終の館〜恋文〜【投稿者:亜夜萌えさん】
 メーカー名:Circus FETISH
 発売日:2004/02/27
 メーカーホームページ:
http://circus.nandemo.gr.jp/   評価:B+(75点)
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  当サイト常連の亜夜萌えさんからレビューを頂きました。ありがとうございます!
  私の書いたレビューと比較対照しながらお読み頂くと,
  本作についてより客観的に判断が下せるのではないかと思います。


【全体的な特徴と欠点】
妄想ならではの昂揚感とHというはけ口にこだわった作品。1000円というと同人ゲーム並みの価格でそれを比較対象とすると、その一番の違いは絵における「差分の多さ」。本作は、立ち絵、Hイベント時ともに差分(表情・液)が備わっており、最良とはいえないまでもまずまずの出来栄えです。この点は良作とされる同人作でも無いことが多いので、がんばっているという感を強くもちました。表情変化はこのメイドさんへの感情移入にかなり影響しているのではないかと。ボイスもヒロインの「藤」(CV:長崎みなみさん)に関してはフルボイスでチュパ音もあり、
「価格相応」のチープ観はありません(質量ともに予想以上)。
お手軽ゲーなのにディスクレス不可は×。8800円作品の中の1ヒロインのシナリオだけを抜き出した感じの作品で、このメイドさんに興味があれば「当たり」。(【シナリオ】内、一部ネタばれとよめないこともないので、嫌な方はご遠慮ください。)


【システム】A−
サーカスのゲーム一般の特徴ですが、ディスクレス不可である点が不満ですね。また同社の最近のゲーム同様、最初の起動時にIDの入力を求められます。システム周りは流用にせよ、同社のフル価格作品と同様のもの(オートモード、再生つきバックログなど)が揃っているので不満はありません。
回想のサムネイルが「立ち絵」で酷似した絵が並び、シーンの区別に役立たないはシリーズの次回作以降で改善して欲しい問題点です。


【音楽・音声】音楽:B,音声:B+
チュパ音あります。ボイスも長崎みなみ嬢が熱演してくれますので「価格不相応」な出来です。嬢が演じる日常時も相当多くのテキストをしゃべってくれます。文語調の「恋文」を情感を込めて読み上げてくれるところなど、他作品にはない特徴です。


【絵】B−
立ち絵の顔やポーズ、表情はなかなか可愛いです。
イベント絵は、全部がそうというわけではありませんが、やや崩れている(遠近法にしても体躯バランスがおかしい、顔がヘン)ところは残念です。
立ち絵の胸だけ出しているメイド絵がよい感じですね。
着衣描写はとりわけ綿密というわけではありませんが、ニーソやおさげ髪に興味がある人はサンプルで要チェック(w


【エロ】B+
差分変化があって良いです。
ただ、立ち絵での表情とくらべ、イベント絵の表情はやや崩れ気味。
苦悩や快感を示す表情の際の眉山のかたちもまあまあといったレベルです。
テキストは丁寧で尺も長く(スキップしたいときにも作動が俊敏でモッサリしていない)、キス描写が多い上(ただしテキストのみ)、キス時チュパ音も用意されていて驚きました。

淫語も適度にあり、恥じらいつつも可愛い声でしゃべってくれてとてもよいのですが、消し音が大きめなところは残念でなりません。
「フェティッシュ」というブランド連字符をつけるなら、香水や消毒液の香りばかりでなく、Hな香りへのこだわり、たとえば主人公の服や彼が記した恋文の匂いを嗅ぎながら自慰をする藤、といったシーンや、自分の急所の匂いを嗅がれて羞恥しながらも、しだいに快感へと変わってくるといった場面が無かったところなど、「Hシーンでの匂い」へのこだわりが不足しているところは残念です。

とはいうものの、本作は自慰→正常位といった連鎖Hがほとんどで差分絵も顔、液ともにあり、1シーンあたりの尺が長く、シーン数以上のボリューム感があります。
詳しくは以下に。合意H、中出しが本作のお約束のようです。行為後の余韻描写が「絵」、「テキスト」ともに用意されている点が他作品では数少ない本作の特長で、「雰囲気」や情感の醸成に大きく役立っています。行為後のメイド服を着たバストアップ絵に「ポッチ感」があるなど、細かい工夫も。


