Lost Passage
 メーカー名:DEEP BLUE
 発売日:2002/06/28
 メーカーホームページ:
http://www.deepblue-soft.com/   評価:A−(85点)
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 超激戦の2002/06/28戦線でしたが,私は絵と雰囲気の良さに惹かれて本作を購入しました。

【システム】B
 システム面は軽快で,非常に使いやすかったです。また,バックログや未既読判別可のメッセージスキップ,各種カスタマイズ機能等,AVGに必要な機能が一通り揃っていたので,快適にプレーをすることが出来ました。◎。

 ただ,(1)フォントが非常に汚くて見づらい。表示フォントがギザギザの明朝体なので,非常に読みづらかったです。特に,行間が詰まっていてただでさえ見づらいバックログ表示時は尚更。(2)ホイールマウスに対応していない。バックログを呼び出す際,わざわざ「sys」ボタンを押してシステムを呼び出してからじゃないと表示出来ない仕様はかなり面倒。(3)バックログ時に音声を再生出来ない。やはり,聞き逃してしまった台詞等を後で再生出来た方がいいなあ。以上3点だけは不満でしたね。あとは文句なしなんですが。


【音楽・音声】音楽:B+,音声:A−
 音楽については,学園ものらしからぬ,幻想的な楽曲やどことなく不思議な感じのする楽曲が中心で,良い感じに本作の不可思議な雰囲気を煽っていたと思います。BGMとしてはベストではないかと。純愛系学園もの特有の脳天気な音楽がほとんど無かったのは,本作に関していえば成功だったのではないかと思いますね。

 また,主題歌「ポートレート」は,決して上手い歌ではないと思うんですが,でもかなりの中毒性のある楽曲かと思いますね。個人的には頭にこびりついて離れません……。本作を起動すると必ずこの楽曲は聴いてしまいますね。某キュンキュンのような電波な歌ではないんですけど,何故か強く印象に残る曲です。

 一方,音声については実力派声優陣が揃っていて◎。特にメインヒロイン2人の声は,声質・演技力とも申し分なく,非常に良かったです。ただ,人によっては若干演技力にばらつきがあるかなあとも思いましたが。でも,取り敢えず,間違いなく音声の存在が作品に深みを与えている,それだけの高レベルの出来に仕上がっていると思いますね。


【絵】A+
 担当は「きみづか葵」「蓮見江蘭」両氏。絵買いしただけあって,絵には全く文句のつけようがありませんでした。キャラのデザイン・服装・イベント絵の美しさから,H絵の構図や着崩し方に至るまで,非常に良かったです(塗りも綺麗でしたし)。

 特に,当サイトでも何度か取り上げていますが,本作の制服のデザインは最高。比較的地味目の配色で自己主張が少なそうなデザインでありながら,実はキャラに着せるとキャラの魅力を引き立てつつも服自身がエロさをアピールしてくる(別に露出度が激しいわけではないんですが,服越しに肢体の様子が良くわかるのは◎)秀逸なデザインの服装と,脚のムッチリ感が非常に良く伝わってくる肉感的な黒のオーバーニーソ(上部に白リボンでのアクセント有り)のセットは激しく(*´Д`)ハァハァ。今まで,それこそ何百とギャルゲーやエロゲーの制服を見てきましたけど,後にも先にも「制服着てただ座っているだけの絵」(広告用の絵。OHP「Lost Passage」情報ページのindex.html最上部の観月&沙雪絵参照。無論,エロ要素は皆無)に(*´Д`)ハァハァしたのは本作だけです。てかエロ過ぎるよ,この制服……。無論,他の服装(スーツ,巫女服,私服,水着,浴衣など)も文句なしのデザインなんですけどね。個人的には大満足の出来でした。


【エロ】A−
 着衣Hマンセー!! コスプレマンマンセー!!(´▽`)ノ

 【絵】でも述べた,秀逸なデザインの制服でのHが満喫出来ます(観月・沙雪・エリナ)。また,スーツ&ストッキングほぼ着用したままでのH(理乃)や風呂場での巫女服着用H(めぐみ)など,他の服装でのHも個人的にかなりツボに来ましたね。着衣率が極めて高く,また脱がしていても服装の原形を留めている&乳首の視認性を確保しているのは流石。エロのテキストも,描写自体は普通ですが(ただし丁寧ではあります),着衣Hに関してはかなり凝って描写していました。ホント,流石ですなあ(w。エロは総じて非常に良かったです。

 ただし,観月の制服Hのみ,脱衣率が高いのはマイナス。パイズリ段階ではほぼ制服を着たままでグッドだったんですが,いざ騎乗位で挿入ってときにはニーソ以外全部服を剥いでしまっていてガッカリ。まあ,それでもニーソは脱がさないところに漢を感じたのではありますが。でもやはり沙雪やエリナであれだけ良い感じの制服着衣Hがあるだけに,観月制服Hの体たらくぶりは残念(特に私は制服組の中では観月がベストキャラだっただけに,口惜しくて……)。これさえどうにかなっていれば間違いなくAだったんですけどねえ。


