ゆきうた
 メーカー名:Survive
 発売日:2003/12/19
 メーカーホームページ:
http://survive.frontwing.jp/        評価:B+(75点)
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 淡い塗りをした独特の絵,これに惹かれて購入しました。購入後,鬱ゲーだとか着衣Hが少ないだとかいったことを聞いて戦々恐々だったんですが,果たしてその出来や如何に。

【システム】A−
 バックログ(音声再生機能付き/ホイールマウスに対応),メッセージスキップ(未既読判定あり),ボリューム調整機能(キャラごとの音声ON/OFFやBGM/SE/VOICEごとの音量の微調整が可能),セーブ&ロード機能(画像表示・コメント機能あり)と,ADVに必要と思われる基本的な機能は完備されており,かなり使いやすい。また,動作も安定しており,ディスクレスプレーも可能で,いつでも手軽に安心して起動しプレーできるのには感心しました。

 ただ,(1)メッセージスキップの速度が遅めであるのと,(2)起動してからタイトル画面になるまでに時間が掛かること,この2点はマイナス。特に,前者はバッドエンドを回収するときなどに意外と苛つく(BADルートは基本的にTRUEルートと共通で,最後の結末だけ違う場合が多いので,メッセージスキップを使用することが多かったものですから)原因となった点,付言しておきます。


【絵】A
 担当は「フミオ」氏。初めて拝見する方ですが,非常に綺麗な絵を描かれます。それこそ,私が絵買いしてしまうくらいに。しかもその魅力ある原画を本作の淡い塗りが見事に引き立てているんですよね(個人的には氏の絵には本作のような塗りが最善ではないかと思います)。素晴らしい。また,制服のデザインなども変に配色などで凝ったりせず,質素・オーソドックスなもので有りながらもそのセンスの良さを窺い知ることが出来るような,そんなグッドなデザインだったと思いますね(着衣H的には最高。でも……。→詳細は【エロ】項で)。さらに,立ち絵も充実しており,状況に応じて表情やポーズ,服装の違うものを用意してくるなど,バリエーションが豊富だったのは高く評価したい。特に立ち絵は近年の作品の中でもかなり力を入れているように感じました。こういう“しっかりとした”作りは個人的には◎ですね。

 ただ,立ち絵によってはやや顔の部位のデッサンが崩れがちなものがあった(特に雪那の鼻や摩尋の目など)のと,一部の一枚絵で足が異様に細かったり(特に摩尋で顕著。黒ニーソだと目立つんですよね,こういう点)立ち絵に比べて顔が幼くなるなど,やや絵柄に統一感が見られなかった点はマイナス。あと,摩尋との会話で,立ち絵に胸リボンがないのに「胸のリボンを直してやろうか?」みたいなやりとりをしていたのも気になりました。まあ,不満はそれくらいですね。

 
【音楽・音声】音楽:B−,音声:A−
 音楽は主題歌を含めて可もなく不可もなくといったところかな。別段印象に残る楽曲は有りませんでしたけど,ゲーム自体にはよくあっていたと思います。良くも悪くもBGM然としたBGM,そんなところでしょうか。

 他方,音声についてはなかなかの出来。存じ上げない方が多かったですが,どの方も大変演技が上手だったと思います。日常会話でのやりとりでも,みんな感情を込めて演じていたので,とても楽しく話を読み進めることが出来ました。ただ,唯一,菜乃(@桜井ももこ)がちょっとオバンくさすぎる声で違和感を感じてしまったのが………ね。狂言回し・ギャグキャラとしての演技は最高だったんですけど,結ばれるヒロインとしてはちょっとイヤかな,と(w。決して演技は悪くなかったんですけど,個人的には少し厳しかったです。


【エロ】C−
 純愛系ゲームとしては悪くない出来。1回あたりのHの尺が長めであり,テキストの描写も丁寧(ただ,あくまで純愛系のHの中では,という留保がつきますが),CG及び差分もふんだんに用意されている,と全体的に丁寧な仕事ぶりには感心しました。また,処女破瓜の状況やH前のやりとり,H後のアフターケアなどもしっかりと描かれており,ラブラブなHがお好きな方には申し分ない出来だと言えるでしょう。

