らずべりー【投稿者:GF長官さん
 メーカー名:戯画
 発売日:2004/08/27
 メーカーホームページ:
http://www.web-giga.com/        評価:C(50点)
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さて、8月末の祭が来たものの、金欠でこれしか買えなかった私。
戯画といえば、丸戸史明氏やTeam Baldrheadが有名ですが、
今作はそのどちらも関わっていません(多分)。
ただ、「ショコラ」のねこにゃん氏と企画屋(の誰だろ?)が
関わっているということだけで見切り買いした今作。
あまり期待はしてませんでしたが、さて、出来は如何に?


【システム】 C−
戯画の悪い面がモロに出てしまってます。
戯画はプログラマーで買えという有名な格言(?)もあるくらいで、
素晴らしいときは本当に素晴らしいのですが、
酷いときには本当に酷いです。
今作は酷い方でしょう。
スクリプトエラーによる強制終了はザラ。
初回プレイ時にパッチ当てずにプレイしたら
いきなり始めの選択肢に辿り着く前に強制終了。
パッチ(ver1.02)当てた後もスクリプトエラーによる
強制終了は続き、結局一周目終了するまでに落ちた回数は10回近く。
選択肢でのこまめなセーブにより被害は最小限で済みましたが、
流石にここまで落ちるとやる気が失せます。
本当にデバッグやってんのかね?と問い詰めたくなること小(ry。
落ちた個所はスキップで飛ばせば落ちないんですけど。
エラーの内容見る限りどうも音声のスクリプトエラーっぽいですね。
よくよくOHP見てみたらマスアプギリギリまで色々問題出ていたとのこと。
まぁそうでしょうなぁ・・・これじゃあねぇw
ああ、後、音声のミュートボタン、効きませんw

また、アップデートにより初期(ver1.0)のセーブデータは
使えなくなりますので、プレイ前に
アップデートしておくことをお勧めします。
足回りは必要最低限は揃ってますが
ウィンドウのレイアウト、デザイン等も一世代前のもの。
音声再再生、ログのホイール対応もついてはいますが、
ログになると、台詞が誰のだかわからない状態になる
(テキストのみで誰が喋っているか書いてない(汗))ので、
ログの存在価値が半減してます。

演出も特に目立つものは無し。
盥が当たる音と、殴られる音とズッコケる音が一緒とか、
目覚ましの音が電話の音とか、
SE関係では手抜きというか、雑なのが目立ちましたねぇ。
最近はこういう細かいところまで気をつけて
作っているゲームが多いので、この作り方は・・・でした。


【音楽】 B−
主題歌はKOTOKOですが、「さくらんぼキッス」(カラフルハート主題歌)の
焼き直しに近い感じです。歌詞といい曲調といい。
BGMも特に耳に残るものは無し。
イマイチでした。


【音声】 C
人は多いんですが、後述するシナリオの魅力の無さも手伝ってか、
とにかく聴くに堪えないものが多すぎる・・・。
元々あまり有名でない方が多いので期待はしてませんでしたが、
演技力がイマイチな方が多すぎ・・・。
通常会話くらい普通にこなして欲しいものです。
これはほぼ全員に見られた現象ですが、
下手に萌え声を出そうとしているのか違和感ありまくり。
おまけに棒読みの部分が散見されるのは如何なものかと・・・。
音声入れる以上演技力は必須でしょう。
無いなら無いで脳内補完しますんで、
音声は切って(音声音量0にして)やってました。
ちょっとね・・・これは酷かったですよ。
あ、後Hシーンにチュパ音等は無しです。


【絵】 B−
担当はねこにゃん氏、二兎氏。
なんと言ったらいいか・・・。
明らかに描いた人がわかる出来の違い。
特に立ち絵。塗りとかそういうもの以前に、
明らかに立ち絵がおかしいのがあるのは二兎氏の担当キャラ。
立ち絵が変化に対応していないものがあるのはどうしたものかと。
目と口の位置が変化に対応してないものがあるんですよね。
元々顔のレイアウト自体ちょっとおかしいんですが、
口の描き方や、目の書き方は、
もう少し修行された方がいいんじゃ・・・というレベル(三奈の顔がいい例)。
普通の表情は特に問題ないんですけど、喜怒哀楽の表情には
違和感を感じるものがありました。
何と言うかイマイチ立体感が無いんですよ、この方の絵は。
一枚絵は比較的よく出来ているんですがねぇ。

ねこにゃん氏の方はまぁ「ショコラ」とほぼ同レベル。
やはり立ち絵にちょっと違和感があります。
この方は学生服を描くのが苦手なのかなぁという気もしますし。
ヒラヒラの服なんかの絵は違和感無いんですが。
この辺はもしかしたら私の中で「ショコラ」のイメージが
強すぎるのが原因かもしれませんけどね。

