鬼門妖異譚
 メーカー名:ちぇりーそふと
 発売日:2000/03/17
 メーカーホームページ:
http://www.cherrysoft.co.jp/        評価:B+(75点)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 あきら氏の描く絵に惹かれて。氏の超美麗な絵に発売当初から注目していたんですが,なぜかプレーする機会を逸していた一作だったんですよね。

 なお,本レビューでは「DOUBLE」と比較する箇所が幾つかありますので,こちらのレビューも併せてお読み頂くとよりわかりやすいと思います。あと,「鬼門妖異譚+DOUBLEリニューアル」についても別途レビューを用意してありますので併せてご覧下さい。

【ゲームシステム及び内容】
 基本的には「DOUBLE」と同じゲームシステムです。つまり,S-RPGパート(戦闘パート)とADVパート(通常パート)の混合。内,S-RPGパートは,フィールド上を移動して前面・側面・背面のいずれかから敵キャラを叩くタイプのもの。

 ただ,残念なことに,S-RPGパートは面白くない。というのも,(1)強い武器・防具を装備すると殆どノーダメージ&一撃必殺になる(=回復アイテム他,他のアイテムが一切不要),(2)楽に金が貯まるのですぐに最強の装備を調えられる,(3)「敵のレベル=主人公のレベル」→主人公のレベルを上げなければ楽勝でクリア出来る,以上3点からです。前述の「DOUBLE」は難易度設定他が完璧(負けるか負けないかの絶妙なバランスになっている)で,結構やり甲斐があったのですが,本作は完璧に作業ゲー。ですので,ゲームとしてはお薦め出来ません。


【システム】C−
 機能は大方網羅されているんですが,ちょっと使いにくいシステムでした。特に,スペシャルスタート機能(=序盤の共通ルートをカットし,希望するヒロインのルートからゲームを開始出来る機能)は確かに便利なのですが,レベルが一律10になる(→レベルが引き継げない。また,敵のレベルも10になってしまい(【ゲームシステム及び内容】項参照),ややバランスが悪い(同一レベルだと敵の攻撃1回で即死してしまう))ので思ったほどは使えませんでした。正直,「DOUBLE」でのスペシャルスタート機能のような使い勝手の良さはありません。

 また,(1)バックログ機能が無いこと(2)BGMの音量が調整出来ないこと(音声と効果音の音量は調整出来るのに,何故かBGMだけ調整不可でした),(3)戦闘開始時のアイキャッチを飛ばせないこと(表示時間が長いので意外とフラストレーションが溜まります),(4)辰夫エンドをクリアしないと戦闘スキップが使えないこと(5)セーブ出来る数が20とやや少なめなこと,これらはマイナスかな。特に私は男エンドを狙ってもいつも他のキャラになってしまって,なかなか辰夫が攻略出来なかったので(4)は凄く不満でした。余計なことをせず,1回クリアしたら戦闘スキップを使えるようにすれば良かったのに……。


【絵】A
 担当は「あきら」氏。超美麗な絵でとても良いですね。私,この人の絵は大好きです。特に今作は制服のデザイン等も良いので大いに抜き(着衣H)に貢献していますし,また,イベント絵とかも非常に綺麗なので見ていて惚れ惚れとしました。塗りも暗め&シャープな塗りで,もろツボ(この人の絵はやっぱこういう塗りの方が映える気がしますねえ)。3年前のものとは思えないほどのクオリティで大満足でした。

 ただ,唯一不満を挙げるとすればやっぱ立ち絵かな。正直,一枚絵の美しさに比べると,立ち絵は粗いです。表情に乏しく,塗りも精彩に欠けるため,一枚絵とは別物に見えてしまいました。また,話の展開との不整合も顕著で,たとえば,ひかるを凌辱したあとに鋼が迎えにきて「なんとお労しい姿で〜」と言っているのに,立ち絵ではシッカリと制服を着込んでいるなど,些細なことですが演出が徹底していなくて首を傾げざるを得ないシーンが幾つか有ったのは残念。もうちょっと立ち絵にも気を払って欲しかったですね。


【音楽・音声】音楽:B+,音声:B−
 音楽は作風に合わせて暗めのものが中心。特筆すべき出来のものは有りませんでしたが,個人的には結構好きな曲調の楽曲が多かったです。特に「OPENING」「FIGHT」なんかは出来が良かったんじゃないかと思いますね。なお,本作にはボーカル曲はありません。

