VAGRANTS
 メーカー名:Studio e.go!
 発売日:2003/12/26
 メーカーホームページ:
http://www.studio-ego.co.jp/        評価:A−(80点)
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 雑誌で紹介されていた,大人っぽくなった美麗なCGとどことなく終末感が漂う設定,そして拘りのゲームデザインに惹かれて。前からずっとプレーしたかったのですが,体験版をやってみて私のPCのスペックでは動かないことが判明し,泣く泣く断念。今回,高スペックのPCを借りることが出来たので,喜び勇んで購入し,プレーすることになった次第です。


【ゲームシステム及び内容】
 いままでエゴのRPGというと,戦闘画面(及びダンジョン捜索がある場合にはダンジョンパート)のみがRPG形式で,それ以外はADVと変わらない選択肢型をとるゲームが殆どでした。なので,折角RPG部分を設けていてもいまいち「RPGをプレーしている」という印象がなかった(そして,そのために余りRPGパートを楽しむことが出来なかった)のですが,今作ではかなり一般的なRPG形式に近くなった感があります。

 フィールドを散策してダンジョンを見つけ,その中を探索したり,敵と戦ってアイテムを手に入れたり(ドラクエ式の「モンスターを倒すとお金を落とす」といった画一的な発想ではなく,あくまでそのモンスターが持っている物品を奪ってくるというような,ある意味自然なスタイルになっているのは良かったですねえ。だっておかしいよね,モンスターが皆人間のお金をもっているなんて。ただまあ,持っているものが微妙すぎるのはあれなんですがw),そのアイテムを売買・合成して新しいアイテムを手に入れたり(原則として物品は自力で調達してくるものだ,というスタンスがはっきりしていて良かった),街の中を出歩いて色々なイベントをこなしたり(基本的にはヒロインの好感度イベントとストーリー進行に関わりのあるイベントが主ですが,それだけでなくて話の本筋には関係の無いようなサブイベント,例えばロイとアンナ,セリーヌとフランツとのやり取りなどといったものも充実していて,ゲームに彩りを添えていた点は非常によい)と,かなりやり甲斐・遊び応えがあった点は高く評価したい。今までのような「ADVパートがメイン,RPGパートはおまけ」な現状から脱却してから「RPGパートがメイン」へと変わり,よりゲーム性を増すことが出来たのは大きな進歩でしょう。エゴゲーのRPGとしては,かなり洗練されてきた印象を受けました。

 ただ,若干不満に感じている点としては,

 (1)マップによる遠隔地間移動の概念が無いために旅情感に欠ける   確かにフィールドは用意されている(この点は「IZUMO」などと比べて大きな進歩だと思います)のですが,これらが基本的には街からダンジョンへの通り道の役割しか担っておらず(例えば,第1章ならアラハバクから2つの遺跡に移動するためのルートに過ぎない),アラハバクからビザンティア,ビザンティアからバルバロシアやグリーナリー教聖地などへといったような遠隔地間の移動が自動で行われてしまうため,折角場所が変わっても旅をしている感じが出ないのは非常に残念。個人的にはRPGの魅力の一つに「異なる土地を転々と旅するという旅情感」があると思っているので,こういうのは非常に気になりました。まあ,これは,本作に限らずエゴゲー全般に言えることなんですが。

 (2)役割のないキャラクターが配置されてないので寂しい   これは街の中で特に言えることなのですが,(第3章は別として)基本的にイベント発生と関係のあるキャラクターしか街に配置されておらず,役割のないキャラクター(例えば,ドラクエ3かなんかでパフパフの話しかしない町中のオヤジのような,シナリオと関係ない町人A的なキャラクター)が一切いないため,どことなくシナリオやゲームそのものにゆとりが無い印象を受けます。「IZUMO」でも指摘しましたが,基本的にエゴゲーはメインとなるところはちゃんと作ってあるんですが,それ以外の+αの部分が殆ど無いため,本筋を消化して「はい,おしまい」といったそっけない印象を抱きやすいのは勿体ない。本筋だけでなく,どうでもいい会話やサブシナリオが充実してこそ,「面白いRPG,作り込んであるRPG」といえるのではないかと私は思うのですが,どうでしょうか? それと,作中で「人で混み合って」云々といっているのに,画面上にはメインキャラクターの数名しか表示されていないので,人で混み合っているゴミゴミとした感じが表現出来ていなかったりします。また,あんなに広い街のマップを用意しておきながらマップ上に数人しかキャラクターを配置していないと,なんだかゴーストタウンに迷い込んだかのような印象を受けてしまいがちなのも微妙ですね。

 この2点が挙げられると思います。ゲーム性・RPGとしての作り込みとも従来のエゴゲーと比べてかなりレベルアップしており,十分にRPGとして通用するレベルだと思うのですが,やはり上記2点は気になりますね。良い方向へと正統進化しているだけに,今後はこれらの点にも留意してゲーム開発を進めていって欲しいものです。


