ENSEMBLE〜舞降る羽のアンサンブル〜
 メーカー名:F&C(FC03)
 発売日:2004/01/30
 メーカーホームページ:
http://www.fandc.co.jp/及びhttp://www.dreamsoft.jp/  評価:A−(85点)
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 本当は買うつもりじゃなかったんですが,アソビットで平積みされているのを見て,つい……。なんか面白そうな話だったので,シナリオ狙いで購入。まあ,FC03(DreamSoft)は安定したレベルの作品を供給し続ける優良ブランドですから,しくじることはないだろうという安心感は最初から持っていましたが。果たしてその出来や如何に。

【システム】B+
 相変わらず充実したシステム周りで感心します。バックログ(音声再生機能付き),ボリューム調節,メッセージスキップ,クイックセーブ等は当然完備。それだけでなく,ドラマモード(基本はオートスキップだが,主人公の台詞やト書き以外一切テキストを表示させないことで,キャラ達が自然と会話を繰り広げているかのようにみせる機能。FC03作品,とくに「夜の来ない朝に抱かれて」等ではお馴染み。まるでドラマを見ているかのようにしてプレーできるモードで,演出上とても優れている)やキャラ別セーブ枠,クイックセーブでの複数データ保存機能(たとえクイックセーブをしても,以前クイックセーブしたデータが上書きされず,別データとして保存される機能。ついうっかり上書きしてしまった,というときでも大丈夫なのでかなり重宝します)や直前の選択肢に戻れる機能など,あると便利な機能が充実しており,とても便利です。しかも動作も安定していますから,安心してプレーできる点は非常に良い。フルインスト時にディスクレスプレーも可能ですし,今回はいつもと違ってDVD媒体なので,インストール時の手間もかなり軽減される(いつもはCD3〜4枚組でかなり面倒でしたから正直助かります)など,ユーザーフレンドリーな出来に仕上がっている点は高く評価したい。

 ただ,(1)セーブやロードをするのに手間が掛かる点(システム画面を呼び出した上で更にセーブ(or ロード)機能を呼び出さなければならず,かなり面倒。クイックセーブと同様にウィンドウ枠側面のボタンで一発セーブ&ロードが出来ると良かったんですが)と(2)長時間起動したPCでプレーすると処理が激重になる点,(3)フルインストールしない(DVDから直接音声を再生する)とたまに読み込みミスを起こす点(これは私のところのPCがヘボいせいかもしれませんが),以上3点は不満の残るところでしたが,まあそれ以外は文句なしです。


【絵】A−
 担当は「針玉ヒロキ」氏。今更ですが,非常に個性的な絵を描かれる方だと思います。今作でも相変わらずの「他にはない絵」で,初めはかなり圧倒されました。特に淳(北海道)編の制服に代表される「奇天烈な服装」には吃驚……(;´Д`)。でも,慣れて来ると次第に何とも思わなくなるのが不思議ですね。個性的な絵柄なので人を選びますけど,可愛さや画力という点ではかなりのものだと思いますし,それに,「学園の制服」であると考えさえしなければ,あの服装自体は可愛さ的にもエロ的にも無問題なんじゃないかな? 個人的には楓(東京)編の制服なんかは凄く好きです。……嗚呼,あの制服で若葉と着衣H出来たら良かったのになあ……(溜息。


【音楽・音声】音声・音声ともにA
 どちらも珠玉の出来で全く文句のつけようがありません。まず音声ですが,皆さんとてもお上手で,しかもキャスティング的にも最適だったので,日常会話・エロどちらも凄く盛り上がります。男性を含めてフルボイスですし,キャラ同士の掛け合いとかも豊富で,久々に「良い演技」を見せてもらいました。特に文緒さん(@かわしまりの)に「メッなんです」とか「病んでる……」なんて言われた日にゃあ,あたしゃあ……(;´Д`)ハァハァ。桜子(@春瀬みき)と聖歌(@一色ヒカル)とのやりとりとか,EX-STORYでのリエス(@歌織)の壊れっぷりなんかもとても良かったですし,大満足ですね。

 ただ,唯一難点を挙げるとすれば,楓(主人公)に音声がないことかな。本作は主人公に感情移入してプレーするタイプのゲームではない(詳細は後述)ですし,それにドラマモードで主人公だけ音声が無いと間が抜けた感じがしますから,「朝が来ない夜に抱かれて」みたいに主人公にも声を入れて欲しかったですね。

 他方,音楽についてですが,こちらもかなり健闘。以前「虹の彼方に」では音楽をこきおろした気がしますが,今回は比べものにならないほどレベルが上がっています。特に主題歌2曲の出来が秀逸で,非常に聞き応えがあります。OP曲の「抱きしめて」なんかはムービーとの相性も完璧ですし,とても良かったですねえ(short ver.しか入っていなかったんですが,full ver.は無いのかしらん?)。また,BGMも嵌り具合が最高。特に友希乃の飲み屋でのBGMなんか嵌りすぎて笑ってしまいました(w。こちらも満足ですね。


