MinDeaD BlooD〜支配者の為の狂死曲〜 メーカー名:ブラックサイク 発売日:2004/06/11 メーカーホームページ:http://www.cyc-soft.co.jp/ 評価:A−(85点) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― |
体験版の面白さに惹かれて購入。独特ながら作り込んだ作品を作ってくるサイクだけに期待していたんですが,果たしてその出来や如何に。 【ゲームシステム・内容】 基本は場所移動型ADVですが,サイク独自の陣取りゲーム的な色彩もあります。同ブランドの「闇の声II」などを想起して頂くとわかりやすいと思いますね。ただ,今回はただ闇雲に支配度を高めていってもダメ(一部地域に偏って支配度を上げると,吸血鬼の反乱が起きて他の地域を支配出来なくなるetc.)だったり,特定地域で反乱や逃亡が起きないようにこまめに巡回しないとダメだったりと,かなり戦略性が上がっています。さらに,月齢・支配度・吸血の有無・吸血するキャラ(単独か,それとも一緒か)等で発生するイベントやルートが決定してしまうので,攻略は至難の業。特に「過去への贖罪」ルートに入る条件がかなりシビアで,しかもたとえ条件が分かったとしても期間の短さ故に攻略するのには相当難儀すると思います。はっきり言って難易度は極めて高いです。 でも,確かに攻略は大変(ましてフルコンプなんてガクガクブルブルですよ,マジで)ですが,面白いです。これは間違いない。ああでもないこうでもないと手探りで足掻きながら,新たな道を切り開いていく快感,これがあります。しかも,メインルート以外にもふんだんにイベントやエロが盛り込まれており(数回程度繰り返したくらいじゃあ,全てのイベントを回収するのは無理じゃないかなあ),飽きません。この点,「蒼色輪廻」などとも共通する面白さかと思いますね(ただ,「蒼色輪廻」ほどは納得出来るゲームシステムでは無いんですが)。フラグを一つ一つチェックしていくことに快感を覚えるような,昔気質のゲーマーの方には大いにお勧め出来る出来と言えるのではないでしょうか。 【システム】B+ システムですが,必要十分な機能(未既読判定付きメッセージスキップ,音声再生機能付きバックログ,画像データ付きセーブ&ロード,エロシーンだけでなくエンディングも回想出来るシーン回想機能etc.)が揃っていて使いやすく,満足。欲しいと思う機能が概ね網羅されていたのには感心しました。また,強制終了などもなく,プレー中不快になることが無かったのは良かったですね。 ただ,(1)やや動作が重めな点(特にシステム呼び出し画面とタイトル画面でのマウスカーソルの移動速度が遅かったのは気になった)と(2)メッセージスキップが遅めな点,(3)セーブ・ロード・バックログ・コンフィグ等がいちいちシステム呼び出し画面を呼び出さないと使えないのが面倒だった点(メッセージウインドウの脇にでもボタン式に配置しておいて,ワンクリックで起動出来ると快適だった。呼び出し画面を出してから選択→起動というのは,上に挙げたような使用頻度の高いコマンドを使う際には,意外と手間がかかって面倒),以上3点は気になりましたので挙げておきたいと思います。ただまあ,全体としては模範的なシステムなんじゃないかな。 【音楽・音声】音楽:A−,音声:B− うちではいつも低めの評価しか出せなかったサイクの音楽についてですが,今回はかなり健闘しています。暗いだけで単調な,いかにもブラックサイク的な音楽もあることはありますが,今回はかなり聞き応えのある楽曲が多数。中でも主題歌2曲,特に「Vampire」はかなりハードなナンバーですが,個人的には大好きですね。最初聞いたときには「電波な曲だなあ……(´Д`;」とか思ったんですが,何度も聞いているうちにかなり病みつきになってきます。また,効果音の充実っぷりもたいしたもので,銃声や打撃音といったお決まりのものから,剣や杭などで串刺しにしたときの音等まで質・量ともにかなり拘っており◎(ちょっとエグイくらいくらいです……)。大変よろしいと思います。 他方,音声は女性のみフルボイス。演技レベル的には平均的〜やや低めくらいかな。正直下手な方もいましたし,またちょっと演技を凝りすぎというかなという人もいましたが,でもメイン級は巧い方が多かったので,エロ的にも日常会話的にも問題は無いでしょう。特に,刺されたり撃たれたりして上げる悲鳴,これが上手かったのには感心しました。……エロゲーの売りじゃないかもしれませんが(w。ただ,やはり男性の声は欲しかったかなあ。田上なんか,声当てたら最高だろうに……なんてことを思ったり(w。 【絵・エロ】絵:B+,エロ:A− 担当は「椎咲雛樹」氏。立ち絵に絵の崩れが散見されるところが玉に瑕ですが,総じてレベルは高い。特にエロ絵の描き込みが丁寧で,また内容的にも着衣Hが中心で感心しました。これやこれの体たらくぶりを見た後だと,ホント感動するくらいの出来の良さです。エロ絵は使い回しが幾つか見られるのはあれですけど,でも本作は異常なまでに差分絵が充実しているので絵の不足感はありませんでした。問題無しでしょう。 また,Hのシチュエーション的にも充実していて,ノーマルH・アナルH・フェラ・輪姦・レイプといった一般的なシチュはもちろんのこと,触手,ゾンビとのH,スカトロ,寝取られ,放尿,硫酸浣腸,残虐行為など,かなりコアなシチュや化け物系特有のシチュなども完備。