【システム】C
 システム自体はいつものエゴのものを用いているため,エゴゲーをやったことのある人にとっては安心してプレー出来るシステムだと思います。キャラ別の音声ON/OFF機能や各種ボリューム調整機能等,必要最低限の機能は備わっていますし,動作も安定・軽快で一度も強制終了することなく快適にプレーすることが出来たのは良かったです。

 ただ,いつものことながら(1)バックログに音声再生機能が無い点(2)セーブ可能数が20個(+オートセーブ枠1個)と少ない点は不満。それと,何故か今作では(3)従来のエゴゲーでは完備されているメッセージスキップ・オートモード・バックログ機能が無くなっている点,注意が必要です。機能面が劣化した理由は全く謎ですが,ともかくこれは大減点でしょう。あと,(4)要求スペックが異様に高い点も要注意。数年前のメーカー製PCでは動かない可能性が大です。私自身,普段使っているSHARP Mebius PC-MJ760C(メモリを256MBに増設)だと起動はするものの,立ち絵が表示されない等の不具合があり,まともにプレー出来る状況ではありませんでした。借りてきたLaVie C LC500/5では頗る快適にプレー出来たんですけどね。取り敢えず,購入前の体験版による動作チェックは必須だと思います。


【音楽・音声】音楽:A,音声:C+
 音楽の出来は非常に良いですね。BGMはエゴお得意の疾走感ある楽曲(個人的には「ミュータント」なんかはかなりいいと思いますね)や重厚な楽曲(「エヴァ」「ビザンティア」など)はもちろんのこと,従来のエゴゲーにはあまり見られない,エキゾチックな感じのする楽曲(「辺境」「遺跡」など)やコーラスを盛り込んだ楽曲(「奈落」「聖地」など)なども多くあり,個人的には結構気に入っています。また,ボーカル曲も2曲(「I will…」「遥かなる刻を」)と充実しています。前者は正直ボーカルにパンチが足りないかなと思うんですが(ただ曲自体は好き),後者は文句なしの出来。いいですねえ。

 次に音声についてですが,個人的には微妙……かなあ。演技レベル的にもいつものエゴの水準でいえばやや低め(あくまでエゴ水準でいえば,ということであって,エロゲー全体でいえばレベルは高いのですが)ですし,なによりキャラクターに声が合っていない。いつもより山本氏の絵が大人っぽくなったのに,声はむしろいつもより幼くなってしまって,かなり違和感がありました。特にイレーネやジゼルはどうかな……というのが私感です。男性キャラの演技も微妙でしたし,個人的にはこの程度の評価にせざるを得ません。というか,キャラと合っていたと思ったのがエミリア(@楠鈴音)・ミイ(@葉月さくら)+αだけだったっていうのがなんとも(苦w。


【絵・エロ】絵:A+,エロ:B+
 担当は「山本和枝」氏。独特の絵柄ながら,可愛くて綺麗な絵です。いつも絵のレベルの高い方ですが,個人的には今回の絵が今までの氏の作品の中で一番洗練されていたように思います。本当に絵が綺麗です。今回は従来の作品よりも絵柄が大人っぽくなっており,また目の大きさ等も小さくバランス良くなっていますし,さらに塗りも従前の底抜けに明るい色調ではなく暗めでシャープな陰のある仕上がりになっているので,「可愛い」というよりは「綺麗」といった感じのする絵に仕上がっていますね。良い仕事をしているとはまさにこのことだと思います。エロ絵・日常絵とも満足のいく仕上がりになっており,文句のつけようがありません。◎。

 この絵の美しさはエロにも十分に貢献しています。正直エロの分量的には不満が多い(ミイを除き各キャラとも1回ずつしかHがない)のですが,差分絵を含めて1回のHに投下している絵の枚数が豊富。しかも,着衣H的にも珠玉の出来で,特にエミリアのHでは何回抜いたかわかりません。清楚なキャラの割にやたらとエロい服装,絶妙な服のはだけ具合,丁寧なニーソックスの描写,着衣H的に絶妙な体位・描写角度と,個人的には大満足の出来。さらに,1回のプレーで終わるのでなく,2回目の事に及ぶ様まで省略することなくしっかりと描いている点も高く評価したい。尺的にも長いですし,Hシーン1つ1つの出来は純愛系Hとしては模範的な出来だと思います。シチュが純愛Hのみでバラエティに欠けますし,分量的にも微妙なので評価はこの程度しか出せないですが,個人的にはかなり気に入っています。good job!


