魔王の娘たち
 メーカー名:Studio e.go!
 発売日:2004/04/23
 メーカーホームページ:
http://www.studio-ego.co.jp/        評価:B−(65点)
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 体験版をやって感じた,ホノボノっぷりが好きだったので購入しました。

【ゲームシステム及び内容】
 一応,娘2人を育成していくSLGパート(娘2人+魔王の行動を毎回選択する)がありますが,実際にはAVGに近いです。というのもSLGパートが殆ど攻略に関係ないためで,基本的には攻略したいキャラを選び続けていれば攻略できてしまうので(ただしセレスを除く。セレスルートの場合は知力(ティナ)と腕力(ジェム)を規定値以上まで上げる必要があります),SLGパートの戦略性・ゲーム性は乏しいといわざるを得ません(ぶっちゃけ,無くても良かった気すらします)。ですから,SLGパートには期待しない方が良いと思います。


【システム】B
 Studio e・go!汎用のシステムを使用しているため使い勝手がわかっていてプレーしやすかったですが,反面いつもと同様の問題点も残存。(1)メッセージスキップや画面の切り替えがやや遅め(ただし,従来作品よりは軽快になっています),(2)セーブで日付とイベント名しか記録されない,(3)バックログに音声再生機能がない,(4)プレー中常にCD-ROMへのアクセスがあり,CD-ROMドライブへ過度の負担がかかる(これは,GAME DISC内のmusicフォルダを「魔王の娘たち」をインストールしたフォルダ内にコピーすれば回避出来ます),以上4点が特に気になりました。ただ,本作では従前まで問題となっていた「動作の重さ」がかなりの程度改善され,比較的軽快に動作するようになっており,この点は感心しました。強制終了等のバグも皆無で,取り敢えずやっていていらいらするということは無かったですね。


【音楽・音声】音楽:B+,音声:A−
 音楽に関してはやや仰々しすぎるきらいがあったものの(ホノボノ系の作風の割に重厚な音楽が流れていて,少し違和感があった),全体としてみればなかなかな出来だったと思います。主題歌も爽快な感じで良かったですし,また効果音(爆発音など)等もふんだんかつ的確に用いられており,感心しました。

 他方,音声についてはエゴお決まりのフルボイス(男性含む)。マニュアルの豪華さと並んでいつも感心するエゴゲーの長所の1つですね。やっぱ男性も含めてフルボイスの方が,より登場人物間の会話が楽しめて◎。また,声優陣の演技レベルもなかなかのもので,男女ともに巧い演技を十二分に堪能することが出来ます。ここら辺は流石。文句なしです。


【絵】B−
 担当は「山本和枝」女史。キャラデザについてはいつもと同じ絵柄。これを「安定した絵柄」と見るか「金太郎飴」と見るかは人それぞれだと思いますけど,個人的には好きな絵柄でもありますし,前者と捉えておきたいと思います。女史の絵が好きであれば,おそらく満足できるレベルではないかなと思いますね。塗りも綺麗ですし。ただ,今回,絵のクオリティ(特に顔のデッサンや立ち絵の頭身のバランス)にブレがあったのは少し気になりました。


【エロ】C−
 正直薄い。流石にこれはどうにかならんのかというのが率直なところです。特に,各キャラの純愛系ルートの場合,一部の例外を除いて殆どがラスト近くの1回しかエロが無いのは大問題(ルートによってはエロが多いところもあるんですが,純愛ルートでは殆どエロが無い。つまりHの分布に偏りがあるということです)。本作は比較的プレー期間が長いだけに,例えばチルルルートのようにプレー過程中においても適度にエロをまぶして欲しかったですね。また,着衣Hが少なめなのもマイナス。チルルがタコに犯されるシーンなんかはよかったんですけど,他がねえ……。特に女史の従来作品は着衣H率が高いものが多かっただけに,今回はやや肩すかしを食らった感があります。個人的にはセレンの鎧着用Hなんかを期待していたんですが……。ただ,「自分が手塩に掛けて育ててきた娘を美味しく頂く」という本作のHコンセプトは十二分に発揮できていると思うので,この手のHが好きな方にはお薦めできます。


【シナリオ】C+
 担当は「石川洋一」氏。出来の方ですが,うーん……微妙……,というかあまり語るところがないというのが本音かなあ。まず,キャラクターは非常に良く立っていて魅力的です。特に「魔王のくせにお人好し」な主人公のアモンなんか最高で,やっててホノボノとした気分になってくるのは◎。

 けれども,肝心のストーリーが平々凡々であまり面白くない。決して出来が悪いわけではなく,テキストもしっかりと読める出来になっているんですけど,話にメリハリが無くて結局何がしたいのかわからないんですよね。コメディとしては退屈だし,かといってハートフルドラマとしても中途半端。例えば「がくパラ!!」みたいになにかを徹底追及していれば,仮にギャグが外しまくりだったりライティングの技巧面でおぼつかないところが多々あったりしてもそこそこ楽しめるものなんですけど,本作ではどっちつかずで売りに欠け,結局何も印象に残らないものになってしまったのは残念。折角平均以上のシナリオライティングなのに,狙いが曖昧なために魅力が殺がれてしまっているのは勿体ない。

 また,共通ルートが多すぎるのも問題。基本的にどのルートでもメインとなる話の展開・イベントは変わらず,ラスト付近で申し訳程度に違いを出しているだけ。そのため,他のヒロインを攻略しようと何度もプレーを繰り返していると段々飽きてきてしまいますし,また,場合によっては個別ルートと共通ルートとの間に整合性がとれず話の繋がりがおかしくなることもありました。ここら辺は改善が必要かと思いますね。


【結論】B−
 「語るところの少ない平凡な作品。可もなく不可もなくな出来で売りに欠ける」。決して地雷とかそういうのではない(むしろ作りは丁寧)んですけど,反面「これは良い!」みたいなところも皆無で,評価に困る一作です。個人的にはそこそこ楽しめたのですが,ちょっと流石にこれを他の方にお薦めするのは憚られる気がしてなりません。それだけ微妙な作品なんですよね。ただ,作品の雰囲気は良いですし,また,娘とHする点についてはなかなか上手く描けていると思うので,それらを期待する場合にはプレーしてみるのも一興ではないでしょうか。いやあしかし,判断の難しい作品ですなあ……。



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