パルフェ〜ショコラ second brew〜
 メーカー名:戯画
 発売日:2005/03/25
 メーカーホームページ:http://www.web-giga.com        評価:A(90点)
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 丸戸史明氏の傑作ADV「ショコラ-maid cafe "curio"-」「ショコラ-maid cafe "curio"-[Re-order]」の続編と言うことで,当然デフォ買いです。体験版と「ショコラ-maid cafe "curio"-[Re-order]」でのイントロ(香奈子ショートシナリオ)の出来が良かったのでかなり期待していたのですが,果たしてその出来や如何に。


【ゲームシステム及び内容】
 「ショコラ-maid cafe "curio"-」で不評だった,作業感たっぷりな疑似喫茶店経営SLGの色彩はなりを潜め,本作では純然たるADV(場所移動型ADV)となっています。やはりこのシリーズはストーリーを楽しむことに重点が置かれているので,無駄な作業でプレイヤーの手を煩わせないようにした方が良いですね。

 あと,前作と同様に演出が巧みな点は付言しておきたい。別に珍しいテクニックを用いているわけではないんですが,効果音の入れ方や画面効果(立ち絵の動かし方など),テキスト表示のタイミングなどが上手くて感心しました。激怒したときのカミナリ等,漫画的な画面効果を多用することにより,コミカルなシーンの多い今作で良い感じにシナリオの魅力を引き立てていたと思います。由飛シナリオでのボーカル曲の挿入なんかも,ベタながらもピッタリで,良かったんじゃないでしょうかねえ。


【絵・エロ】絵・エロともA−
 担当は前作と同じく「ねこにゃん」氏。相変わらずキャラの可愛らしさやコスチュームのエロさっぷり,着衣Hの構図などはいいですねえ。たとえば初Hの際にベットに横たわる玲愛の一枚絵とかは,ただ横たわっているだけなのに滅茶苦茶可愛い&エロくて,もうその絵だけでかなりハァハァでした。他にも,勝手に中出しした主人公をH後に蹴飛ばす絵とか,夕日のさす中で微笑む玲愛と手をつないで2人歩く絵とかみたいに,玲愛がらみの一枚絵の出来が最高で,個人的にはもうこれだけでおなか一杯。GJ!と言いたいですね。立ち絵・表情のバリエーションも豊富でコロコロ変わる表情を見るのが楽しく,絵関連で不満に思うことは殆どありませんでした。ただ,curioの昼服が殆ど登場しなかった点と,前作に比べて顔のデザインに精細さ・シャープさが無くなり,妙にのっぺりとした感じになってしまったことは少し残念&気になりましたが。総じて言えば良い出来なんじゃないでしょうか。

 Hに関しても,純愛系としては濃い目。各キャラとも複数回Hが有りますし,しかもその殆どが着衣H(curio制服,ファミーユ制服,私服)ですので,私みたいな着衣H至上主義の人間にとってはたまらない出来です。構図やシチュエーションも凝っている(コスチュームデザイン,服の着崩し方,Hの体位及び描写角度,ストーリーとHとの整合性・関連性(ストーリーに沿う形で無理なくHが組み込まれている)など)ので,着衣H属性,特にウェイトレス属性がある方には強くお薦めしたいと思います。○。

 
【音楽・音声】音楽:A−,音声:C
 音楽に関しては楽曲の出来・使われ方ともにかなりの高水準。ストーリーの展開上音楽の重要性が高いのが本作の特徴(詳細はネタバレ故省略)ですが,今回は必要十分な音周りを確保していて感心しました。普通のBGM1つをとっても喫茶店のイメージによく合うおしゃれな楽曲が中心で,質・量ともに十分な出来だったように思います。主題歌「Leaf ticket」の聞き心地も良く,音楽に関して不満に思うことは殆どありませんでした。

 それに対して音声の出来は微妙。サブキャラ陣や玲愛などの演技は良かったんですが,メイン陣,とくに里伽子や明日香などの演技は正直どうかなあと思ってしまいました。いや,難しい役回りだとは思うのですが,抑揚無く喋るところがただの棒読みになってしまったりするのは演技力不足と言わざるを得ないように思います。ストーリー重視のゲームではやはり音声の出来も演出上重要になってきますから,もう少し演技の巧拙にもこだわって頂きたかったな,というのが本当のところです。


