良作」。1,000円でこれだけのものが出せれば立派でしょう。8,800円でもこれよりレベルの低い作品なんて掃いて捨てるほどありますしね。個人的にはエロで何回も抜いたし,話もそこそこ楽しめたので満足しています。確かに不満な点もありますけど,でも気軽に買える値段設定で,これだけのレベルを維持した点については高く評価して然るべきでしょうね。間違いなく良作だと思います。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― レビューデータベースに戻る |