Hに手抜きはなく,抜き目的の方にも間違いなく満足出来る出来だと思いますね。 ただ,注意して頂きたいのは,本作には所謂「グロい」シーンが多いことですね。これだけは本当に注意してください。本作では猟奇的なシチュエーションが多数存在する(エロ絵・日常絵ともに)のですが,これらにも手を抜かず,徹底して絵やテキストで描き込んでいます。平気で人を惨殺していきますし(しかも田上の殺戮行為や悠香の拷問などをみれば分かると思いますが,かなりエグくて,嫌いな方にとっては耐えられないような厳しい描写が続きます),また,エロ一つとっても,「淫ら」「エロティック」なんて生やさしいものではなく,「凄惨」そのもの(全身に注ぎ込まれた精液を吐き出すシーンとか,中出しされた状態で腹部を強く圧迫され,ゲロなどと一緒に精液を噴射させられるシーン,そして拷問シーン全般なんかは正直引いてしまいました……)。かなりドギツいシーンの連続ですから,エロ・非エロを問わず,グロいシーンが苦手な方は避けた方が賢明かもしれません。 あ,あともう一点だけ。いくら何でもニーソ破きすぎだろ,あれじゃあ(w。特に悠香で顕著ですけど,ニーソなんだかストッキングなんだかわからないことが多かったのはマイナスかな。あれだけビリビリと原型を残さないくらい破いてしまうと,折角のニーソが台無し。「違う! ニーソは破くのでも脱がすのでもない,履かせるものだ!」これを強く訴えておきたいと思いますね。……変態かなあ,俺(w。 【シナリオ】A− 担当は「和泉万夜」氏。いや,まさか,ここまで高レベルとは思いませんでしたよ,マジで。 本作は様々なルートがありますが,その中でも基軸となるルートについては繰り返しプレーをすることで新しいシナリオが開けていく,そういうタイプのゲームです(ですから初期段階では全てのルートを攻略することはできません)。で,話の骨組みとしては,最初は話の真相や主人公の過去には殆ど触れることなく,ハンターである悠香とのお決まりともいえるようなやり取りを楽しみ(「Vampire Hunter」),その後徐々に主人公の過去が明らかになり(「過去への贖罪」),そしてそれを踏まえて更なる一歩を踏み出す(「未来への旅立ち」)形になっています(詳細はネタバレ故省略)。 いまここまでお読みになった方はおわかりかと思いますが,本作は別段変わったストーリー展開みたいなものはありません。意外性のないストーリー展開,先の見えるお決まりのシナリオです。でも,シナリオ全体としては面白い。笑いみたいなものは少ないですが,泣き展開や鬱展開,感動や凄惨さ,気持ち悪さや恐ろしさといった,様々な展開・側面をバランス良く含みつつ,泣きゲー的に綺麗にまとめ上げた丁寧なシナリオで,読んでいて素材の凡庸さにもかかわらずかなり引きつけられます。また,中途半端に奇跡のようなご都合主義を持ってくるのではなくて,終始「Vampire vs. Hunter」という設定を貫いている点も話にブレが無く感心。ここら辺,設定やシナリオの妙ですねえ。 また,話の編み方についても,作中に上手く悠香と沙希という2大ヒロインを織り込んで話を紡いでいる(各ルートでそれぞれの魅力を上手く描き出した上で,作中,特に最後のルートで上手く役割分担をさせている)のには感心しました。個人的には話が進むごとに悠香が不憫に感じられて仕方なかったんですが,話としては綺麗にまとまっていたので,まあ,(ちょっと嫌だけど)あれはあれでありかなあ,とか思ったりもしました。さらに,メインルートを攻略するたびにオープニングを変えたり,ルート毎に多種多様な結末を持ってきたりというように,随所に創意工夫の跡が見られるしっかりとしたシナリオ運びに仕上がっていたのは高く評価したい。 褒めてばかりですが,まあ,それだけ出来が良いということです。単なる読み物ゲーとしては素材の凡庸さ故に厳しいかもしれませんし,また,本作のシナリオにも欠点が無いわけではない(上手くルートに乗れないと関係のないぶつ切りの話の断片を見させられるだけで,話自体が楽しめない点<ゲームシステムに起因する問題点>,素材がありきたりで斬新さに欠ける点,誤字脱字が散見される点etc.)のですが,しっかりとゲーム性&エロを持たせた上でこのレベルのシナリオを用意出来た,というのは驚きですので,今回は不問にしたいと思います。バラエティに富んだバランスの良いシナリオで,ホロリとしたり熱くなったりとかなり楽しませて頂きました。 【結論】A− 「シナリオ・エロ・ゲーム性が高レベルで結実した,ボリューム満点の良作。エロ以外の面でもアダルトゲームたりうる出来の良さ」。全ての要素が高レベルでかつそれが上手い具合に一つの作品へと結実している点は高く評価したい。また,単にエロがあるからというだけでなく,グロさや話の内容等の面でも,18禁にする価値がある,そう思います。最近では珍しい,本当の意味での「アダルトゲーム」です。本作については文句なしにお薦め出来ます。是非プレーしてみて頂きたいと思いますね。ただし,何度も言っているように,本当にグロいシチュが満載なので,その点だけは要注意。 マイ萌えキャラ→悠香と沙希。これは一つに絞れないです。どっちも本当に魅力的なキャラだけに,両方が一度に幸せになれるエンディングも欲しかったんですが,まあ,それは流石に難しいかなあ……。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― レビューデータベースに戻る |