【システム】A+
 完璧。「ショコラ-maid cafe "curio"-」でシステムに悩まされ続けた私としては信じられないことでしたが,システム面での不満は一切ありません。冗談抜きで完璧です。動作の安定性・軽快性,セーブ&ロード機能の利便性(セーブ数,表示される情報の多さ,使いやすさ等),カスタマイズ機能の充実度など,どれも高水準。また,本作で特筆すべきはイベントシート機能で,これにより未発生イベントの有無や各種イベントの発生条件が一目瞭然で,無駄にリプレイをすることなく気軽にゲームを攻略できる点,高く評価したい。総じてプレイヤーのことをよく考えた,使いやすいシステムになっており,感心しました。秀逸な出来だと言えるんじゃないでしょうか。◎。

 (´-`).。oO(「ショコラ」もこの水準のシステムを積んでくれていたら良かったのにねえ)


【シナリオ】A+
 担当は前作同様「丸戸史明 with 企画屋」氏。まあ,もはや私が言うまでも無いと思うのですが,近年人気急上昇中のライターさんです。結論から言ってしまえば,今作のシナリオも期待通り非常に面白く,かつ読後感の良いストーリーに仕上がっています。

 本作のシナリオの特徴,それは(1)内容自体はオーソドックスだが巧みに仕組まれた構成,(2)メリハリのついたシナリオ運び,(3)キャラクター間の会話の妙,(4)前作との関連で深みが増す内容,以上4点に集約されると言うのが私感です。以下,簡単にコメントをしたいと思います。

 (1)内容自体はオーソドックスだが巧みに仕組まれた構成   話の内容に関してはきわめてオーソドックスな純愛もので,欧風アンティーク喫茶「ファミーユ」で働くことを通じて,職場の仲間達やライバル店「curio3号店」のスタッフ達と仲が良くなっていく,というもの。途中紆余曲折がありつつも,最後はハッピーエンドにたどり着く(一部バッドエンドもありますが……)というストーリーで,一見なんのひねりもない,オーソドックスで読み心地が良いだけの純愛系ADVに見えます。けれども,よくプレーしてみると,実はかなり技巧的な構成になっていると気づくはずです。

    【ポイント1】ヒロイン6人のペア分割

 キャラによって濃淡の差や例外はありますが,本作では基本的に2人ずつのペアを軸にストーリーが編まれています。ネタバレ故具体的な名称・イベント内容は申し上げませんが,たとえばA&Bのペアの時には,Aルートの場合にはB,Bルートの場合にはAが密接に関与してくること,さらに,AルートとBルートで同一事象を扱いつつ,しかしその1つの事象に対するアプローチを変えることで,結果物事を多面的に描き出すことができるようになることなどが典型です。これにより,ヒロインごとのそれぞれのストーリーが,まとまりをもって1つのゲーム(シナリオ)として集約できている点は評価したい。また,

    【ポイント2】GOOD END(NORMAL END)とTRUE ENDの使い分け

 も本作の特徴。狙ったヒロインを追い続けるだけではGOOD END(NORMAL END)にしかなりません。しかも,GOOD END(NORMAL END)だとただ「働いている間に仲良くなりました。良かったね。ちゃんちゃん」的な話で終わってしまうため,どこか表層上滑りな印象を受け,物足りなさを感じてしまうのではないかと思います。実はこれが最大のミソだというのが私見です。つまり,事態の真相を知り,本当の意味でヒロインと結ばれるためには,単にヒロインをストーキングするだけではなく,ヒロインとの間に横たわる問題を認識し解決するために自らが能動的に動くこと(具体的には関係のある他のヒロイン(特にペアの相手方)とも接触をし,真相を探ること)が求められる。このことをシナリオの構成を工夫することでプレイヤーに伝えている点が本作最大の特徴であり,かつ本作の凄さではないかなと思います。また,これは里伽子ルートで顕著ですが,GOOD END(NORMAL END)を上手く組み込む形でTRUE ENDを持ってくる(ネタバレをしないように敢えて抽象的に述べれば,GOOD ENDで現実となったエンディングを非現実化し,再度現実化する,ということですかねえ)など,各エンディングをTRUE ENDの踏み台としているのも付言しておくべきでしょう。このように,

     「GOOD END(NORMAL END)=表層,TRUE END=真相」

 とし,各エンディングをTRUE ENDのための布石とすることで,各エンディングを単なるバリエーション数稼ぎとしてではなく意味あるものとして位置づけしている点,強く感心しました。

 (2)メリハリのついたシナリオ運び   無駄なシーン描写や冗長な記述を避け,かつ展開の緩急を適度に混ぜ合わせた構成で,終始テンポ良く読んでいけるシナリオになっていた点は流石。泣き・萌え・苦しみ・楽しさが適度に織り交ぜられており,読んでいて全く飽きませんでした。