 他方,音声についてですが,男性にも声があるのは評価したい。ただ,パートボイスなのは残念。声が出たりでなかったりで強く違和感を感じました。これでフルボイス仕様だったら,もっと話が盛り上がったような気もするんですけどねえ。

 また,演技に関してもちょっと微妙かな。演技が上手い方と下手な方の差が激しかったです。数的にも半々くらいで,まさに玉石混淆。でも,そんな中でも皆本ひかる(@一色ヒカル)の演技は非常に良かったですね。キャラ的に宝塚系のキャラで一色さんの声質とピッタリだったし,ひかるの凌辱Hでも迫真の演技を見せてくれたのでこの点には大満足。「DOUBLE」のクレアでもそうでしたけど,やっぱ一色さんはこういうキャラが合うよなあ。


【エロ】A−
 シチュエーションと絵の勝利ですね。鬼側と人間側に分かれるというシナリオの仕様が,上手くエロを引き立てているのには感心しました。人間側でともに戦い好きあったヒロインを,鬼側では凌辱する(しかも,どちらもプレイヤーが主体となる)というシチュは溜まらなく良いですね。これは上手い。「DOUBLE」でも同様のシナリオスタイルを取っていましたが,正直エロには上手く活かせていなかった(ストーリーの深化には役立っていたのですが)だけに,本作での巧さが際だっていた感があります。また,あきら氏拘りの着衣H(制服着崩し,ニーソ・ハイソ着用)も多数見られ,さらに処女破瓜(凌辱・純愛どちらのHにもあり)や輪姦等のシチュもあり,純愛Hの量も充実していたので,個人的には大満足。かなり抜かせて貰いました。

 ただ,上の鬼側のシナリオにおいて人間側のヒロインを犯すシチュで,折角シチュエーションがいいのに,本番Hを省略しているシーンが多かったのは残念(例:しのぶルートでひかるを凌辱する際,蝋燭をアヌスにぶち込んでいざ本番Hへ,というところで終わってしまう)。あと,差分絵が不足気味だったのも気になりました。これらの点が打開出来ていれば,もっと高い評価たり得たと思うのですが。勿体ない。


【シナリオ】B−
 担当は「ちゅんく」氏。先にも述べましたが,本作では大まかに言って人間ルートと鬼ルートに分かれ,さらにそこから各個別ルートに分岐するというスタイルを取っています。

 で,出来ですが,「悪くはないが良くもない」が結論……かなあ。キャラは良く立っているし,各ルートによって展開を変えていたりするなど,工夫も多々見受けられるのですが,話の筋自体は殆ど変わらず,また,「DOUBLE」のように他のキャラも攻略して初めて話の全体像がわかるというシナリオでもないので,今ひとつ繰り返しプレーをする気にさせない面があるのが正直なところだと思います。更に,展開が急すぎるので,キャラに愛着をもったり話を咀嚼する前に,そのシナリオが終わってしまうと言うこともしばしば有りました。

 また,各ルートによってキャラの性格が大きく変わってしまうのにも違和感を感じました。例えば,「瞳子シナリオでの瞳子と摩耶シナリオでの瞳子」や「ひかるシナリオでのひかると摩耶シナリオでのひかる」等が好例かな。キャラ設定にブレがあったのはかなり気になりましたし,また,自分の気に入ったヒロインが他ルートでは性悪女になっているのは見ていて嫌でした。この点は付言しておきたいと思います。

 シナリオ全体としては,やや作り込み不足の感があります。設定やキャラはいいのに,統一感がなかったりいまいちプレイヤーへの訴求力に欠ける面があるのは残念。もう少し作り込めばもっと面白くなったのになあ。


【結論】B+
 「絵とエロの良さは評価出来るが,他はやや作り込み不足の感がある。色々な面で惜しい作品」。決して悪くはないのですが,特段言及するほどのものでもないというのが実情だと思います。特に売りに欠けるシナリオやパートボイス仕様はマイナス。これでS-RPGパートが面白ければ多少の粗も気にしなかったのかも知れませんが,S-RPGパートが作業になってしまっているので,辛めの評価にならざるを得ないのが残念なところ。ただ,エロと絵はかなり良いので,個人的には損をしたとは思わないんですけどね。「鬼門妖異譚+DOUBLEリニューアル」で購入すれば間違いなくお買い得なんですが,もし単品で購入しようという場合には良くお考えになってからの方が良いかもしれません。

 マイ萌えヒロイン→皆本ひかるもいいけど,やっぱり伊原木瞳子。素直じゃないところがイイ!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

レビューデータベースに戻る