秋色恋華
 メーカー名:Purple Software
 発売日:2005/02/25
 メーカーホームページ:
http://www.purplesoftware.jp/         評価:A−(80点)
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 体験版の出来の良さを受けて,急遽購入することに決めた一作。余計なことを考えずに,素直に純愛ストーリーを楽しめる形になっていると良いなあ(「夏色小町」みたいに中途半端に鬱ゲーだったら嫌だなあ),と思っていたんですが,果たしてその出来や如何に。


【システム】A
 必要な機能やあると便利な機能が完備。動作も軽快安定。機能割付も完璧で,マウス一つで操作可能。さらに細かい調整や割付のカスタマイズも出来る,と大変良い出来です。ただ,(1)一部で立ち絵に齟齬がある(葵ルートのゲームセンターでのシーンで,別キャラの立ち絵が伊吹の立ち絵になってしまっており,結果,伊吹の立ち絵が左右に2つ表示されてしまうなど。ただ,2005/02/26付けで修正パッチがでている模様)点と,(2)システム画面の表示フォントが特殊すぎて見にくい点は気になりましたので付言しておきたいと思います。


【絵・エロ】絵・エロともにB+
 担当は「月杜尋」「悠樹真琴」両氏。可愛らしい絵柄で個人的には○です。今回は特に,「夏色小町」に比べてHシーンの一枚絵でエロさ・妖艶さが増した点に感心しています。体位・構図・着衣Hの具合等にかなりこだわっている感じがあって,個人的には高く評価したい。Hテキストの尺も十分でしたし,エロ関連は総じて「夏色小町」に比べ大幅にパワーアップしている感を受けました。和姦が殆どであり,またシチュ的にも特殊なものが殆ど無い為,エロ重視の方には厳しい出来かと思いますが,素直に純愛系のHを楽しみたい方(おそらく本作のメインターゲットと思われる)には満足のいく出来ではないかと思いますね。ただ,このようにエロ関連はパワーアップしたんですけど,正直絵柄自体は「夏色小町」に比べて劣化してしまったような気が個人的にはしました。特に目の大きさとか顔の各要素のバランスとかの歪さが目に付いてしまったのは残念。


【音声・音楽】音声:B,音楽:A−
 音楽は主題歌・BGMともにハイレベル。ボーカル曲を3曲用意したり,ストーリーの展開に併せて特別に楽曲を用意するなど,力を入れていることが伺える出来だったと思います。特に主題歌「秋色」は良い出来ですねえ。音楽関係は満足のいく出来だったように思います。反面,音声はやや不満かな。演技レベルはそこそこ良いんですけど,絵柄に比べて全般的に声が高すぎるような気がします(特に伊吹など)。文句をいうほどではないとは思うのですが,個人的には少し違和感があったように思います。


【演出】
 「夏色小町」でもそうでしたが,このメーカーは演出にこだわっているように思います。今回も,たとえばHシーンで一枚絵を局所的にアップしてエロさを出したり,背景画を断片的に映し出して移動している感を表現したり,漫画的な表現効果(汗の表示など)を多用してコミカルな感じを演出したり等といった工夫が見られ,感心しました。あと,やはり特筆すべきはOPムービーの綺麗さ。今までアニメーションを用いたエロゲーのムービーは多く目にしてきましたが,今作はそのなかでもかなり健闘している出来だと思います。線の荒さや動きのぎこちなさ等が目立たず,主題歌ともマッチしていて,個人的にはかなり良い出来だったように思いますね。◎。

 <脱線>これは勝手な推察なんですけど,OPで葵が自転車で坂を駆け下りるシーン,あれって京王井の頭線駒場東大前〜池の上間の様子なんじゃないかなあ,なんてちょっと思ったり。いや,なんの確証もないですし,多分間違っているとは思うんですが,でもどことなくあの付近の面影があったものですから。


【シナリオ】A−
 担当は「島津出水」「秋史恭」「北川晴」「山田光一郎」各氏。結論から言ってしまえば「純愛ものの王道を追及した,きわめてオーソドックスな出来。シナリオに斬新さや奇抜さは皆無だが,純愛ものとしてのお約束を徹底的に守っており,また,適度にシリアスとギャグを織り交ぜている上に,変な鬱要素などは盛り込んでいないため,終始安心してストーリーを楽しめるのは非常に良い。キャラクターも魅力的で,総じて純愛ものとしてのレベルは高い。ただ,ややボリュームが不足気味で,そのためにルートによっては若干消化不良の感があるのが残念」といった所でしょうか。