 (3)キャラクター間の会話の妙   これは氏のシナリオの十八番だとおもいますが,短い会話のフレーズを巧みに交わすことで,登場人物間の会話に「活きの良さ」が生じています。先に述べた効果音や画面効果等の演出の巧みさも相俟って,読んでいて非常に楽しい会話になっていた点は高く評価したい。

 (4)前作との関連で深みが増す内容   前作「ショコラ-maid cafe "curio"-」のネタ・設定が随所に盛り込まれており,前作をプレーしているのといないのとでは本作の面白さが雲泥の差です。たとえば,プロローグの電話の声の主や冒頭のシャワーシーン,玲愛ルートにおいてcurio本店で出会った2人の人物の正体,主人公の「家族」へのこだわりなどは,前作をプレーしていた人には思わず「ニヤリ」とするものでしたが,やったことのない人には多分なんの面白さも無いと思います。もし前作をやったことがないのであれば,できればプレー前に「ショコラ-maid cafe "curio"-[Re-order]」をプレーされることを薦めます。

 このように,かなり出来の良いシナリオだと思います。今回は誤字脱字等は殆ど見受けられませんでしたし,また内容も素材自体はきわめてオーソドックス(=万人に受け入れられやすい)なものですから,純愛系のお話が好きな方であれば間違いなくお薦めできる一作です。ただ,何点か不満点や気になった点などを挙げておくと,

 (1)共通ルートがややボリューム不足であること。個別ルートは良いんですが,共通ルートにバリエーションが乏しく,1〜2回のプレーでおおむね全てのルートが回収できてしまう(=あとは共通なのでスキップしてしまいがち)のは残念。もう少し共通ルートにも「(ルート決定に関係のない)無駄なイベント」を盛り込んで多様性をもたせ,共通ルートもスキップせずにプレーするようなインセンティブをもたせてくれると良かったのになぁ,と思ったりもしますね。

 (2)主人公がやや軟弱・自分勝手で,人によっては不快感を覚える可能性があること。特に里伽子ルートや恵麻ルートで顕著ですが,今作の主人公はたとえば前作「ショコラ-maid cafe "curio"-」の主人公である大介などに比べると男らしさに欠け,シスコン・優柔不断・自分勝手というような「エロゲーに良くある」主人公的なイメージが強い。勿論格好良いところはありますし,またルートによっても濃淡はありますが,大介などに比べるとやや「女々しい」感じがするのは否めず,そのため人によっては不快感を抱く場合もあるのではないかと思いますね。

 (3)前作をプレーしていないとシナリオの魅力を十分には味わえないこと。先にも述べたように,本作ではかなりの程度前作の設定やネタを継承して話が編まれています。その点で言えば,本作は間違いなく前作「ショコラ-maid cafe "curio"-」の「続編」と言えます。勿論前作未プレーでも十分に楽しめますが,シナリオを味わい尽くすためにはやはり前作のプレーは必須です。その点でシリーズ初参加の方には「敷居が高い」作品であると言えます。

 こんなところでしょうか。殆ど問題のない,きわめて高レベルのシナリオでしたが,以上3点のみプレーする際の注意点として付言しておきたいと思います。


【結論】A
 「万人に受け入れられるであろう高レベルの純愛系ゲーム。音声以外に粗が殆ど見あたらない,手堅い出来の一作。ただ,出来れば前作をプレーしてからの方が楽しめるだろう」。「ショコラ-maid cafe "curio"-」で問題となったゲームシステム及びシステム上の問題がなくなり,万人にお薦めできる作品となっています。シナリオ・エロ・音楽等,全てが高レベルで,純愛系のお話が好きな方なら間違いなく楽しめる一作です。ただ,良い意味でも悪い意味でも「続編」としての色彩,敷居の高さがあるので,出来れば前作をプレーしてから着手して頂きたいですね。

 当サイトとしては,胸を張ってお薦めする一作です。

 マイ萌えキャラ→問答無用でtheツンデレな花鳥玲愛を推します! むしろ彼女以外に誰がいるんだ,位の勢いで。素直になれないで悪態付くところとか,主人公と結ばれて急にデレデレし出すところとか,なんだかんだいっていつも純粋で優しいところとか,外見はお嬢様なのに妙に所帯じみているところとか,いやあ,たまんねえなあ,おい,って感じです。他のヒロインのルートでも滅茶苦茶可愛くて,「もうこのヒロインはどうでもいい! 今からでも玲愛を攻略させろ!」と何度思ったことか(w。マジで最高です。良いよね,こういうキャラ。



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