【シナリオ】A
 さて,ご存知の方も多いと思いますが,「御子石勇太(御子石大郁)」氏担当の本項目が本作で最も賛否の分かれる点であります。

 本作は「教育実習アドベンチャー」などと題うっていますが,決して「教育実習中に教生や生徒と仲良くなるのがメインの純愛系ゲーム」ではありません(この様な話になるのは基本的には理乃・育美ルートのみ)。本作の肝は過剰なまでの鬱展開とウンザリとするほどの歴史蘊蓄にあります。以下で本作のシナリオの特徴につき見ていきたいと思います。

 (1)怒濤の鬱展開   私自身,昨年買ってすぐにプレーした時に驚いたんですが,本作は非常に鬱展開が多い。ネタバレ故詳細は語りませんが,「スキンヘッド・消滅・事故・死亡・破滅・歪んだ依存関係」といった用語に象徴されるような,怒濤の鬱がプレイヤーを待ち受けています。しかも,最初BADエンドしか見られないようにしていたり,TRUEエンドを見るために全てのエンドを回収しないといけなくしていたりなど,その鬱を半ば不可避的に見させられます。個人的には鬱は苦手なので,非常にきつかったですね(ただ,理に適った鬱展開が中心だったので,なんとか耐えられたんですけどね)。なので,後味の悪さに耐えられない方は要注意。

 (2)驚くほどの蘊蓄   特に日本古代史を中心に,凄まじい勢いで蘊蓄が繰り広げられていきます。しかも,単に蘊蓄を披露するだけでなく,その蘊蓄をシナリオの展開に組み込んでいる点が凄い。「まさか『教育実習アドベンチャー』がこんな展開を見せるとは……」とやっていて驚愕させられましたね。非常に練り込んであるシナリオだと思いました。私は文系でしたが,大学受験では世界史と地理(及び後期用に倫理)しかやってなくてしかも学部も法学部だったんで,ここで述べられている蘊蓄の真偽の程はわかりかねる面があったのですが,でも説得的で非常に面白かったです(後で神功皇后とかに興味がわいて,「古事記」を読んでしまったほど)。トンデモ説なのかもしれませんが,私はエロゲーに歴史考証の正確さ等は求めていない(上手く話の展開に織り込んであって説得的ならそれでいい)ので,その確度についてはあまり気にしていません。ただ,内容自体はいいんですけど,蘊蓄の見せ方が下手。突然蘊蓄が始まったと思ったら,その後延々と蘊蓄談義をしてしまう点は,プレイヤーを置いてきぼりにしやすいという点でマズイのではないかなあと思いました。もう少しバランス良く配置(例えば,日常の生活を送っていく中で,少しずつコアとなる蘊蓄を織り交ぜていくとか)したほうが,一気に蘊蓄を披露するよりも,蘊蓄の垂れ流しに思われずに済んだのではないかというのが私感ですね。

 (3)本作のイメージ   個人的には本作には「夕暮れ時」や「夕闇」といったイメージがあります。別に夕方のシーンばかりというわけではなく,朝とか昼のシーンも多いのですが,でも夕暮れ時のシーンが強く印象に残っているのと,全般的にもの悲しくやや閉塞気味な世界を描いていて,それが夕闇のイメージと被るので,このようなイメージを強く抱きました。他の純愛系ゲームにはない,印象深さや奥深さ,もの悲しさの表れかも知れません。

 (4)全体として   正直,初めてプレーした当初はあまり良い印象がありませんでした。ウンザリするくらいに見させられる蘊蓄と鬱に参ってしまっていたというのが本当のところです。しかし,それは話の構成の仕方が良くないだけであって,話自体は非常に面白い。しかも,(a)鬱や蘊蓄がちゃんとシナリオの中で意味を持っている点(理不尽な鬱や蘊蓄ではない),(b)並の純愛系には望み得ない(ただの萌えや純愛だけでない),独特の雰囲気を持つ世界を作り出している点,(c)キャラ立てが巧みで,キャラへの萌えもかなりある点,以上は高く評価しています。


【結論】A−
 「間違いなく問題作ではあるが,他にはない魅力をもつ。独自性の強さからいつまでも印象に残っている稀有な作品」。特にシナリオが賛否両論かと思いますが,個人的には非常に楽しめ,かつ今に至っても尚印象深い作品として記憶に残っている点で,本作の評価をこのように高めにすることとしました。当初はこのように並程度の評価だったのですが,日が経つにつれて,本作に対する思い入れというか愛着が増していくのにかなり驚いています。良い意味でも悪い意味でも,強く印象に残った作品でした。かなり人を選ぶ作品ではありますが,是非一度はプレーされることをお薦めします。他の純愛系とはひと味違うゲームを楽しみたいあなたへ。

 マイ萌えキャラ→魅力的なキャラが多いですけど,やっぱ宇佐観月と夏越理乃かな。


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