【Hシーン一覧】
1:ニーソ自慰→胸出し正常位
2:手紙執筆中の自慰(本番無し)
3:食堂ニーソ指マン→バック胸揉み(左胸)
4:(回想初体験)胸出しバンザイH→行為後バストアップの裸絵
5:口唇H→バック(むこう向き。ポッチ感あるも胸出し無し。遠近感つけすぎ)
6:口唇H(5と同絵+唾液垂れ→口内発射液溢れ)→バック(3,5とは別絵。こちら向き。右胸揉み)
7:口唇H(5と別絵。袋手おさえ舌出し竿舐め)→胸出し正常位(1と同絵)
8:尻出しおさげを手綱にバック胸出しH(むこう向き。やや強引)→バック(別絵。こちら向きだが胸見えず)

液差分、表情差分がかなり充実している上、テキスト描写がセリフ→描写→セリフという具合に描写されるのですが、1クリックあたりで表示される文字数が適切で、ボイスとのバランスがよいと感じました。相当テストプレイで練り込まれているのかもしれません。
全般にわたり半脱ぎ胸出しHが多く、一部不自然な身体バランスのシーンもありましたが構図的にも見やすいものが多かった点も満足しています(とりわけ一覧内の太字のシーン)。
某月刊誌で人気体位ナンバーワンになった「バック」ですが、意外と見づらかったり(むこう向きでヒロインの顔が小さかったり見えなかったり)足や主人公が邪魔だったりしがちです。本作のシーン「3」や「6」はバックからヒロインがこちらへ向いた胸出しHですが、他社も見習って欲しいぐらいの構図的出来栄えです(w


【シナリオ】B+
ヒロインのメイド「藤」と主人公がメインで、他の人物はあまり登場せず、「桜実」(CV:草柳順子さん)はあくまで「友情出演」(パッケージ記載情報)の範囲を越えません。むしろ藤の物語に絞った割り切りがかえって限られた資源の集中投下となり、散漫で散らかしたままのお話にならず本作ではストーリーやキャラ立てに功奏しています。
「恋文」というタイトル、発売元が「フェティッシュ」という心理的・イメージ的なエロにウエイトを置いているということから、本作のモチーフや物語について以下のように考えました。

言葉に出して口にしてしまったり、書き綴った恋心を相手に見られてしまったりすると、儚く消えてしまいそうな危うさ。
面と向かって現実に相手に向かっておこなうのではなく、妄想ならではの盛り上がりとでもいいますかね、イメージによって昂揚する恋心と、イメージ相手ゆえに増幅される苦悩・・・「案じるより生むが易し」の逆パターン。
恋文=ラブレターの字面は妄想をはじめる切っ掛けであって、それを読んで相手の“想い”の丈を想像したり、手紙で描く内容を色々考えあぐねている際に感情的に盛り上がってしまい、性交渉でそのはけ口をみつけていくといった流れがメインテーマ?です。本来結ばれる「手段」であるはずの恋文が、その字面や作成過程でもたらすイメージの快感の大きさのあまり「目的」と化してしまい、むしろ「結ばれる」という直接的な親密さの距離を忌避してしまう、そんなストーリーではないかと。
「身分差」といった境涯の違いや女主人の遺言を「自分が想いを直接伝えられない」言い訳にしていますが、むしろ藤はあえて主人公と一定の距離をとりつづけているようにも見えます。立場が近づき過ぎたり直接過ぎたりすると失う情感や「想い」があると、感知しているからでしょうか(付かず離れずといった“主人とメイド”という距離を未来永劫とりつづけていくようにもみえます)。フェティッシュや間接性がもたらす快感の極大化を知る生物は人間だけですから、万物の霊長にのみ許された贅沢な遊技というところでしょうか。

本作のストーリーの結末は、イメージやフェティッシュ・「間接性へのこだわり」とも関連しますが「余韻」や「含み」をもたせつつもヒロインの嗜好の一貫性が感じられる終わり方で、不自然さや後味の悪さは感じませんでした。本作は「第一巻」という全6巻の内の位置づけであることから、シリーズ「第六巻」の「現代編」での結末も楽しみです。「8800円で発売される6巻は、1〜5巻のヒロインが総登場する大ボリュームの作品となる」とあり、全体をプレイすると「おもわずニヤリとしてしまう、そんな仕掛けも満載している」(チラシ裏面)そうなので。


【結論】B+
ヒロインのメイドさんが気に入れば文句なく良作でしょう。
Hばかりでなく、キャラ立っています。親近感あふれつつも慎みもあり、今ひとつ積極的になれないけど実はスケベでH好きなのに、それでいてそういう自分が許せない真面目さもあるヒロインです・・・「犬の吠える声をきくと、身につまされて悲しくなるんですよう」。
和のテイストを帯びた洋館のメイドさんや着衣イメージH好きな人にお薦めできる作品ですね。



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