【演出】
 いろいろありますけど,やはり特筆すべきは3D-CGの美しさですかねえ。「IZUMO」「Men at Work! 3」を遥かに凌駕する美しさであり,しかも水辺に寄ると水面に自分の影が映る等,徹底して作り込んでいる点は感心しました。また,アラハバク崩壊のシーンで上手くアニメーションを挟んだり,効果音等を適切に使う等,終始演出に気を遣っていた点は◎。いいですね,こういうのは。ただ,OPのアニメーション,あれだけはちょっと……でしたが。特に今作みたいに絵が美麗だと,余計アニメーションの絵の酷さが目立つなあ,なんて。


【シナリオ】B+
 担当は「高橋直樹」氏。近年のエゴゲーのうち,RPG系のシナリオというとこの人っていう印象がありますね。氏のシナリオは一言で言って「設定(この点はディレクター・シナリオ原案の「「あ」の人」氏の功績の気もしますが)・雰囲気はかなり優れているし,しっかりとしたストーリー運びをしていてシナリオとしては模範的な出来なんだけど,遊びやゆとりに欠けて,素っ気なくかつやや駆け足気味な展開になることが多い」というのが私感なんですが,今作にもこのことは妥当するかなと思います。

 まず,設定・雰囲気という面では,今作もかなり優れています。一見単なるファンタジーなんですが,そこに戦争・文明の崩壊・遺伝子変化といった近未来的な設定が盛り込まれ,さらにそれに子孫の生まれない閉塞的な世界,時の経過と新たな世代の誕生といった要素も加味されることで,どこか終末的な雰囲気をまとった,独特の世界観を構築している点は非常に良かった。夢と希望に満ちあふれた(ある意味単純な)世界という訳ではなく,終始一貫して暮らしにくい苦しい世の中が描かれ,そこでなんとかして生き抜こうとする様がよく表現されていたと思います。また,第3章から描写する視点・主体を変え,さらにアナザーストーリーを用いてフォローすることで(詳細はネタバレ故省略)世界の謎と物語の内幕を明かす等,話の紡ぎ方に工夫が見られたのも良かったですね。さらに,敢えてヒロインを3人に絞ることで,十分にキャラクターの魅力・心理を掘り下げ,キャラクター相互間での心的結びつきも密にしているなど,丁寧なシナリオライティングをしているのには好感が持てました。

 ただ,幾つか問題があるのも事実。特に,

 (1)話の展開が早すぎる(特に第3章)   全般的にいって話の展開が早く,プレイヤーが内容を咀嚼する前にとっとと話が進んでしまうため,あまりシナリオに強い印象を持ちにくくなってしまったり,素っ気なさを感じてしまったりする点は残念。特に,第3章でバルバロシアでグスタフと別れたあと最終決戦の場ですぐ再会してしまう(一応テキスト上では1ヶ月程度経ったとされているが,プレー時間的には数分間のタイムラグしかない)ところや,クリア後にプレー出来るアナザーストーリーなどは,あまりにも展開が駆け足すぎてなんだかなあと個人的には思いました。

 (2)マルチシナリオの割に各ルートの話にあまり違いがない   本作はヒロイン毎に第3章の展開が異なるマルチシナリオ制を取っています。確かに第3章の始まり方とか,一部イベント等ではルート毎に違いがあります。でも,基本となる話の展開は同じで,正直何度も最初からリプレイしてまで見る価値があるとは思えませんでした。はっきり言ってエミリアルートさえクリアすれば,大半の話はフォロー出来てしまいます。リプレイ時にレベルやアイテムの多くは継承出来るようになっていますし,アークさえ合成しておけばボス戦以外一切戦闘せずにプレー出来ますが,それでも結構な労力がかかるわけで,その労力に見合うだけの話の多様性があるかというと微妙です。やはりマルチシナリオにする以上は,すべてのルートをプレイしようと思えるよう,ルートによって全く展開を変えてしまうくらいの多様性を持たせて欲しいなあと個人的には思いました。

 (3)主人公の扱いが微妙すぎる   この点はシナリオの根幹に関する問題であり,ネタバレ要素を多々含むので説明が難しいのですが,つまり主人公のヒロイン達への合流の遅さなどについてですね。確かにこのような主人公の使い方(ネタバレ故省略。プレーすれば主人公がどのような処遇に置かれ,どのような行動を取ったか分かるはずです)もあるんでしょうが,でもこのせいで主人公がメインストーリーの埒外に置かれてしまい,作中において影が薄くなってしまっているんですよね。「みんなにすべて押しつけて,お前いままで何やってたんだよ……」と思わずつっこんでしまいたいくらい,主人公は微妙な立場に置かれてしまいます。やはりもっと早いうちから合流して,最後はみんなで力をあわせて……みたいな展開の方が良かった気もするんですけどねえ。

 以上3点は気になりましたので付言しておきます。模範的な出来のシナリオですが,「読ませる」レベルには今ひとつ届かず,そんな風にお考え頂くと良いかもしれませんね。


【結論】A−
 「RPGとしてはかなりの完成度。エゴゲーのRPGとしては完成系に近いレベルとなった。ただ,やはりまだゲームシステムやシナリオ等で不十分な所もあり,あと一歩といわざるを得ない」。かなり遊べる作品ですし,しっかりと作り込んであるのも事実だと思いますが,先に色々述べたように,やはりRPGとして今ひとつ物足りないところがあるように感じました(過去のエゴのRPGと比べると大きな進歩だとは思うのですが)。もう少し丁寧に作り込みさえすれば,十分にAも狙える作品だったと思うんですけどねえ。勿体ない。

 マイ萌えキャラ→文句なしでエミリアですね。若いうちもいいんですが,やはり母親になってからの方が人間としての魅力が増したように感じました。いいですね,こういう成長するキャラって。


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