 た・だ・し…………

 制服での着衣Hが殆ど無い……!!(血涙

 これだけは,これだけは冗談抜きで厳しかった……(;´д⊂)。あんなに良いデザインの制服なのに,あんなにおいしそうな(!?)黒ニーソ&紺ハイソなのに,あんなに着衣Hにしてくれといわんが如くなキャラとのマッチ具合なのにっ!!!! 何故なんですか!?(-_-#>制作者。あの,美しくて可愛い制服での着衣H,これをずっと期待していた私としては,これだけは許せなかったので,あえて評価をB→C−へと落としました。折角制服のデザインがよくても,それがエロに結びつけられなかったら意味無いじゃんかよぅ……(ノ`д´)ノ ┫:・’.:うがああー!!


【シナリオ】B+
 担当は「藤崎竜太」「ヤマグチノボル」両氏。やはり,これが最大のポイントですかねえ。結論から言ってしまいますが,「中盤までの展開は最高なのに,終盤で無理矢理鬱展開をくっつけてしまったため,話がうまくまとまらなかった作品」。これが私の私感です。

 まず,シナリオの構造としては,序盤から中盤に掛けてはほのぼのとした学園生活が展開されます。ここではマップ移動型のADV形式を採用しており,狙っているキャラをひたすらストーキングしてそのキャラとの会話を味わうことになります。そして,終盤では,中盤までで確定した(基本的に中盤まで狙っているキャラを選び続けていれば,容易にそのキャラの個別ルートに入れます)キャラとの間で修羅場を迎え,最終的にはそれを(一応)乗り越えてエンディング(各キャラともTRUE ENDとBAD ENDの2種類が存在)へと結実することになります。いわゆる「鬱展開」があるのはこのうち終盤のみです。そこで,次に各セクションにつき評価してみたいと思います。

 (1)序盤・中盤   ゲーム冒頭で本作の要である「丘の上の大木」について触れられますし,それ以降も雪那ルートなどでは何度かこの木について言及されますが,基本的にはそれよりも学園でのほのぼのとした生活がメインで描かれています。ここでヒロインや友人たちと交わされる会話は軽妙なものが中心であり,また,毎日朝・晩と挿入される菜乃のボケ会話・行動も非常に面白く(基本的に共通ルートなので1度見たらスキップ可能なんですが,あまりの面白さにスキップせず何度も見てしまいましたw),終始笑いながらプレーできました。端的に言えば出来の良いドタバタ学園ものといったところです。そして,このような楽しいやりとりを重ねていく過程で,狙っているヒロインの魅力を上手い具合に描き出し,プレイヤーにそのキャラへの愛着をもたせることに成功している。個人的にはこのあたりは非常に上手いなと思いました。

 ただ,一点苦言を呈するとすれば,個々のイベントにあまり繋がりがない点はマイナスかな。例えば,あるイベントで摩尋が不機嫌な状態だったのに,次のイベントではそのことを失念してしまっている,など。ある程度イベント同士が独立性をもつのはマップ移動型ADVでは致し方ない面がありますが,終盤に近づいていて徐々に話にきな臭さがでてくるところでは,もう少し「イベント間の繋がり」にも留意して頂きたかったですね。

 (2)終盤   で,これが最大の問題点。終盤になると,どのヒロインにも等しく試練が訪れます。そして,主人公はそのことに葛藤し,足掻き,最後は前述の大木のもたらす奇跡にすがることになるのですが,この奇跡が曲者で,必ず何らかの形で願い事をした者に負担を強いてきます。これが,鬱展開がもたらされる原因です。

