れすとあ
 メーカー名:D.O.
 発売日:2003/06/27
 メーカーホームページ:
http://www.do-game.co.jp/   評価:B+(75点)
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 シナリオ執筆が,当サイトでも高評価の「すめらぎの巫女たち」を担当した「北側寒囲」氏ということで,前からかなり期待していました。果たして前作での氏の実力は本物だったのでしょうか……?

【システム】A
 使いやすいシステムでした。充実・軽快・安定と言うことなしです。レイアウトも凝っていて,前作までのダサくていまいち機能不足な感のあったシステムとは大違いです。
 ……急にどうしちゃったんだろう……凄い進歩……。あと,どっかで見たことあるシステムだなあ……と思ったら,これ,「青い涙」と同じシステムです。まあ,同系列のメーカーなので別に驚くべき事ではないと思いますが。なので,不満点は「青い涙」と同様,「キーボードやマウスの機能割り付けが独特(例えば,同じ右クリックでもクリックする場所によって画面クリアになったりコマンド呼び出しになったりする,など)なので,最初は戸惑うかも」ということですね。ただ,メッセージスキップについては未既読の判別がつくようにグレードアップしているので,A−→Aに格上げさせて頂きます。使いやすくて文句なしです。

【音楽・音声】音楽:B−,音声はなし
 音楽は可もなく不可もなくといったところ。楽曲的に突出した出来のものはないので,特に取り立ててコメントすべき事柄はありません。ただ,作品には良くマッチしていて,良い感じで青春時代の雰囲気を作出していたと思いました。あと,効果音等が充実していたのも好感触。
 音声はないので評価の対象には入りません。ただ……やはり音声は欲しかった。特にD.O.は音声をつける時はいつもハイレベルの声優をもってくるので,尚更。私はいつもは別に音声が無くても良い(とりわけアリスソフトのようなゲーム性を重視するメーカーのゲームでは)と思っている人間ですが,そんな私でも今作のように読ませるシナリオが売りの作品ではやはり音声は必要かと思いましたね。

【絵】D
 担当は「ことぶきはじめ」「ぺこ」両氏。絵柄自体は可愛らしいと思うし,コミカル絵やエロ絵はかなり出来が良い(特にコミカル絵は楽しくて良かった)と思うのですが,ただ絵が不安定です。絵毎に絵柄が違っていて,全くの別人に見えることもしばしば。あと立ち絵の出来も余り良くなくて,特に顔をしかめたりキスをしたりするときの顔ははっきり言ってキモかったです。塗りも余り綺麗ではなかったと思います。もう少し絵には拘って欲しかったですね。

【エロ】C+
 エロは決して濃くはありません。典型的な純愛系ゲームのエロです。ただ,純愛系の割には絵・テキストとも頑張っていた感があります。回数も複数回ちゃんと完備されていますし,着衣Hもある。特に諒や藍香のHは頑張っていたと思いますね。【絵】の項目では酷評を書きましたが,エロ絵についてはちゃんと肉感的になっており,意外と抜けました。テキストもこっぱずかしくて初々しい青春時代のHをちゃんと描いていた点,好感が持てましたし。でも,H絵の使い回しが多かったのはちょっと残念でしたが。

【シナリオ】A+
 担当は前にも述べたように「北側寒囲」氏。で,話の出来の方ですが,結論から言えばとても良くできていると思います。ぶっちゃけ読んでて面白いです。
 氏のシナリオは「すめらぎの巫女たち」の時もそうでしたが,キャラ萌えとか泣きとか,そういうものはありません。けれども,話がとても骨太な点に特徴があります。つまり,キャラクター(とりわけヒロイン達)の魅力で作品を引っ張っていくというのでもなく,プレイヤーの情感に訴える話をつくるわけでもない。あくまでキャラ萌えや泣きなどは話の構成要素の一つにすぎず,それらを全て編み込んだ上で一つの世界全体についてをシナリオの中で丹念に描き出す,そういうライターさんです。ですから,作品をプレーしていると,主人公に感情移入して女の尻を追いかけ回すというエロゲに良くあるプレースタイルではなく,主人公も含め登場人物全員が演じている人間ドラマを離れたところから見ている錯覚に陥りながらプレーすることになったりします。こういう手法は,話自体がつまらなかったり粗だらけだったりするとキャラの魅力などでもごまかせず,また過不足無く描ききらないと消化不良感や不満足感をプレイヤーに与えてしまうだけに,ライターの力量が問われるところですが,本作ではそのようなハンデを超えてバイク部を巡る一つの青春群像を見事に描ききっており,とても良かったと思います。
 具体的な話に入りますが,プレー期間は3年間。かなり長いです。ですから,えてして間延びしてプレイヤーにだるい感じを与えてしまいがちですが,本作においては適度にギャグや笑えるやりとりがまぶしてあるので,プレーしていてそのようなだるさは感じませんでした(ただ,このギャグは人を選ぶと思いますが……)。むしろ,3年ものロングスパンをプレー期間に定めているので,メインである(1)新入部員として入部してから卒業するまでの部でのあれこれと(2)彼女となるヒロインとの馴れ初め,以上2点を丹念に描くことが出来ており,物語が良い感じに深化していたと思います。ルートにもよりますが,基本的にメインルートはエロゲで良くあるような「女の子を落としておしまい」な展開ではなく,付き合いだしてから波乱が起き,その波乱をヒロインとともに乗り越えていく一連のプロセスがきちんと描かれており,大変に感心しました。
 また,ヒロインだけでなく,それ以外の登場人物も作中でしっかりと生きていて,良い具合に話をもり立ててくれる点も◎。ただ,本作の主人公には若干内向的な面や自分勝手な面があるので,ここら辺は好き嫌いが分かれる所かと思います。私は特に後半部でのヒロインに対する主人公の態度とかはあまり好きでは無かったです(わからなくはないのですけどね)。
 なお,話のメインは,前述のようにバイク部に入ってから卒業するまでのやりとりであり,それに平行して父親が遺したバイクのリストア作業が絡んできます。ですからバイクものであるためバイク関係の専門用語が多数出てきますが,プレーするに当たって専門知識は必要ありません(私も自動車の知識しかないですが,問題なくプレーできました)。むしろ専門知識のない方が粗探しをしないで済む分楽にプレーできるかも知れません。

【結論】B+
 「懐かしい青春もののシナリオを満喫したい方にお薦めの作品。絵の不安定さと音声無しが玉に瑕」。バイクものという人を選ぶ題材でしたが,実際には誰でもプレーできるように仕上がっています。懐かしさ漂うノスタルジックなシナリオで,過去学生時代に部活動や学校行事に首っ丈になった人には,とても懐かしくてやっていてそのころの楽しさが蘇ってくる,そんな形に纏まっていたと思います。個人的には大満足の出来でした。ただ,話の出来が良いだけに,絵の不安定さと音声が無いこと,この2点は痛い。特に後者は切に感じました。もういい加減,D.O.にはちゃんと作品に声を入れるようにして欲しいものです。声を入れても入れなくても良いようなゲームが多い中,今回は久しぶりに音声の重要性を痛感した作品でした。
 今回で「北側寒囲」氏の実力がまぐれではないとわかりましたので,次回以降,氏の作品はデフォ買いしたいと思います。

 マイ萌えキャラ→森永諒。クールビューティがメロメロになっていくのはいいですなあ(;´Д`)ハァハァ


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