どっちにしても、立ち絵のバリエーションが少なめな上、
テキストと立ち絵が合っていない場合が多く、
無い胸とテキストに書いてある奏の胸が明らかに
Cカップ以上とか(無い胸とはB以下だろ(私見))、
テキストの状況と立ち絵の雰囲気が違ったりとか、イマイチです。
一枚絵のほうは差分含めて220枚ほど。
出来は比較的立ち絵よりいいですが、顔の書き方が雑なものとかもありました。
とはいえ、何と言っても一枚絵より表示時間の長い立ち絵の出来が
イマイチだったのが大きなマイナスでしたね。

後、殆どの一枚絵にとにかくパンチラ、乳チラ等必ず何かしらの
チラ要素やエロ要素が入っているのもなんだかなぁと・・・。
別にシリアス系のイベントでの一枚絵に、
そんなもの入れなくてもいいんじゃないかと、そう思うんですが。
メリハリをもう少し利かせて欲しかったなとおもいます。
ま、イベントに必ずそういうシーンを絡ませている
シナリオのせいでもあるんですがね。
これは後述します。


【エロ】 B−
絡みはヒロイン一人頭大体2回ずつ。
とはいえ、告白即絡みなモノが多い上、
コスHはあるもののシチュの種類が少なく、
尺もそんなに長くない。
基本的に差分はそこそこありますが、
もともと前述した一枚絵でのチラが多いため、
絡みに入っても特に極端なエロさは感じません。
パンチラ、ブラチラなんかはいいんですけど、
その前のイベントで、全裸絵が何回も
出てきていたりするので、
絡みのエロさが半減してしまってます。
別にイベントの裸絵も大して凝ったシュチュで
出しているものじゃないですし。


【シナリオ】 C−
担当は木緒なち氏と企画屋。企画屋の誰が書いたのかはわかりません。
木緒なち氏がシェリル、奏、静音、おまけシナリオ、
企画屋が木ノ葉、鈴音、早苗を担当されたようです。
多分共通ルートは木緒氏でしょう。

まぁとにかく酷い。この一語に尽きます。
純愛系をやるのであるなら
もっとまともなシナリオにして欲しいものです。
日常会話や、心理描写が薄っぺらい上、
テンポにメリハリが特にあるわけでもなく、
展開もベタベタ。薄い描写に当然のようにメイドやら妹やら、
天然系やらの所謂萌え要素と呼ばれるものを、
特に何の考えもなしに散りばめてあるだけのようにしか見えません。
だから、個々の要素が調和しているわけでもなく逆に鼻につくだけになってます。
これが、エロ重視のゲームシナリオならまだわかるんですが、
純愛系のゲームシナリオですからね。
主人公にしてもヒロインにしても心理描写が適当もいい所。
あちらこちらのゲームで使い古された心理描写を、
そのまま持ってきているだけに過ぎません。

それに、テンポの切り替えが全然出来てないこと。
序盤から、中盤までずーっとほぼ同じ中途半端なテンポで進むので
場面によってギャグなんだか、シリアスなんだか全然はっきりしません。
ギャグは中途半端で全く笑えないですし。
純愛系は基本的に裸は最初は全く出さず、パンチラ、ブラチラをチョコっと出して、
最後に絡みを持ってくるのが普通なんですが、初っ端から乳出しとか、
全裸とかそういうイベント大杉・・・。
元々、共通ルートの骨子がしっかりしてないのが全ての原因なんでしょうけど。

骨子っぽい「バトル」とやらの描写が不完全で、
なんであの姉妹が喧嘩を始めたのか等の理由描写が不足している(もしくは安直過ぎる)上、
その「バトル」イベントに絡めた他のイベントが絡みきれてないこと、
主人公が関わることになってはいますが、その主人公の役割がイマイチはっきりしないこと
(結局主人公はこの「バトル」に関して何を具体的にやったのか)等の描写が
まぁ適当というか、おざなりというか・・・。
主人公は只単に、周りの状況に流されっぱなしで、
その「バトル」が終わってしまっているので、
それによって主人公とその周りの状況は女の子と仲良くなる以外の
何が変わったんだ?ということになります。
おまけに各ヒロインの後半エピソードに全くといっていいほど絡んでませんし。

もし、骨子が「バトル」でないのなら、
じゃあただ単に女の子と仲良くなるだけが
このゲームの骨子ということになるでしょうが、
それにしては告白までやたら悩むシーンがあるものの、
告白即絡みとか、ルート入った後はそのままEDまで一本道とか、
所謂女の子を「おとす」という純愛系ゲームにとって
必須の要素が完全に欠けてます。
もう少し、ヒロイン個別のイベントにおいて、
テンポの切り替えと他のイベントとの調和の取り方を
きちんとやって欲しかったところです。

