燐月 メーカー名:Selen 発売日:2004/08/06 メーカーホームページ:http://www.selen.ag/ 評価:A−(80点) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― |
体験版をプレーした際,鮎美(@北都南)の可愛らしさ・ヤキモチっぷりに萌えたので購入を決意。以前プレーした「真・兄嫁」の,単なるエロのみの抜きゲーではない,シナリオ等も充実した丁寧なゲーム作りを継承・発展させてくれるといいな,と思っていたのですが,果たしてその出来や如何に。 【システム】A− 前作同様,キャラクター別に一般シーンも含めて全イベントの中から任意に選択して回想出来る仕様を搭載しているのは非常に良いです。特に,私のようにお気に入りのイベントを好きなときにリプレイしたいと思う人間にとっては,いちいちセーブする手間が省けて凄く助かります。Hシーンと一般シーンが混在しているために抜き目的ではやや使いにくい点が難点ですが,今作は各イベントの内容が分かるようCGも表示される仕様のため,問題は無いと思います。 また,セーブ数無制限のセーブ&ロード機能(通常のWindows用ソフトウェアのセーブ機能をそのまま流用する仕様)やバックログのテキスト読み返し機能(VOICEボタンをクリックするだけで再生可能)等,必要不可欠な機能は完備されていますし,動作も軽快安定,しかも初回起動時のみパスワード入力&ディスク認証がありますがそれ以降はディスクレスにてプレー可能など,全般的にユーザーのことを良く配慮した優良なシステムになっていると思います。「真・兄嫁」で気になった回想時に中途キャンセル・メッセージスキップ不可な仕様も改善されていますし,個人的には満足しています。 ただ,(1)Ctrlキーでのメッセージスキップに未対応な点と,(2)セーブモードで上書きをしようとすると,上書きするデータではなく上書きされるデータの名義になってしまう点,(3)音楽再生モード及びCG鑑賞モードが存在しない点の3点は改善されておらず,個人的には不満に感じましたので付言しておきたいと思います。 【音楽・音声】音楽:B,音声:A− 音楽はBGMに関しては平均並〜やや劣るレベルかと思います。取り立てて注目するような出来の良い楽曲はなく,むしろチープさが目立った感があります。ただ,主題歌「eclipse」(I've sound)は珠玉の出来。I'veの近年の楽曲の中でも,格好良さではずば抜けているように感じました。疾走感あふれるメロディが個人的には堪りませんでしたねえ。ただし,BGMも主題歌もそうですが,ともかく作品の雰囲気に合っていない。特に主題歌はこれを聴くともっと重い話を想起してしまいがちですが,本作の作風は全然違って軽めの話のため,イメージと現実の乖離が甚だしい。これは流石にどうかなあ,と個人的には思いました。 他方,音声は男性声優を含めほぼ文句なし。実力派ばかりの布陣,しかもSelenでお馴染みの方が中心で,日常会話・エロ演技とも安心して聞くことが出来ます。特に鮎美役の北都南さんの演技は流石というほか無く,「ちょっと自分に自信なさげで押しの弱い,でもヤキモチ焼きな同級生」という難しい配役を完璧にこなしているのには感心しました。てか,萌えすぎですよ,鮎美たん……(*´Д`)ハァハァ ただ,何故か一部の音声で薄く「ザー」とノイズが混在しており,音質が悪かったのは気になりました。 【絵】A− 担当は「カワギシケイタロウ」氏。このブランドでは初登場の原画家さんですが,Selenの塗りとの相性もバッチリで大満足。顔・体の描き方ともに独特の,癖の強い絵柄ですが,肉感を巧みに表現出来る原画家さんで,エロさ大爆発。抜きという点では非常に効果的です。特に,下から上を見上げる等の変則的なアングルからの描写や,アクロバティックな体位の描写が上手いと個人的には感じましたね。 ただ,難点をいえば,絵柄の不統一さが目立つ点(特に顔の描写が崩れがちな点は気になりました)と,服装の細部の描写に拘る余り,皺や縫い目・切れ込み等の描写が多くなってしまって,結果,服装全体のデザインがぐちゃぐちゃした印象を受けた点(特に制服(セーラー服)の胸部〜腹部あたりの描写で顕著)は気になりました。今後は絵柄の統一と服装全体のデザインの向上を図って頂けると,より素晴らしい絵になるのではないでしょうか。 【エロ】B+ 目的のエロのタイプが鬼畜系か純愛系かによって評価が変わると思うのですが,純愛系のHを求める方には珠玉の出来かと思います。特に鮎美狙いの方なら,次第次第に初な鮎美の体をHに慣らしていって最後本番までこぎ着ける過程や,お互いに好き合い愛し合うようになるまでの過程が丹念に描かれている為,間違いなく抜けると思います。