 話的にはごくごくオーソドックスな学園もので,学園生活及び修学旅行を通じて女の子と仲良くなる,というのがメイン。そこに各キャラの属性(プロスポーツ選手,アイドル(&義妹),女教師(&幼馴染み),お嬢様,無口でぶっきらぼうな同級生)に合わせて話にアクセント・多様性をつける形(たとえば恵里子なら「生徒と教師の禁断の恋」,葵なら「アイドルとの障害多き恋愛」「義妹との許されざる関係」のような感じで)になっています。それぞれのルートの話も真新しいものは殆ど無く,はっきり言って使い古された設定・展開ばかりですが,だからこそ安心して純愛系のお話が楽しめる点,個人的には良いんじゃないかと思います。テキストライティングも比較的丁寧ですし,純愛系・学園もののお話として考え得る要素が殆ど盛り込まれている,純愛系ゲームの教科書的作品なので,こういった系統のお話がお好きな方なら,十分お薦めするに足る出来だと思いますね。

 ただ,このメーカーの作品全般にいえる特徴として,総じてボリュームが少なめな点は注意を要するところです。今作は「夏色小町」などに比べるとかなり頑張っている方ですが,それでも共通ルートを除いた個別ルートの分量が1人当たり2時間程度と少なめ(しかも,個別ルートでも素材となるイベント(修学旅行,遊園地等)は殆ど差異がないので,実時間以上に短く感じます)。そのため,1回ごとに時間をかけることなくサクッとプレーできるため,時間のない社会人には優しい仕様である反面,「え,もう終わり!?」みたいに思ってしまってあまりお得感がないのは賛否が分かれるところでしょう。さらに,ボリュームが少ないために,伏線や必要なシーンの描写が十分でないことが多く,そのために消化不良感を抱きやすいのも気になるところです。典型は恵里子ルートで,こっそりと人目を忍んでつきあうシーンを十分に描ききっていないため,教師と生徒との恋愛における後ろめたさ・背徳感みたいなものを余り表現できぬまま,ちょっと問題は生じるけど,いつの間にか解決していてみんなに祝福されてハイおしまい,みたいな感じになってしまったのには流石に唖然としました。もう少しそれぞれのルートに必要な要素を丁寧に描いてくれるといいのになあ,というのが私感ですね。あと,口では「もっと(ヒロインに)気を遣ってあげなきゃ」云々と言っているのに,いざ行動に起こすと全くそれらが考慮されず,自分のやりたいように振る舞ってしまうという,エロゲによく見られる主人公像は本作でもあります。これを若さ故の未熟さと捉えるか,自分勝手と捉えるかで,本作に対してもつ印象はガラッと変わってしまうのではないでしょうか。

 まあ,上記のような気になった点はありましたけど,でも総じて言えば丁寧な出来で,純愛系のお話がお好きならお薦めできます。真新しさはないですけど,堅実な仕上がりになっており,個人的には感心しました。

 <脱線>どうでもいいことですが,学生が修学旅行でハワイって,ちょっと贅沢すぎる気が……(と考える私は古い人間なんでしょうかw)。修学旅行って言ったら普通は奈良か京都(あと地域によっては東京)だろう,とか私は思うんですけどねえ。


【結論】A−
 「手堅くまとめた純愛系ゲームの教科書的作品。斬新さはないが,王道路線に忠実で変な鬱要素等もなく,安心してプレーできる点が売り」。ともかく「手堅い出来」の一言。キッチリシッカリ作り込んであるので,買って損をすることはないと思います。ともかくハズレは引きたくないという方には大いにお薦めできます。反面,「他にはない売り」みたいなものを重視される方には向きません。購入を検討される際には,ご自身がはたしてどちらのタイプなのかをよく考えて頂くのがよろしいかと思いますね。私はこういう手堅い作品には共感を覚える質なので,十分に満足させて頂きました。

 マイ萌えキャラ→やっぱり戸倉真由ですかねえ。ああいうウブな反応は大好きですね(w。


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