【演出・シナリオ】シナリオはA−
 で,特筆すべきはこの項。相変わらずこのメーカーの演出への拘りは凄い。「朝の来ない夜に抱かれて」や「虹の彼方に」でも証明済みですが,作品の隅々に至るまで徹底して演出に拘るその姿勢と技術力は高く評価して然るべきだと私は思っています。

 いろいろと述べたいことはありますが,まずなにより,本作の演出では徹底して「TVドラマらしさ」を追求しているように感じました。シナリオを各話構成にしているのもそうですし,それぞれにOPムービーとEDムービーを挿入するのもそう。しかもただ各話構成という形だけ揃えるのではなく,例えばOPムービーの挿入するタイミング一つとっても,「テレビドラマだとこのタイミングでOPを入れるだろうな」と思う瞬間に,絶妙のタイミングで挿入してくる。なかなか言葉では説明しにくいんですが,プレーされれば必ず「上手いな」と思われるんじゃないかと思いますね。

 また,この各話構成というのは演出面だけでなく,プレイヤーに対する負担やプレーしやすさという点でも優れています。1カタマリのシナリオを1〜2時間程度で読了できる構成となっており,しかもいま自分がどの段階にいるのかが話数だけである程度わかりますから,とても長いシナリオであるにもかかわらずプレーしやすい。毎回気軽に少しずつ進められるのはとても良かったと思います。こういった点でも作品におけるユーザーフレンドリーな姿勢が現れているんじゃないかと思いますね。

 そして,シナリオの内容面でも「TVドラマらしさ」は追求されています。本作では,明確なストーリー軸みたいなのがあらかじめあって,それに沿って話の勢いでプレイヤーを引き込んでいくような,俗に言う「シナリオ重視」の作品とは一線を画している面があります。終始マターリと,でもいろいろなイベントを挿入してメリハリをつけ退屈にならないようにしながら,進行していくシナリオ。誤解の無いように言っておきますが,本作でもちゃんとストーリーはあります。序盤から張り巡らされた伏線が最終話近くでしっかりと回収される様は,一般のADVにもひけをとらない出来です(ただ,最終話が唐突すぎる&展開が急すぎるのは気になったけど)。でも,本作の売りはそこではない。本作の売りは,個々の要素を突出させて一つの作品としての調和を乱すのではなく,互いに均衡を取り合いながら徹底してドラマらしさを追求するそのバランスの良さにあると私は思っています。これはなかなかできないことでして,個人的にはこういうバランスの良い作品の方が,いわゆる「シナリオ重視」のゲームのようにどこか一つだけが突出したものよりも高く評価されて然るべきだと思っているんですが,こう考えるのは少数派なのかな?

 押しつけがましくストーリーを読むことをプレイヤーに強要するスタイルのゲームではなくて,魅力的なキャラクター達が織りなす日常の生活を,一歩引いた立場から垣間見ること,これが本作のプレースタイル。まさに昨今のトレンディドラマと同じで,その作品世界(特に主人公)に自己を投影するのではなく,あくまでプレイヤーは神・第三者的立場におかれることになります。ですから,あまり気疲れせず,気軽にTVを見ているかのようにプレーできるのは大変良かった。マターリとしたシナリオですし,プレースタイルも独特ですから人を選ぶと思いますが,でも従来のFC03,そして古き良き時代のF&Cの明るいシナリオが好きだった方には,間違いなくお薦めできる,そんな出来だと思いますね。

 あと,書き残した点を何点か簡単に。まず演出面では,

 (1)ムービーが格好良い&充実している   特に起動後に表示されるOPは格好良すぎ。音楽との嵌り具合・アニメーションの妙もグッドで,相変わらずセンスの良いムービーを作ってくるなあと感心しました。個人的にはここのメーカーのムービーは好きだなあ。感性が合うのかな? また,雨空や晴れ渡る空といった,環境ムービーが必要に応じて挿入されるのも良い。正直挿入のタイミングとか本編の一枚絵との接合具合については「朝の来ない夜に抱かれて」ほど印象に残りませんでした(てか,それはこのゲームが凄すぎただけなんですが)が,それでも効果的にムービーを用いていたのは◎。

 (2)画面効果に拘りがある   例えば,現実にビデオを再生させると「ノイズ画面→画面がぶれて映像が再生され始める→次第に映像が鮮明になる」という順番が踏まれるわけですが,本作ではしっかりとこの様が表現されています。また,画面上に「ビデオ再生」みたいな表示まで出すなど,徹底して画面効果に拘る姿勢にはとても感心しました。

 (3)効果音や音声のエフェクトが充実している   本作は画面効果だけでなく,「音」にもかなり力が入れられています。人物だけでなく犬の鳴き声やトラックのバック時に流れる音声にまでしっかりと声が入っていますし,車のブレーキ音などのような効果音も充実。また,ただ数だけ揃えている訳ではなく,例えば車が近づいてきたら次第に音量が上がっていくといったように,ボリュームやエフェクトにまで気を遣っているのは好感触でした。