 ご承知の方が多いと思いますが,私はいわゆる「鬱ゲー」に対してはかなり厳しめの評価をしています(レビュー方法のページでも述べている通りですし,また,レビューデータベースをご覧頂けばおわかりになると思います)。けれどもそれは,決して鬱展開が嫌いだからという,ただそれだけが原因な訳はありません(無論,鬱展開が個人的に嫌いだということも多分に影響を及ぼしてはいますけどね)。そうではなくて,鬱ゲーというのは往々にしてお涙頂戴で終わってしまったり,プレイヤーを憂鬱な気分にさせて煙に巻いたまま,話をうやむやにして無理矢理終わらせてしまうことが多いため,他の作品に比べて厳しく評価をすべきだと考えているからです。特に最近は,死とか病気などを安易に扱ったり,話に収拾がつかなくなってきたため無理矢理鬱展開を持ってきて結末をつけてしまおうとしたりするいい加減なゲームが増えているために,個人的には鬱ゲーの風潮に対しては懐疑的にならざるを得ないところが有ります(鬱ゲーについては,後日場を改めて私見をまとめる予定です)。

 で,以上の私の問題意識に則って本作をみるに,その「願いの代償」という考え方,そしてその代償の内容それ自体は許容できるし,また,納得できるものであったとも思っています。代償の内容・結末とも,それ自体では大して鬱になることもなく,また,シナリオライティングにおいて十分認めうる話の展開でもあったので。

 ただ,その展開の持ってくるやり方が強引すぎる。ネタバレ故詳細を語ることはしませんが,例えば,なんの伏線もなく急に摩尋についての真相を持ってきたり,今までの日常を無理矢理ぶった切って雪那との逃避行とその結末へと話を繋げたりといったように,あまりに展開の変化が突然すぎてかなり違和感を感じました。ぶっちゃけ,とってつけたように感じられてしまうんですよね,こういう展開だと。もっとちゃんと序盤・中盤のころから伏線を張るなどの工夫が欲しかったところです。また,鬱展開自体の描写も不十分で,あっけないくらい早くに片が付いてしまう点や,登場人物の言動に「一貫性・合理性」がない(例えば聡子の言動などが典型。なお,これはあくまで作中での言動に筋が通っているかということで,論理的・整合的な言動を意味するものではありません)点など,正直「はぁ?」と思ってしまうことが多かったです。さらに,TRUEルートでもBADルートと大差ないように感じられるエンディングが散見される点などは賛否の分かれるところではないでしょうか(個人的には,TRUEでもBADでも同じような展開をするくらいなら,TRUEルートにはもっと気分良く終われるエンディングを設けても良かったんではないかなあと思いました)。

 (3)全体として   総じて出来はよいと思います。キャラクターはどれも魅力的で生き生きとしていますし,そのやりとりも面白い。また,終盤の鬱展開自体も,鬱が嫌いな人にとっても話として許容しうる,そんな出来だったと思います。ただ,それだけに,十分な伏線張りや準備をすることなく,唐突に鬱展開に繋げてしまったその構成の拙さは勿体なさすぎる。全体的に,終盤は展開が急すぎて,とってつけたような感が否めなかったと思います。個人的には,どうせなら円満解決なハッピーエンドも欲しかったですし,それに本作のエンディングが良かったとも思ってはいませんが,それでも,もっと丁寧に話を紡げば,たとえ本作の結末のままでもBより高い評価を出せる,それだけの魅力を持ったシナリオだったと思っています。それだけに,終盤のおざなりさは非常に勿体ない。残念ですね。


【結論】B+
 「折角の出来なのに最後の最後でしくじってしまった作品。鬱展開を持ってくることへの説得力・訴求力が欲しかった(あとは制服での着衣Hも)」。どれも高レベルなのに,最後の話の結末でしくじってしまった感が強い,非常に惜しい作品。どうせなら安易に鬱に頼るのではなく,秀逸な出来の序盤・中盤の雰囲気を継続した,ほのぼのとした純愛系ゲームを作って欲しかったし,そうでないなら,もっと丁寧にその鬱展開を描いて欲しかったです。とってつけたような展開ではなしに。あとは,やはり制服での着衣Hが無かったのが痛かったですなあ……(;´д⊂)。これだけいいものを作っておきながら,この2つで台無しにしてしまったのは,ホント勿体なかったです。

 マイ萌えキャラ→青嶋摩尋。いうことなし。甘えてくる姿が可愛すぎる……(;´Д`)ハァハァ。



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