着衣Hの観点からいうとソックスの描写が不十分なシーンが多く(そもそもソックスの描写が省かれる場合が多かったのは噴飯もの。ただ,描かれたときには足を曲げることで生じる皺や影なども丹念に描写されていて良かったのですが),不満の残る箇所も多いですが,全体的には質・量ともに充実しており,かなりの破壊力を持っていますのでめちゃ抜けると思いますよ。 また,シチュ的にも充実していて,野外露出,アナル(一枚絵でアヌスをしっかりと描き分ける等,アナルシチュに対する拘りはいつも通り),放尿,犬プレイ,痴漢プレイ等の他,孕ませをメインに据えた本作らしく,搾乳やボテ腹H,5P(姉妹丼)といったマニアックなシチュも搭載されていて良いのではないでしょうか。 ただ,反面,従来のSelenのメインである鬼畜系シチュは正直今一歩の出来。作風自体が純愛系に偏った作品であることも大きいのでしょうが,基本的に女の子を苦しめて無理矢理Hする,みたいなシチュは無く,鬼畜系を期待する方にとっては肩すかしを食らう出来だと思います。また,CGの使い回しが多いのも気になった点で,同じCGを何度も見ている印象を受けがちなのはマイナスかな。 全体としては,従前のSelenゲーに比べると1つ1つのHに関してはパワーダウンの感が否めません。ただ反面,ストーリー軸に沿った(シナリオに適合した)Hという点では洗練されているため,単なる抜きゲーではなく話の一環の中でHも盛り込んで欲しいと思う方にとっては良い出来なのではないでしょうか。個人的にはこういうHのあり方もありなのではないかなあ,と思いました。 【シナリオ】B+ 「真・兄嫁」で気に入った,単なるエロonlyの抜きゲーではなくシナリオ面でも充実させてHとストーリーの融合を図ろうという試みが,本作においてより高度の次元で結実している点は大変良かったと思います。特に今作において,鮎美のような魅力的なキャラクターを生み出した点は特筆すべき点で,萌えが純愛Hの破壊力を倍増させたのは非常に良かったです。また,鮎美ルートの話自体も,良くあるネタとはいえ基本に忠実に,しっかりと話を編んでいるため,気持ちよく楽しんでプレー出来たのは◎。従来の(往々にして話が破綻しがちな)抜きゲーにはない,丁寧なシナリオライティングをしていたのは高く評価して然るべきなんではないでしょうか。 ただし,ストーリー面ではまだまだ改善の余地があることは事実。共通ルートを兼ねる鮎美ルートを除き,他のルートは鮎美ルートから分派するというシナリオの構成のため,どうしても展開が急で結ばれるまでの描写が弱く,話自体の起伏・メリハリも少ない。また,そのために鮎美以外のキャラクターの造形が不十分でその魅力があまり表現出来ておらず,鮎美を捨てて乗り換えるという決断をする(話の展開上こうならざるを得ない)ことをプレイヤーに納得させられない(鮎美を捨ててまでそのヒロインの元に走るほどの魅力が他のキャラクターには感じられない)点も個人的には大きな問題に感じました(特に詩乃ルートなどで強くそう感じましたねえ)。さらに,話自体も別に燐堂家の謎を解く云々といった込み入った内容では基本的にはなく,ただ単に愛情を深めつつ犯りまくるだけの話なので,どうしても単調な感を受けてしまいます。ここら辺を改善し,もっとストーリー性を持たせると完璧なゲームとなると思うのですがねえ。残念。 【結論】A− 「Hだけでなくシナリオにも拘り丁寧に作り込んだエロゲー。ただ,従来の鬼畜系路線を狙うとこける可能性もある」。抜きゲーに良くある,エロのみが突出していて後は全部ダメ,みたいなゲームではなく,シナリオ・エロ・音声・システムがバランス良く配合され,一つのゲームとしてしっかりとまとまりを持っている点は高く評価出来ます。ただ,そのせいでどうしてもエロを抑制せざるをえず,結果抜き目的の方にとっては厳しい出来になってしまったのも事実です。私としては楽しませて貰ったし抜かせても貰ったので大満足の出来ですが,何を求めるかで評価が分かれるという点で人を選ぶゲームだと思います。今後は,いかにしてエロとシナリオのバランスを取りつつ全体のレベルの底上げを図るのかが肝ではないかと思いますね。個人的にはSelenのこのような新しい動きを支持していますので,今後もこの路線で頑張っていって欲しいですね。 マイ萌えキャラ→当然緋月鮎美です。押しが弱いヤキモチ焼きって結構斬新でした。てか,自分の夫にべったりな愛娘にまで嫉妬する鮎美たんに(;´Д`)ハァハァ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― レビューデータベースに戻る |