 次にシナリオについてですが,

 (4)選んだルートによって他ルートでは明かされなかった謎が解明される場合がある   例えば,最終話で大が最後いなくなったことの顛末などが好例。他ルートだとただ急にいなくなったとしか説明されませんが,文緒ルートなどではしっかりと事情が説明されます。このように,ルートによっては謎が明かされたり明かされなかったりすることが多いので,全てのことの真相を知るためには複数回プレーは必須でしょう。

 (5)主人公が比較的常識人   わりと主人公がまともなので,不快にならずプレーできたのはとてもよかったです。最近は主人公=ヘタレ or DQNがデフォでしたから,こういうまともな主人公はやっていて新鮮でした。……病んでるなあ,俺(w。

 (6)共通ルートが長い&一部のヒロイン以外のシナリオが薄め   淳編・楓編ともに選んだルートによって大きく話が変わりますが,でも基本となる軸は一つしかありません。ですから,どうしても共通ルートが多くなってしまうという弊害が出てきてしまっています(ただ,桜子編=コメディ,若葉編=シリアスといったように話の味付けが変わってくるので,個人的にはそこまで気にならなかったのですが)。また,その共通ルートは基本的に桜子・若葉・淳というメインヒロインたちが話の中心になる(無論,文緒のような例外もありますが)ため,メイン系とサブ系でシナリオの書込に差が出てきてしまう点は否めないですね。

 (7)ルートの選択如何では話に不整合が生じる場合がある   例えば,淳編で文緒ルートを選択し続け,最後の選択で友希乃ルートを選んだときなどが挙げられます。この友希乃ルートでは宣伝ビデオの撮影についてが主に取り上げられますが,この件はもう既に共通ルートで言及済みであり,話に整合性がありません。このように,選択をしくじると話がおかしくなる点が何点か散見されたことは付言しておきます。

 こんなものでしょうかね。ただ,いろいろと書きましたが,全体としてはかなりレベルの高い作品だと思います。個人的には大いに楽しませてもらいました。


【エロ】C
 エロ自体の出来はなかなかだと思います。あまり非常識なシチュ(例えば,触手のような非現実的なシチュ・属性は皆無)はなく,現実にありそうなエロシチュで丁寧に描かれます(例えば破瓜のシーン)。また,周りにあるようなものを使って簡易調教を行ったりするのは殊の外興奮しますね。個人的には教育実習中,桜子を倉庫に連れ込んでスーツのまま犯してしまうシチュに激しく(;´Д`)ハァハァでした。いいねえ,あのシチュ(←外道)。

 ただ,エロのシナリオへの組み込みといった点についてはやや不満なところが残ります。メインの純愛ルートと,バッド系の鬼畜ルートが乖離してしまっている点はマズイ。話から外れた鬼畜ルートではなかなか執拗なエロが描かれるのですが,メインの純愛ルートだとどうしても限られたエロ内容になりがち(しかもCGの流用も多め)なので,話を楽しむのとエロを楽しむのが別になってしまっている場合が多く,ちょっと残念でした。また,キャラクターによってHの数に差があるのは厳しいかもしれません。特にサブ系が好きな人にとっては。基本的に,メイン系にHが偏っていますからね。あと,Hシーンで差分絵があったり無かったりするのは謎。つけるなら全てのシーンにつけて欲しかったです。また,破瓜の血の描写がなかったので,処女属性の方は不満に思われるかも。そして何より,制服を初めとする着衣Hが少なかったのは噴飯もの。あれだけ抜ける服装をしていながら(特に若葉の制服姿や文緒のメイド服姿),その格好での着衣Hがないとはっ!!!!! 若葉の制服着衣Hや文緒のメイド服Hが無くて涙を流したのは私だけでしょうか,いやそうじゃない(反語)。この最後の点だけは非常に不満でした。


【結論】A−
 「演出をはじめメーカー側の拘りが随所に見られるADV大作。徹底してトレンディドラマっぽさを目指したその姿勢と完成度の高さには感心」。面白い作品だった,この一言に尽きます。個人的には近年のF&C作品の中で最高傑作だと思っています。システムやエロ,とりわけ着衣Hの少なさで評価的にはA−ですが,でも間違いなく完成度は高い一品です。ADVにおける演出の大切さを教えてくれる,そんなゲームだと思います。マターリとした,古き良き時代のF&Cシナリオをそのまま体現したゲームですから,現在の潮流とは反する面があり万人にお薦めできるソフトではありませんが,もし気になった方はやってみてはいかがでしょうか。個人的にはとても満足させて頂きました。

 ちなみに。若葉の制服Hと文緒のメイド服HがあればAを出すつもりでした。これはマジです(w。

 マイ萌えキャラ→美崎文緒! 「メッ!」ってもっと言ってください(*´Д`)ハァハァ。あとはやっぱり寺田桜子。どこにでもいそうな勝ち気娘なところが逆に良いですなあ。



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