後、多分これが一番の原因だと思いますが、
設定の活かし方、伏線の張り方が出来てないこと。
例えば、主人公はスポーツ万能という設定でその「バトル」に対する
「コーチ」になるわけですが、その「コーチ」になる為の理由付けに
「スポーツ万能」という主人公の設定が使われただけで、
その後その設定は全く活かされていません。
(もう一つの方向音痴というのも同様)
ヒロインも含めて各キャラの設定を活かしてもっとイベントを組み立てていけば、
もう少しまともなシナリオになったと思うのですが。

同じ戯画のゲームでも例えば「Baldr Force」なんかは、
元々ループシナリオであり、アクション系でジャンルが違うとはいえ、
途中途中でしっかり伏線を張っていき、何周もしていくにつれ、
それが活きてきます。

他社の純愛系ゲームで言うと、「とらいあんぐるハート3」とかがいい例でしょうか?
主人公、ヒロインそれぞれに色々な過去、性格、特徴等の設定があり
また、テーマとするべきしっかりとした骨子があり、
ストーリーが進むに従ってそれが色々なイベントとして絡み合っていき、
最終的にはそれを昇華しきってEDに持っていくといった手法を用いていました。

今回も例えば奏、静音シナリオとかがそれに近い感じですが、
後半、告白するのに、とある奏、静音に関わる「ブツ」が出てきます。
それを奏や静音が使う事になった理由は書いてありますが、
それを使うことになった過去の事件を具体的な形で
イベント(一枚絵付で)として描写するだけで
その前の話でそこに対する伏線も張れるし、大分話にふくらみが出てくるのになぁ
なんて思ったりもしましたし。
今回のシナリオは、色々伏線を張れそうな設定を使っているのにもかかわらず、
描写不足で膨らませきれてない部分が目立ちました。
この、イベントで話を膨らませるときに意図的にシナリオのテンポの
チェンジを謀るライターも多いので、そこをうまく使って欲しかったですね。

木緒氏の書いたシナリオ本編を読む限り、
ゲームシナリオを書くのに慣れていない方という感じだったので、
次回作をどんな感じで仕上げてくるのかという
期待を込めて評価をかなり辛口にしてみました。
(本当はもっとボロクソに書いても良かったんですけど(ぉ)
元々の設定は悪くは無いと思いますし。
(原型が「ショコラ」っぽいですがw)
この方は元々デザイナーらしいので
次があるかは微妙ですが、周りに丸戸氏等
うまいシナリオを書く方も多いはずですので、
次があるならその辺を参考にして頑張って欲しいですね。

企画屋さんのほうのシナリオは中盤、各ヒロイン別ルートに入ってからなのかな?
突然、シナリオの雰囲気が変わります。
鈴音はまぁ別として、早苗、木ノ葉ルートはデート描写等も
比較的しっかりしてますし、早苗は元々共通ルートで
一番魅力的に描かれていたキャラでした。
EDまでの流れもそこそこ綺麗なものですし。
木ノ葉も後半、ルートに入った途端に突然キャラ立ちがしっかりしてきます。
鈴音も悪くは無いですが、結局のところ全ヒロインに
関して言える事はキャラに対する掘り下げがボリューム不足。
膨らまそうと思えば膨らませられるところはいくらでもあるんですがねぇ。

結局のところ前半で、大雑把なキャラ立ちは書いていますが、それがなんか安直。
それが序盤、中盤でツカミが悪い原因かと。
どっかで見たようなキャラ設定がずらっと並んでいるだけ。
これじゃあちょっとキツイですよ。

最後に一番まともだったのが、おまけシナリオ。
なんか本編の言い訳に近いことが書いてあるような気が
しないでもないですが、一番、話の膨らませ方も流れも、
テンポも良かった気がします。
ま、で、要するに本編がイマイチなのはこの人が書いてるからなんですよ、
設定は私(木緒氏)が決めたんじゃないんですよ、
と言い訳しているように見えるのは深読みしすぎですかね?w
なんでこういう文章書けるのに本編でああなっちゃうか、
不思議でしょうがないのですけど。


【総評】 C (50点)
特に誉めるべき点が見つからず、
逆に粗が目立つ出来でした。
一番のマイナス点としてスクリプトエラーによる強制終了が多く、
ゆっくり腰を落ち着けて読むことが出来ないのは
どーしようも無かったです。
元々そんなに引き込まれるシナリオでは無かったですし、
声優の演技の酷さも目立って、やる気を保つのは一苦労でした。
既に書いたようにゲームバランス云々以前の
問題がありすぎるゲームです。

比較的名前の売れていない面々(一部除く)で作った
ゲームというところか考えると、
戯画の新人に経験をつませるために
作ったゲームといった感じでしょうか?
少なくともいいゲームを輩出しつづけている
中堅企業が作るゲームにしてはかなりお粗末な出来でした。

OHPの4コマ漫画は面白かったんだけどなぁ・・・。


お勧めキャラ:早苗・・・かな。
       多分このゲームでは一番まともなシナリオ、
       一番魅力的なキャラだと言えるのではないかと。



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